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ハッピーエンドの材料はどこにある?  作者: 岩月クロ
レシピ4.迷宮の魔法使い
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02.厚い信頼があります 後編

 結局、雛㮈は、ニキたちにほぼ全てのことを話した。カーダルは、止める訳でもなく、ただ黙って雛㮈がこれまでのことを話すのを、横で聞いていた。

「あー、なるほどー。うん、納得。なんか納得」

「お主だしのう」

 それが、説明を終えた後の、第一声であった。

「そ、そんなに簡単に信じていいんですか…!? こんな荒唐無稽な話!」

 さらりと受け入れた二人に、雛㮈の方が逆に心配してしまう。あまりにも抵抗感無く受け入れ過ぎではないか。

「そっちの兄さんが話したなら、疑ったけど。お姉さんだしね」

 そんなに全幅の信頼を抱いてもらえるほど、何かしただろうか。眉を寄せる雛㮈に、ニキが答えをくれた。

「嘘とか吐けなさそうだし。特に、想像力とか無さそうだから、そんな夢のある嘘を臆面も無く話す度胸なんて無いだろー?」

「う…っ!?」

「それが全て演技力の賜物だってなら、むしろ天晴れ。惚れ惚れしてついてく」

「えっ!?」

 それにしても、とニキはカーダルへ目を向ける。

「兄さんも意外と策士だね。ワザとお姉さんに全部説明させたの?」

「………」

 カーダルは無言を貫いた。話すつもりは無い、ということなのだろう。

 全然協調性無いのな、とニキが半眼で睨む。

「…ま、いーや。とにかくオレは、厄介ごとが控えてるのを承知で護衛を申し出たんだから、別にいーよ」

「我はお主といたいからいる。それだけじゃのう」

 ラルクに至っては、椅子の上で、後ろ足で耳を掻きながらの返答である。流石は精霊獣。何が流石なのかは、いざ知らず。

「じゃあ、今回の件も同行…で、いいんでしょうか」

 雛㮈は、カーダルに助言を仰いだ。

「いいんじゃないか。魔法団の団長様もああ言ったことだ。俺個人としても、今回に関しては、心から同意する」

「…お知り合いです?」

 カーダルは、その質問を黙殺した。触れて欲しくないのか、なんなのか。なんにせよ、これ以上は答えてくれないようだ。

「どうなさいます。日を改めますか?」

 気を遣ったのだろうか、執事が穏やかな声色で提案する。内情は今すぐにでも、と思っているに違いないが(でなければ、五年も寝たきりの主人を、世話するものか)、()かしたりはしない。

 雛㮈は、揺らぎそうになった決意を再度押し固め、丁重に申し出を断った。

「では…主人のところへ案内させて頂きます」

 執事の案内で、また部屋を出た。

 それにしても。

 カーダルの屋敷でも、お城でも感じたが、何故にこういった建物は、見た目以上に入り組んでいるのだろうか。お陰で、道が憶えられない。いやまあ、セキュリティ上の事情だろうが。しかしここまで複雑だと、新人さんは仕事中に迷いそうだ。

 カーダルの屋敷よりも数倍絢爛な廊下を歩き、これまた豪勢な造りの扉…の、隣の扉を通る。

「こちらが、フェルディナン様(我が主)がお休みになられている部屋でございます」

 中は意外にもシンプルだった。机とベッド、それから小さな本棚。ただ、絨毯やカーテン、ベッドの飾りなど、統一感のある色や刺繍が利用されているため、お洒落で落ち着いた雰囲気のある部屋になっている。

 ベッドには、穏やかな顔で眠る男性がいる。茶色の長い髪は、綺麗に整えられ、絡まらないようになっている。余程、執事が気を遣っているのだろう。

「この方ですか?」

「左様でございます」

 無造作に近付いていこうとしたら、大きな手が頭に置かれた。

「…勝手な行動、軽率な行動は慎め」

「は、はい」

 リリーシュという前科があったからだろう。雛㮈もその時のことを思い出し、すすす、と距離を取る。

 最終確認として、アイレイスから渡された測定器がしっかり手元にあることを確認してから、声を上げた。

「みなさん、私に掴まってください!」

 ラルクは左肩に乗ったままだ。カーダルはその反対の肩に手を置き、しかしこれでは不安定だと思ったのか、雛㮈の腕を掴み直した。ニキも、もう片方の手を掴む。

(動きにくい…)

 そんなことを思いながらも、なんとかフェルディナンの手に触れた。途端に、光が迸る。発生条件はこれでよかったらしい。光に絡め取られるように、包まれていく。ぐん、と引かれるような感覚。

 それぞれに掴まれているところに、更に力がこもる。

 そして―――目の前に、巨大な遺跡が出現した。前方に、あまりに怪し過ぎる入り口。左右を見渡すと、砂漠が広がっている。

「………なにこれ」

 これはいったい、どういう心の在り方なのか。

 思わず口から飛び出た一言は、他の人の心に共通した思いだっただろう。




「要するに、どうであっても信じてやるよ、って意味なんだけど、絶対分かってないよなあ」

「損な性格をしておるの。だから手を貸してやりたくはなるが」


 危なっかしいので、思わず手を貸してしまうポジションに落ち着いた模様の雛㮈さん。

 一応、チート設定なんですが、持ち前の性格がそれを亡き者としています。ちーん。


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