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ハッピーエンドの材料はどこにある?  作者: 岩月クロ
レシピ2.魔法使いの素質
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02.意気投合しました?

「私が、カーダルさんに…?」

「そう。お城では専らの噂よ。…そんなに魅力的な体つきでもなさそうだけど、その身で取り入ったのかしら」

 雛㮈は、アイレイスの言葉を反芻し、そしてその意味を理解すると、顔を真っ赤に染め上げた。

「そそそそれはつまりその…っ、私とカーダルさんがその、お、おおお大人の関係だってこと、を言って…!?」

 それなら、先程のルークの『カーダルではないので』の(くだり)も、ひょっとして…。と、疑ったが、それだったら、あの場でカーダルが怒るような気がした。だから、多分『慣れ親しんだ人ではないので』という意味だったのだろう。

「あら、動揺するということは、意外と真実なのかしら」

「と、とんでもございません! 誤解です! あり得ません! 絶対、絶対、ぜーったいに、あり得ないですっ!」

 こんなに大きな声を出したのは、ここに来て初めてだ。それほど、衝撃的なことだった。あまりにも久々に声を出し過ぎて、ぜーはーと肩で息をするハメになる。

 対するアイレイスは、雛㮈の様子にぱちぱちと目を瞬かせた。妖艶な雰囲気が薄れ、可愛らしい空気が広がる。それから、ぱああっ、と顔つきが明るくなった。

「そうよね、そうよねっ! あんな堅物に靡くなんて、あり得ないわよね! なのに何故か、ヤツは女性から人気が高いのよ! もう、ムカつくったらありゃしない!」

 自分は決して、カーダルの中身や外見が悪いと言っている訳ではないのだが。アイレイスの勢いに飲まれ、雛㮈は「そ、そうでしょうか。そ、そうかもですね」と応えた。

 仲が悪いのだろうか、と思っていたが、少なくともアイレイスは、カーダルが“気に食わない”らしい。

「貴女とは気が合いそうだわ」

 アイレイスは満足げに頷いた。

「あ、あはは…」

 取っ付きにくい上司が、急に同年代の友人のようになった瞬間だった。


⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎⚫︎⚪︎


 しばらく話をしていたが、基本的にアイレイスの愚痴がメインだった。アイレイス曰く“堅物すぎる”騎士団に関することも当然話題に上ったが、魔法団もとにかく変人が多いらしく、扱いにくいらしい。上の立場にいるらしいアイレイスは、ストレスが溜まっていたのか、愚痴が尽きることはなかった。

「あたくし、騎士団なんかにぜーったいなりたくはないけど、あの団結力はたまぁに欲しくなるわ。魔法団の自由奔放さって言ったら…んもう!」

 いったん息を吐いた隙を突いて、「あの!」と遮る。

「私は、どういった仕事をすることになるのでしょうか」

「ん? んー、そうねえ…最終目標は、光眠り病の治療法だけど。貴女から詳しい話を聴いて、かつ貴女自身の特性を調べるところからかしらね」

 特性。復唱してみたが、イマイチ、ピンと来ない。

「どうせなら、先に方針を決めちゃいましょうか」

「へ」

 とぼけた声が口から漏れた。アイレイスは、さっと席を立つと、奥からなんらかの装置を持って戻ってきた。

「さて、今の貴女からは、これっぽっちも魔力なんて感じやしないけど、聴いた話じゃ、光眠り病の治療には、純粋な魔力が必要となったんですってね」

 精霊に言われたことを思い出し、こくん、と頷く。

「これは、最大魔力量を測る装置。その時必要になった魔力量は分からないけど、ある程度指標にはなるわ。人が髪の毛に蓄えられる魔力は、全体の1割あればいい方だもの」

 健康診断の器具のようだ、と雛㮈は感じた。手首に装置を取り付け、計測スタート。

「さて、計測中に、もう一度お話を聴かせて頂けないかしら」

「あ、はい」

 雛㮈は、精霊を見たことから、その精霊が連れて来た幽霊がカーダルの妹君であるリリーシュだったこと、手に触れたら急に“リリーシュの深層世界(なか)”に飛ばされたこと。彼女の世界は魔力でできており、彼女が魔力を作るよりも速いスピードで精霊が魔力を食べていたこと、彼らに魔力を渡すことで侵食が止まったことを話した。

「精霊使いであること―――精霊が見えることがひとつの条件ね。それとも、貴女だから、かしら。これは検証する必要があるわね」

「? 精霊が見えることは、普通では無いんですか?」

「ええ、そうよ」

 アイレイスは、じ、と雛㮈を見た。

「精霊に“愛される”かどうかは、生まれ持ったものなの。…あたくしには見えないわ」

「そんなに好かれているのに?」

 雛㮈の目が、アイレイスから少しだけズレた場所を見た。彼女の目には、アイレイスの周りを嬉しそうに飛び回る精霊の姿が見えていた。あそぼ、とは言わない。ただ、がんばってー、だとか、やってやれー、だとか、応援メッセージを送っている。

 アイレイスは瞠目した。それからしばし、目を閉じる。口元には、笑みが浮かんでいる。「そうなのね」と静かに言った。それは良かったわ、と続いた気がしたが、あまりにも小声だったので、聞き違いかもしれない。




悪女を書こうと思ったのですが、私には荷が重すぎたので、ちょっと高飛車ないい子を書くことにしました。

でもキャラが濃くて、主人公を食いそうな予感。ぎゃあす。

(というより、主人公'sの影が薄i…こほんこほん)


この調子じゃあ、R15は本当に予定未定でおわりそう!

なかなか恋愛感を出してくれませんが、どうか(生)温かく見守ってくださると嬉しいです。

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