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よくある行事で…よくある恋愛で…

よくある行事で…よくある恋愛で…(恋編②)

作者: 吉田灯冶

こちらは前の投稿の続きです。前回は節目として切っているために、こちらが最終となります。

そのため、この作品を楽しみたい方は前回の「恋編①」から読まれた方がいいかと思います。


※これは分岐物になるので、連載とは違い、短編で書いています。流れの考え方はギャルゲーの分岐物と考えてもらえたらいいと思います。


「また明日なー」

「うん、また明日ー」

 谷原蒼たにはら そうが一週間前の学校の帰りに佐藤恋さとう こいと最後の言葉。

 この一週間、恋は急に学校を休んだ。

 正直、蒼には何が起こったのか分からない状態でモヤモヤしていた。

 美鳥に認められて、一ヶ月以上が経ち、すでに十一月になってる。

 その間に変わったことは、美鳥の看病で蒼の家に泊まったことがクラスメートにバレ、蒼と付き合っているということが知れ渡ったことだ。美鳥に認められたせいか、去年のあの日以降の恋よりも元気になったこと。

 何もかもが恋にとって良くなり、前に向かって順調に進めだそうと歩み始めている最中のことだった。

 そんな恋からいきなり連絡がなくなり、こちらからの連絡も反応がない。担任の山梨は休んだ理由を知っているようだが、蒼たちには教えるつもりがないらしく、口を閉ざしている。

 家にも一度行ってみたが、人の気配はあるのに全部の出口が閉ざされていた。

 それだけで何かおかしいということは分かるのだが、隣に住んでいる人からは人の出入りはあると教えられたために管理人にドアを開けてもらうことも出来ず、蒼は無力さを感じていた。

 そして今日、久しぶりに恋が登校してきたのだ。

 急に教室の入り口からざわめきが聞こえ、蒼は何気なく、そちらを向くと久しぶりに見る恋の姿があった。

 ただ一つおかしいことがある。

 誰も話しかけようとしない。

 いや、そんなことが出来る雰囲気ではない。誰も話しかけるな、というようなものがあった。だからこそ誰も話しかけられない。

 蒼もまた心が読めなくなっていた。

 前よりも高く分厚い壁が前にあるかのような、そんなイメージが蒼の脳裏に浮かぶ。

 それでも蒼は話しかけた。

 自分の大好きな彼女として。

「よう、おはよう。今までインフルエンザだったのか?」

「…うん、そうなの。治りだちだから、私に近づかない方がいいよ」

「気にすんなって。別に彼女のインフルエンザぐらい、俺はいいさ」

 机に座りつつ、まったく恋は蒼と視線を合わせようともしないので、代わりに蒼が近づく。

 何気なく、蒼は恋の肩に触れると、

「私に触らないで!!」

 恋は大声でそう言った。

 今まで聞いたこともないような悲鳴に近いような確実なる拒否の言葉。

 なぜか身体を震わし、何かに怯えるように恋は蒼を見つめた。

 周りからも蒼たちの様子が気になるのか、見つめている。

 そしてざわめく。

 ケンカではないことを誰もが悟っていた。

「ご、ごめん。悪い。俺のこと気を使ってくれたのに…」

「う、ううん。私も過敏になりすぎてた」

「インフルエンザって流行ってるみたいだから気をつけないとな。今日は無理しない程度に頑張れよ?」

「…あのさ、こんなタイミングで言うのもなんだけど、別れよう」

 恋は何気なくそう言った。

 普通の会話のように淡々と。

 せめてこういう場合はメールや電話、もしくは二人っきりの状態になって、言われるものだと蒼は思っていたため、心に鉄の鉛を思いっきり当てられたかのような衝撃を受けた。

 蒼は自分でも分かるぐらいに血の気が一気に引く。

 信じられなかったからだ。

 何よりも恋はそういうことに人一倍気を使い、冗談でも言わないタイプ。

 その言葉を聞いたクラスメートですら、何も言えない。

 文句も、非難も、蒼に対する慰めも何もない。

 それだけのインパクトがあった。

「い、いったい…どうしたんだ? 一週間前はあんなに、仲良かったじゃないかよ」

「そうだね。でも一週間もしたら人間なんて生き物は変わるんだよ。私にとっての谷原君は『光』だった。太陽みたい人だったんだよ。イカロスって知ってる? ロウの翼の話」

「いや、それは関係ないだろ?」

「あるよ。だって私がそうだから。私はね、谷原君という太陽に近すぎて、翼が燃えたの。だからもう無理。ごめん、体調が悪くなったから帰る。もう私のことは忘れて…」

 恋はすぐに帰り始める。

 誰も止めはしない。

 止めることすらもできないほどの冷酷な性格になっていた。

 蒼は止めようと試みたが、あることに気付く。

 カバンだ。

 普通、カバンを持つと少しでも荷物が入っていると重心が傾く。教科書を置いている生徒は最初から何もないので軽いため、重心はほぼない。

 それが恋のカバンにも見えた。

 心を読んでしまう能力のおかげでそれが分かってしまったのだ。

 蒼が知っている限りでは、恋は教科書などを置いて帰るような人間ではない。むしろ持って帰る優等生側の方だ。

 つまり、今の状態から想像すると恋は蒼に別れの言葉を言うためだけに学校に来たことになる。

 そのことに気付くと蒼はさらにショックを受けた。

 きっともう止めることは出来ない、と理解してしまった。

 蒼は机に戻ると力なく、イスに座る。

 恋の姿が完全に見えなくなり、しばらくして美鳥が走って、教室にやってきた。

 蒼の近くまで寄ってきて、美鳥が何かを言っていたのは分かったのだが、それを受け止める余裕が蒼には全くなかった。 



 あれから二週間経った。

 一階ではドタバタする音が蒼の耳に入る。

「行ってくるね、お兄ーちゃーん!」

 谷原桃たにはら ももは普段と変わらない元気な声が蒼には聞こえる。

 蒼はベッドの上で寝転がったまま、反応を返さなかった。

 あれから蒼はずっと学校を休んでいる。

 ショックがデカすぎたというのもあった。それ以上に今までの力が一気に抜けたというのもある。うつ病がどういうものかは蒼には分からなかったが、こういった急激なやる気がなくなることが原因なんだろうと考えてしまったぐらいだ。

 不意に携帯を確認すると誰からも連絡は入っていない。

 あれから恋からの連絡も途絶えたままである。

 連絡をするなと言った側なのだから、連絡を入れるつもりはないのだろう。

 だからと言って、連絡を入れなくていいという問題ではないため、一日にメールと着信を入れるのが今の蒼の日課となっている。入れてももちろん返事が返ってくることはないけれど、それでもいつかは、という気持ちで入れていた。

「女々しいのか、俺って?」

 誰もいない家でそう一人呟く。

 学校を休むことに関しては誰も何も言わなかった。

 担任の山梨も美鳥も、クラスメートたちも。

 山梨ぐらいは何かを言ってくるかと蒼は思ったのだが、意外にも『今はゆっくり身体を休めろ』と美鳥からの伝言を伝えられただけだった。

 蒼と恋が付き合っているのは山梨も知っているはずだった。しかし何かを言ってくるつもりもないようで、関与することはなかった。

 ただ一つ言えるのは、今回恋に起きたことを蒼には伝える意思がないということだけは確かなのだ。無関心というわけではなく、一人の大人としての優しさなのだろう。

 それだけの何かが恋に起きたというのは分かった。

 そのまま蒼は目を閉じて、この考えを何回も繰り返していた。

 答えが見つからないまま、この考えを何度も…何度も……。

 するといきなりスマホの着信が鳴り始めた。

 蒼は自分がいつの間にか寝てしまっていたことに気付く。

 誰から来たメールなのかはすぐに分かった。

 この着信音は恋だけにしか使ってないからだ。

 ついでに時間を確認するとすでに十二時を過ぎている。

「そっか、恋も学校を休んだのか」

 ため息を吐き、そのメールを確認する。

 中身はごく簡単なもので、『午後二時にいつもの公園で』と書かれてあるだけ。

 素っ気ない文章だが連絡をくれたことが蒼にとって嬉しかった。

 また会う気になってくれたことが。

「何か話してくれる気になったみたいな雰囲気だけど、やり直そうって話の雰囲気じゃないな・・・」

 ほんのちょっとだけ期待を寄せていた『復縁』という二文字。簡単に出るようで出にくいものなのは分かっているが、それでも蒼は期待せずにはいられなかった。

 蒼はその後、美鳥が作ってくれた弁当を食べ、恋の方がきっと落ち込んでいることは、はっきりと分かっていることなので、明るい様子で行こうといろいろ準備しているうちに出発の時刻はすぐにやってきた。

 公園というのは通学路にある公園のことだ。

 学校の帰り道によく寄り道していた場所なので名前を言われなくても分かっていた。

 蒼はそこへ足早に向かう。

 しばらく外に出てないだけで、外は一段と寒くなり、冬になりつつあることを教えてくれた。

 着いた公園は学校の時間帯だけのことはあり、さすがに人は少ない。

 ベンチに座っているスーツ姿の男性が一人座っており、他には散歩に歩いている老人が二人いる寂しいものだった。

 蒼は時計で確認する。

 まだ二時にはなる三分前に到着したため、近くにあるベンチに座り、恋が来るのを素直に待つことにした。

 しかし恋は二時になっても来ない。

 そうすれば焦りを感じ始めて、周囲を確認するために立ってみるも恋らしき姿の人物は見つからない。 やっぱり来ないのだろうか、と諦めかけた時、今までベンチに座っていた男性が蒼に近寄ってきた。

 蒼はもちろん面識がない。

「失礼だけど、君が谷原蒼くんかい?」

「あ、はい」

「そうか、君が谷原君か」

 その人は蒼の全身を見るように眺める。

 眺めるというよりは雰囲気を確認しているようだった。

「どこかでお会いしましたか? 今、待ち人が来るのを待ってるんですけど…」

「恋ちゃんは来ないよ。ここに来るように連絡を頼んだのは私だからね」

「どういうことですか?」

 蒼は男性が恋との関係を知っていることになぜか苛立ち、声色が低くなる。この人がどういう関係か分からなかったが、自分の彼女である恋のことを気安く呼ぶことが許せなかった。

「落ち着きなさい。私は恋ちゃんの伯父だよ。君が思うような相手ではない」

「それで俺に何か用ですか? もしかして恋と二度と会うなってことですか?」

「先読みしすぎだ。そうじゃない。恋ちゃんがなんで君から逃げるようになったかの理由を話そうと思ってね。本来は恋ちゃんが話すべきなんだろうけど、今回ばかりは無理なんだよ。察しのいい君のことだ。内容は関係なく気付いているんだろう?」

 その人は優しい目のまま言った。

 蒼の心を読む能力が先天性のものだというならば、この人は大人になる家庭で人の見る目で語っていた。

 蒼はその人に言われるまでもなく、そのことについては分かっていた。

 恋は自分の過去から逃げようとせず、自分からなんとかしようとする人間だ。だからこそ、あの告白された日に自分の身に起きたことをちゃんと話してくれた。相手に隠し事をするのが嫌な性格ということも。

「おっと、名前を言うのを忘れていたね。私の名前は中岡義明なかおか よしあきと言うんだ。よろしく。ここで話すのもなんだから、近くのファミレスにでも行かないかい?」

「いえ、良かったらここでお願いします」

「それは構わないよ。けれど、その理由を聞いていいかい?」

「ここで恋さんとはよく話してましたし、何より少しでも頭を冷やしたいって気分だからです。きっと俺が怒り出すような内容なんでしょ?」

「怒るね。下手したら殺意が生まれるほどだよ」

「さて、どこから話そうか…」

 そう言い、義明はゆっくりと話し始める。

 まずは自分の妹、恋の母親についての話だった。

 恋の母親の名前は香澄かすみということを蒼は初めて知る。恋は母親とは言っても名前を出すことはなかった。他人の母親の名前は聞くつもりはなかったので、気にしていなかったというのも本当である。

 義明の話す香澄は純情だった。

 学生時代にある一人の男子生徒と付き合ってから変わったらしい。その男子生徒はイケメンと呼ばれるタイプであり、よくモテた。そして何股か分からないけれど、複数と同時に付き合ってた。その中の一人に香澄がいた。根っからの負けず嫌いだった香澄はいろいろ気を引くために言われるがままにいろいろした。金も身体も全部だった。

 それぐらい好きだったけれど、相手からすれば奴隷のようなものであり、最後は呆気なく捨てられた。

 そのことが原因で香澄は心を壊すもどうにか立ち直り、最終的に恋の父親と結婚した。

 義明が見た限りでは恋の父親は好青年だった。

 そんな彼が逃げ出したということは本当に限界が来たと思い、みんなほど非難することは出来なかった。むしろそれどころか感謝を言いたくなったほどだった。しかし唯一残念なのは恋を一緒に連れていってくれなかったこと。

「どうしてそんなこと言うんですか?」

 思わず、蒼は尋ねた。

「自分の妹のことを悪く言うのもあれだけど、香澄は母親としての素質がないから。かと言って、私が甥を嫌いなわけじゃないってことは付け足しておくよ。もし一緒に行ってれば、今回のことは起きなかったことかも知れない」

 本題が始まった。

 簡単に話すとレイプだった。

 その人は二十代の男性で母親の客の人。たまに恋の家に来ては香澄とイチャついてたらしいのだ。もちろん恋にとっては興味もなく、『またか』というぐらいの面識の人。ただよく来ていることから、香澄が今、一番大事にしている人なのは分かっていたようだった。

 ただ恋が間違えていたのが、最初から恋を狙っていたということ。 香澄はあくまで恋とするための踏み台にしか過ぎなかったのだ。

 その話を犯されながら、恋は聞いていたと、義明は言う。。

 ただ、母親は逆で、そのことを知った香澄は恋に心配の声をかけるどころか、追い出した。

 行き場所を失った恋は現在、義明の家に恋はいるという。

 簡潔だったが、義明に言われたとおりに蒼の心には殺意が湧いてきた。

 何回か深呼吸をして、心を落ち着かせる。

「話を聞いて、どう思った? 恋ちゃんが嫌いになったかい?」

「…そんなことはないですよ。恋自身についてはどうも思ってない。ただ母親が屑すぎる。なんで娘のことを気遣ってやれなかったのかって。すいません、妹さんのことを悪く言ってしまって」

「私にそんな資格はないよ。聞いた時に本気でビンタしたぐらいだからね」

 義明は自分の手を見つていた。

 あの時を思い出したのだ。痛みや感触、そして泣きながらも恋に対していった暴言などを。

 情けなかったのを思い出していた。

「あの、恋さんに会えます?」

「いや、無理かな。君が会いたくても、恋ちゃんが会いたくないんだ。君は気にしないだろうけど、恋ちゃんが気にする。穢れてると思ってるからね」

「じゃあ伝言いいですか?」

「なんだい?」

「長くするのもあれだから、簡単に。もっと俺を頼れって。何もすることは出来ないし、傷つけることもあるかも知れないけど、俺と恋さんはあの時は付き合ってたんだから、せめて相談しろって。それだけお願いします。じゃあ俺はこれで」

 蒼は立ち上がり、頭を下げるとそのまま家に向かって歩いた。

 もっといろいろ伝えたかったが、長くなるし、今はその場に居たくなかったからだ。

 心の我慢の限界だった。

 それを見送りながら、義明は携帯を取り出す。

 そして耳を当てる。

「本当にこれで良いのかい、恋ちゃん」

『……はい。だって私はもう無理だから』

 電話は恋と繋がった状態で今の話をしていた。

 最初から最後まで。

 電話越しで義明は恋が泣いているのは分かった。

 あの時のことがフラッシュバックしたのかもしれないと義明は思う。

 それぐらい辛いことを蒼と一緒に聞きたいと言ったのは恋だ。だからその意思を尊重させ、繋いだまま話をした。

 きっと同じ苦しみを共有したのかったのだろう。

 でもあの蒼を見て、義明は思ったことがあった。

「でも彼は諦めてないよ。それどころか彼は恋ちゃんを励ますだろう。それでも逃げるのかい?」

『…分からない。本当は一緒に居たい、ずっと一緒に居たいよ…』

 義明はそういうことは分かっていた。

 香澄も恋も親子だから似ているからこそ、大好きな人とずっと一緒に居たいというのは。

 でも根本的に違うのが最初の相手だ。

 義明は蒼ならば、恋を幸せにしてくれる気がしていた。初めて見た時から確信できるほどの好青年だった。恋の父親と同じようなものを感じた。

 未来はどうなるか分からないけれど、恋ももう大人みたいなものだ。子供ではないのだから、恋の考えに任せようと考えている。後悔しないように…。

「ひとまず恋ちゃんを私の養子になる手続きの続きをするから、電話を切るよ」

『はい』

 そう言って、電話切る義明だった。



 蒼は夕食に今日あったことを話すことを決めていた。

 自身の答えは決まっていたが、美鳥と桃に迷惑がかかることが分かっていたからだ。

 絶対に迷惑をかけるという確定したものではないけれど、それでも家族だから言っておかないといけない気がした。

 それに二人とも恋のことも心配してることは分かっている。

「あのさ、今日の朝、恋から連絡があったよ」

「え、本当!?」

「会ったの?」

「いや、会ってない。けど、恋の伯父さんに話を聞いてきた」

 それだけで二人は箸を置く。

 二人はずっと蒼のことが心配だった。

 恋のことも大変なのは分かるけれど、一番はやっぱり身内の蒼なのだ。蒼が元気にならないと全てが上手くいかないのは分かりきっていた。無理をさせないように元気をすることほど難しいものはなく、今まで時間が経ってしまったのだ。

 美鳥がおそるおそる尋ねた。

「それで何だったの?」

「うん、なんかレイプ…されたらしい」

「え、ちょっ、なんで!?」

「落ち着けよ、桃」

「落ち着けないよ! なんでそうなるの!! 意味がわかんないよ!!」

 蒼は桃を見つめる。

 きっとこれが恋に対する本来の反応なのだろう、と。

 確かにあの公園でその話を聞いた時、殺意が湧いたのも本当だが、守ってあげられなかったことに対してのショックもあった。そのためなのか、殺意もすぐになくなり失意になった。だから逃げるようにして帰った。泣きたいというのもあったけれど…。

 逆に美鳥は真剣な目で蒼を見つめていた。

 蒼にはその意味が分かる。

 『蒼はどうしたいの?』と問いかけていることが手に取るように。

「んでさ、俺は恋を助けたい。でもさ、助けることなんて出来ない。恋が俺から離れていようとする限りは」

「うん、そうだね。今日も学校を休んでた。来にくいんだよ」

「伯父さんの家がどこか分からないけどな」

「助けられる!」

 蒼と美鳥がそう話す中、桃は言い切った。

 桃の中には怒りと同時に悲しみがある。

 それは自分が親に捨てられた時のこと。

 本人は知らずのうちに桃は恋と自分を重ねてしまっていた。

 だからこそ力になりたい、と考えているのだろう。

「私がお父さんとお母さんに電話する!」

「なんてするんだよ?」

「言いたいことは分かるよ、桃ちゃん。でも他人だから無理。桃ちゃんの場合は身内だから、って話」

 美鳥は桃の考えを見越したように言う。

 そこで蒼も気付く。

 桃が両親に電話して頼むのは、ここで住めるように頼むこと。

「その考えは嬉しいけど、無理だな。両親の説得を成功させたとしても、本人である恋の気持ちはどうするんだよ。俺が知ってるのは恋に起きた出来事だけだ」

「でもやってみる価値はあるじゃん!」

「俺から恋が離れようとしてるのにどうしようってんだよ!」

 桃は目に涙を浮かべながら、そういうのに対して、蒼はそのことを黙らせるようにしてテーブルを叩いた。

 蒼のその行動とテーブルの音にびっくりしたように二人が驚く。

「俺がいくら頑張ろうとしても、俺は振られた身だ。それに恋が俺を頼らないと、助けることも出来ないだろうが!」

 怒り任せにそういうと蒼は自分の部屋に戻った。

 ただ去り際に桃がこう言った。

「でも私は私の信じる方法をやる! それでお兄ちゃんが元気になるなら!」

 最後の方はドアを思いっきり閉める音で言葉を切ったために聞こえなかったが、蒼は嬉しかった。

 どうしようも出来ない状態の中、それでも桃は動いてくれることに。自分では思いついても後先を考えると無理だからだ。

 美鳥もきっと桃に押し切られる形で両親に頼むのだろう。

「本当に俺だけ何も出来ないみたいじゃないかよ」

 変に大人となりかけつつある自分の思考に嫌になる蒼であった。



 翌日、父親から蒼に電話がかかった。

 もちろん内容は恋とのことだった。

 美鳥や桃から理由は聞いていたのだが、当の本人たちの意見が聞きたかったらしく、蒼に電話をかけてきたのだ。

『元気がないみたいだな、蒼』

「おかげさまでね」

『まぁ、そんなことを話すために電話したわけじゃないから。手短に話そうか』

「うん、そうだな」

『お前はどうしたいんだ? あの二人が言うように一緒に暮らしたいのか?』

 蒼は苦笑した。

 あくまで予想でそう言いそうな気はしていたが、まさか本当に同棲の話を出しているとは思っていなかったのだ。

 きっと桃が言い始めたに違いない。

「暮らしたいも何もあっちの許可なんて取ってないからなー。現時点で言うとどうしようも出来ないんじゃない?」

『そこはお前が頑張るしかないだろう?』

「それはそうだけどさ」

『お前たちには幸せになってもらいたいのが母さんとの結論だからな。蒼に悔いが残らない形で上手くいくのなら、父さんは歓迎なんだぞ? 住むだけならな。授業料とかは別問題だ』

 しみじみとそう呟く父親。

 聞いたことはないけれど、本人たちもいろいろとあったらしい。でもそれを酔った勢いで父親が言おうとすると、母親が全力で止める。下手をしたらフライパンで殴るほどに。

 どんなことがあったかは分からないけれど、蒼にとって二人は両親なのだから、それはそれで気にならない。

「桃の奴はそういうことを考え切れてないからさ、迷惑かけて悪い」

『よく桃が言い出したって分かったな』

「そんな無謀なことを言い出すのはあいつしかいないじゃん。でもさ、一緒に暮らす許可をくれただけでも俺は嬉しいよ。ともかくそういう話だけはしてみる。迷惑かけて悪い、父さん」

『家族だからな。子供は親に迷惑をかけて当たり前だ。気にすることはないさ。じゃあ父さんは母さんとイチャつk…』

 なにか鈍い音が聞こえ、突如に母親の声に変わる。

『蒼、そういうことだから気にすることはないわ。たぶんあちらの伯父さんはまともみたいだから、その人と話し合うことにはなりそうだけど、そこらへんは任せて』

「母さん、もうちょっと父さんに優しくしてあげようよ」

『最近、いろいろと見逃してあげてたから、まとめてね。じゃあ忙しいから!』

 母親もそう言って、電話を切った。

 ちょっとだけ蒼は息抜きが出来た気がした。

 両親がそういうことを気遣ってくれているとは思わない。あれは本心でやっているからだ。きっと、はしゃぐのが好きなタイプなのだろう。だからこそ家族としては円満な家庭なのかもしれない。

 妻に敷かれるタイプが長続きするのはそういうことを笑いあえるから。

 そう考えた蒼は少しだけ恋との未来について考えてみる。

「ははっ、分からん。立ち直るかどうなるかが鍵になるから、正直わかんね。でもきっと立ち直らせるからな」

 なんとなく言葉にして、覚悟を決める。

 そして蒼は恋にメールを入れる。

 場所も全部、決まっていた。

 明日とか明後日に来てくれるか分からないので、日付は指定しなかった。

 最後に『来れる日に返事をくれ』と付け加えて…。



「上手くやりなよー」

「ははっ、無理じゃね?」

「でもやるんでしょ?」

「もちろん」

 蒼は美鳥に向かって、頷く。

 朝、五時の学校。

 二人は屋上にいた。

 メールを送ってからは三日経っている。

 本来はまだ開いていない学校を無理矢理開けてもらったのだ。

「まったく無謀なこと頼むよね、しかもこんな寒い時に」

「気を使ったんだよ、分かってるだろ?」

 蒼はまだ恋が人ごみに慣れてないかと思って、早めの時間に来てもらうことにした。

「もちろんね、とりあえず私は教室に戻る」

「風邪引かないようにしろよ」

「はーい」

 美鳥はそう言うと寒そうに縮こまりながら、屋上のドアを閉めて、出て行った。

 そう言った蒼もジャンバーを着ているけれど、さすがに寒いのか身震いをしていた。

 まだ外も暗く、太陽を昇るのもあと一時間後。

 せめてもうちょっと時間をずらせば良かったかなって蒼は思ったが、いまさら後悔しても手遅れなので、静かに恋が来るのを待った。

 何分経っただろうか、蒼はボーっとしていると屋上のドアが開く。

 入ってきたのは恋だった。

 蒼と同じように制服にジャンバーを着ている。

「こんな時間に呼び出して悪い」

「本当だよ、寒い。大した内容じゃなかったら、帰るからね」

「まだ怖いか?」

「……」

 恋は何も言わないけれど、どこかで怯えているのが蒼は分かる。

 そのためか声もあの振られた時と同じような感じで冷たい。

 恋が出す雰囲気も冷たいために、蒼は余計に寒さを感じた。

「まぁ、その時に俺は助けてやれなかったからさ。嫌われても仕方ないと思う。でもさ、俺は気持ち伝えてないからさ。伝えないとな、って思ったんだよ。あの告白された時みたいに」

「あれは…私が言いたくて言っただけだから、気にしないでいいよ」

「そっか。この距離が現在いまの俺と恋の距離か」

 恋はドアの入り口からほんのちょっと歩いた距離から、蒼に近づこうとしない。

 近づけないのだろう。

 義明に聞いた通りならば、恋が自分自身を穢れたと思っているから。

 蒼は恋が何か言う前に近づいて、抱きしめた。

「いや、離れて!」

「無理」

「私は谷原君が嫌いなの!」

 ジタバタ暴れる恋。

 蒼はどうされても離れる気はなかった。

 でもあの時の恐怖が思い出さしてしまうかと思い、気持ち的には離れたかったが、今は離すわけにはいかなかった。

 何があっても離すわけにはいかないからだ。

 しばらくして恋は諦めたらしく、両手をその場に落とした。

 蒼だけが抱きしめてるだけの形になる。

「時間かかりすぎだろうが」

「だって本当に汚いからさ。だから触られたくなかった。でも谷原君が抱きしめたいなら、そうすればいいよ。私は知らない」

「そうは言っても、恋は俺が覚えてる温もりそのままなんだけどな。って、また俺忘れてるわ」

「何を?」

「言わなきゃいけないこと」

 蒼は一旦離れた。

 そして改めて、言った。

「恋さん、俺と付き合ってください。一緒にいる間に前よりももっと好きになっって、今ではもう毎日来いさんのことしか考えられないから」

 恋は固まった。

 いや、気持ちが揺らいだという状態。

 目からは一筋の涙が零れる。

 恋もあの日から、いろいろ考えていた。

 一週間休むぐらいのことは病気の関係でたまにある。だからそうやって蒼には隠しておいた方がいいんじゃないかって。でもそれは駄目だった。好きな蒼に対しては隠すことは出来ない。何よりもいつかは助けを求めてしまう。下手をすれば、犯罪者にしてしまうということが怖かった。

 未来なんて分からないから怖い。

 だから恋は拒んだ。

 蒼を傷つけてしまうけれど、きっと立ち直れる。

 周りには美鳥や桃、葵がいるから大丈夫だと信じて。

 でも違った。

 誰も助けも借りずに立ち直ろうとしなかったことを担任の山梨から聞いた恋は次の手を打った。

 それが義明に頼み、自身の身に起きたことを話してもらうこと。

 どういう結果になるか分からなかったが、それで自分のことを諦めて離れるのなら、それはそれで良いと思った。学生の身で解決しようとすることなんて無理な内容だから。だから自然と離れていくことを願っていた。

 なんでまた告白されるのか恋には分からなくて、涙が溢れた。

 やっぱり好きなんだ。

 それだけがはっきりと分かる。

「泣くなよ。仕方ないだろ。お前のことを大切に思っているのが、俺だけじゃなかったんだから。もちろん俺が一番だとしても、諦めることをあの二人が許さないぜ、きっと」

「それ、駄目なパターンじゃん」

「さすがは俺の家族だろ?」

「うん」

「お前もその家族なんだよ。あの日、みーちゃんが認めた瞬間から、恋も家族だ。だから戻って来い。俺を頼れ」

「うん、頼る」

 恋は蒼に飛びついた。

 やっぱり我慢できなかった。

 好きだからこそ、我慢するということを諦めた。

 恋は蒼に抱きついて、声を出して泣いた。

 そんな恋の頭を蒼は撫でる。

 なんで最初からこうすることが出来なかったのか、と思いながら。

 心を開けさせるっていうのは意外と難しいことなのだが、自分から歩み寄るだけで、こんなにも違う。ほんのちょっと踏み出すか、踏み出さないかの違い。こんなにも恋が自分のことを好きで、想った状態で振られたのだから、簡単だったはずなのに。

 そんな後悔をしつつ、頭を撫で続けた。

 恋はあの告白のときようにしばらく泣き続けた。

 たぶんずっと泣きたかったのを必死に我慢していたのだと蒼は思う。

 泣き止む頃にはすでに太陽が少し見えていた。

 二人は寄り添いあった状態でいた。

 ただ恋の気持ちと身体の問題は別なのかもしれない。未だに男性の恐怖からは開放されていないらしく、身体が震えているような感じがある。しかし、心は別なのか、無理をしつつも蒼にもたれている状態。

 そんな状態で二人は話した。

「それでさ、恋。俺の家で一緒に暮らさないか?」

「うん、いいけど…でもやっぱり駄目だよ」

「なんでだ?」

「言わなかったけれど、私は伯父さんの養子に入ることになってる。学校生活は残り数ヶ月だから転校はしないかもしれないけど…」

「だろうな。そんな気がしたよ」

 蒼は義明と話したときに、何かを手を打っているということは分かっていた。

 自分の妹の不始末を片付けるぐらいのことはちゃんとする、と。

「でも一つ付け加えるなら、伯父さんは蒼のこと認めてた」

「…いろいろツッコミたいけど、呼び捨てにするんだな。俺の名前」

 義明が認めていたということの内容も聞きたかったが、まずは名前の件が気になった蒼。

 本来、どうでもいいと思うことだったが、いきなりのことだったため、びっくりしたのだ。

 恋はニコニコしながら言う。

「家族になるなら、やっぱり名前で呼ばなきゃ。今までは蒼にそういう実感がなかったみたいだから、苗字で読んでたけど…」

「そういうつもりはなかったんだけど…、まあ、いいや。んで、認めるってのは?」

「お父さんと同じ感じがしたって。逃げるという意味ではなく、任せても大丈夫って。でもお父さんのことがあるからなー」

 恋はまるで試しているような感じで、蒼を見つめた。

 蒼は大きく息を吐いた。

 恋が言いたいことは、自分の親のように逃げないで欲しいという願いなのかもしれない。もちろん恋が母親のようになる可能性は少なくない。むしろ反面教師として生きようとするはずだ。その母親の道から得た結果が現在いまの自分になっているのだから。

 だから蒼の言う言葉は決まっているようなものだった。

「ならねーよ。恋の父親のように逃げたりしないさ。俺の周りには怖い人がたくさんいるからな」

「ふへへ、それ言っちゃおうっと」

「やめろ。それと俺はお前の父親じゃないから、その姿を被せるなよ?」

「ないない、絶対ない。それは失礼じゃない?」

 むっとして、怒ろうとする恋。

 でも蒼はさっきの発言の仕返しをしたまでなので、謝るつもりもなかった。

 恋にもちゃんとそのことは分かっていたようだった。

「でもここからが蒼の本当の頑張りの見せ所だね。伯父さんにどうやって、同棲出来るように頼むのかなー」

 蒼は自分の進む未来を間違えたかなって思った。

 恋は間違いなく楽しんでいるような雰囲気だったからである。それまで思いつめていたものが抜けたように少しデレ始めたのだ。

 どうにかしてくれるという確信があるのかもしれない。

 きっと自分はその期待を今は応えないといけないのが現状。

 でも少しでも前に進めたのだから、それだけでも本当に良かったと思っている。

 蒼はそう思えただけで満足だった。



 月日はあっという間に経ち、クリスマスになった。

 蒼と恋は美鳥に命じられて、買い物へと出かけていた。

「さむっ!」

「寒いねー。なんか雪が降るみたいになってたよ」

「マジかよ」

 恋は蒼の腕にしがみ付き、温もりを求めるように身を寄せている。

 あの日以降、恋は男性に接することに怯えていた。

 それは蒼にも同じであり、こうやって無理をしつつも抱きつくことが多くなった。もちろんキスさえも出来ていない。それだけのトラウマが植え付けられたことが分かる。

 だから蒼ももっとイチャイチャしたいと思うときがあっても無理にはしないことにした。なるべく恋から求めてきた時にだけ応えるように。

「でもさー、時間が経つのって本当に早いよね。もうクリスマスだよ?」

「いやいや、その間にいろいろあったろうがよ」

「全部、蒼に起きたことだけどね」

 恋は嬉しそうにそう言った。

 確かにあれ以降、大変だったのは蒼だった。

 義明に同棲の件で同意を求めないといけないことが一番緊張したのだ。

 最初にそれを初めて言いに行った時は断られた。当たり前である。まだ高校生の身でそんなことを言える立場ではなかったからだ。

 しかし、諦めるわけには行かず、何度か行って、最終的に落ち着いたのが、結婚前提のお付き合いということ。

 蒼からすれば、義明はその言葉が出ることをずっと待っていたような感じだった。たぶんもう恋に辛い思いをさせたくなかったことを考えれば、容易に想像できる。養子にする段階で、義明が授業料を払うなど、他のことは決めていたみたいで、その後はあっさりと同棲生活を出来ることになった。

「いやー、あの時はかっこ良かったよ? 追い詰められて追い詰められて、それでも駄目で、もう口の弾みで言っちゃった感じは!」

「からかうなよ」

「でも、嬉しかったのは本当だよ?」

「前以上のハイテンションになりやがって」

 蒼は皮肉っぽくそう言ったのだが、実際なところ、ハイテンションの恋の方が本当に似合っていると思っている。

 そして、二度とあんな風に暗い状態にさせたくない、と。

「あー、そんなこと言うと、美鳥に言うからね?」

「マジでみーちゃん、怒るからやめろ」

「分かってる」

 恋は楽しそうにケラケラと笑う。

「でもさ、真面目な話、お母さんの気持ちがちょっと分かるかなー」

「香澄さんの?」

「うん。上手くは言えないんだけどさ、誰かの愛でその日を必死に生きたかったんじゃないかなーって、今は思うよ。最初の恋愛がトラウマになって、甘えたいけど、どこまで甘えたらいいのか分からなくなって、相手を試してたんだよ」

 しみじみとそう言う恋は、まるで自分がそうならないように言いつけるようだと、蒼は感じた。

 きっとそれが原因で父親が逃げ出したんだ、って思っているようだった。

 恋の心が一瞬不安に揺れる。

「そういうときはケンカすればいいのさ。本心でぶつかり合わないと分かり合えないこともあるだろうし」

「ケンカ、まだしたことないのに?」

「それはまた別の話だろ。ケンカ以上のことを体験したわ」

「それもそうだね。絆深まったし!」

「それでいいんだよ、いくら不安になったところで良いことはないんだぜ?」

「うん・・・って、あれ?」

 恋はある一つのカップルを見つめる。

 蒼もそれに釣られるように、そのカップルを見つめる。

 もちろん見に覚えはない。

 ただ、向こうは気付いていないようだった。

 どうも帰り道らしく、そのまま歩き去っていく。

「誰?」

「ん、お父さん。あ、元ね」

「話をしにいくか?」

「いいよ、今は蒼がいるし。お父さんも元気そうだし、邪魔されたくないだろうから」

「……そっか。今では俺の家族なんだからな。でも話したかったら、行ってきてもいいと思うぜ? 恋のお父さんはあの人だけなんだから」

「うん」

 恋は悩んでいるようだった。

 蒼はため息を吐いた。

 たぶん後押しが欲しいのだろう。

 これ以上、面倒ごとは嫌だと思うけれど、それでも今やらないといつ会えるか分からない。

 そう思うと決まっていたようなものだった。

「じゃ、行くか。親へのご挨拶に。どんなことを言われても俺が傍にいるし、問題ないさ」

「あ、ちょっと!」

「いいからいいから!」

 蒼はそう言って、無理矢理追いかけた。

 ただ恋はその行動に抗うことなく付いて来る。

 そしてだんだん早足になり、そのカップルの背中が見えてきた。

 恋はそこで大きな声で呼んだ。

 昔に何度も呼んだ名前を、気持ちを込めて、思いっきり。

「お父さん!」

 その男性は呼ばれたことに気付いたのだろう、後ろを振り返る。

 恋は蒼の手から駆け出した。

 ただそれを黙って見送ることにする蒼。

 二人の心が分かる蒼には何かをする必要がないのは分かりきっていた。

 恋の父親も心の中では、恋のことについての心残りがあったからだ。

 だから恋が父親と話して戻ってくるのを待つことにする。

 恋との時間はこれから先ずっと続くのだから、今ぐらい親子の時間も必要なのだろうと思って…。




-恋編-END




 

最後までお読みいただきありがとうございます。

完全にご都合多いです。レイプを主軸として考えておりますが、本来はもっと心の傷が大きいと思いますが、表現力などの問題のため、ものすごくおかしい展開となっているかと思いますが、そこはご愛嬌ということで、よろしくお願いします。


次回は「葵編」になります。興味をもたれた方は次もよろしくお願いします。



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