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キリさん魔王と戦った

「よう、お待たせ」

「あ、やっと帰ってきました。心配してたんですよ」

「悪い悪い。んじゃ行くか」

「そうですね」


 魔王と話を終えキリは三人と合流、そのまま出発した。

 魔王城への道は魔王に聞いているので迷うことはない。キリは三人をそれとなく誘導していく。




「あ、あれが魔王城ですかね」


 しばらく進んでいると灰色の大きな城が見えてきた。キリが聞いていた通りの場所にあるので間違いないだろう。


 空には黒い雲がかかっており、辺りは薄暗い。魔王と勇者の決戦間近という、いかにもな雰囲気が出ている。


「じゃあ、皆。

 …………行こう……!!」

「ええ!!」

「はい!!」

「おう」


 シオンの言葉にキリも一応返事をしておく。

 この後勇者側が勝つことは‘決まっている’ため、キリはシオンたちの事は心配していない。いわゆる出来レースというやつだ。


 これからの決戦に闘志を燃やす三人と何とも言えない表情をしているキリは、魔王城に向けて小走りで駆けて行った。








 魔王城には、案外すんなり入れた。少なくとも、キリがこんなんで王のいる城としてやっていけるのか? と心配になるくらいには。


 後日魔王から直接キリが聞いた話によると、魔王城とは名ばかりで、実は魔王自身ほとんど魔王城にいないらしい。

 キリたちを襲ってきた魔族は何を考えて魔王城に誘導したというのか。全くもって謎である。


 また、魔王がいないだけでなく、そもそも魔王城に襲撃する者など全くいなかったため魔王城の警備は事実上存在しないらしい。



 そんなわけで、何とも遭遇することなく


「ここに魔王が……」


 四人はなんとも魔王がいそうな雰囲気を醸し出す大きな扉にたどり着いた。

 ただし、扉の上にわざわざ『魔王の間』と書くのはやめていただきたい、とキリは言いたいらしいが。


 そんなわけで一行は、ミッションとしては魔王戦を除けば難易度Fランク程度の苦難を乗り越えて魔王のいる部屋までたどり着いた。


「行くよ、皆」


 シオンは、後ろにいるキリ、リース、レーナの三人の顔を窺う。三人が頷くのを確認して、シオンは息を吸った。


「ふっ……!!」


 シオンが押した扉がゆっくりと開いていく。









「よく来たな、勇者たちよ」

「「「魔王!!」」」


 シオンとリース、レーナの声が被る。そりゃ魔王の間なんだから魔王がいるんでしょうよ、と言いたくなるのを堪えるキリである。


 それにしても、魔王が大きい。確かにそういうマジックアイテムを使うと前もって聞いてはいたが、と驚くキリ。先ほどはキリの胸辺りまでしかなかった背丈が、今はキリよりも幾分高い。

 何とも言えない敗北感にキリは打ちひしがれた。


 ちなみに今の魔王ライオネスは、まさに魔王、といった装いである。



「ふん、貴様たちはここで終わる。

 我はこの世界を手にするのだ!!!!」


 色々とおかしいのは突っ込んではいけないとキリは自制する。


「お前の好きにはさせない!! お前はここで僕たちが倒す!!!!」

「…………問答は無意味だな。

 では、――――――我は魔王!! 世を統べるべく生まれし夜天の王なり!!!!

 掛かってこい、勇者たちよ。捻り潰してくれる」


「皆、行くよ!! 僕たちで魔王を倒すんだ!!!!」

「ええ!!」

「はい!!」

「…………あいよ」


 どうにも気分の乗らないキリである。



 何とも禍々しいオーラを纏った剣をライオネスが抜くのを合図に、四人は動き始めた。実はこの禍々しいオーラ、完全に見かけ倒しなのだが。


「ハァッ!!」

「甘い!!」


 気勢と共にシオンが斬りかかるが、すぐに弾かれて距離をとる。


「んじゃこっちは?」

「くっ!! (あ、危ないではないか!!)」


 わざわざ声を出して反応しやすくしてあげるキリ。小声で魔王から苦情が来る。


「ちっ!!(わ、悪い。これでも結構抑えてるんだが)」

「キリさん離れて!!」

「おっと」


 魔法の詠唱をレーナが終えたらしくリースから声がかかる。キリが後ろに飛びのいた瞬間そこを炎の波が通り過ぎていった。

 しかし、四人で一人をフルぼっこなど、勇者たちのすることなのだろうか。


 迫る炎を障壁を張ってやり過ごした魔王は、シオンへと向かう。


「ふん!!」


 手に持った剣を振り下ろす魔王。シオンは手に持った剣でかろうじて受け流す。その隙を突くように、ギリギリ魔王が防御できるタイミングで刀を振るうキリ。


「うぬう!! (だ、だから危ないと言っておるだろう!!)」

「(大丈夫だ、ギリギリ防御できるタイミングはもう掴んだから。安心しろ)」

「(ぬう、そうか)」







 その後も似たようなことを何度も繰り返し


「(そろそろか?)」

「(うむ、次だ)」


 キリと魔王の計画は次の段階へ。


 キリとシオンで何度も魔王と切り結んで時折レーナの魔法が魔王に襲いかかり、レーナが遠距離からシオンの怪我を癒しつつサポートという固定化された形も、とうとう終わりを迎える。


「喰らえ!!」


 シオンの剣を魔王がいなした直後、キリの斬撃が‘魔王の体を捉えた’。


「ぐふっ!!」

「今だレーナ!! やれ!!」

「ええ!!」


 レーナが長いこと詠唱していた特大の焔球が魔王を飲み込む。


「…………っぐあああああああ!!」


 魔王の間いっぱいに響き渡る魔王の叫び声。


 焔が消えると、そこには横たわる魔王の姿があった。


「…………ハァッ、ハァッ……やった……」

「やった……の……?」

「……ええ、やりましたよ……!!」


 三人の勝利を確認する声がキリの耳に届く。

 それにキリは一言だけ返した。


「お疲れさん、三人とも」

「はい!!」

「ええ!!」

「はい!!」


 三人が熱の籠った声で返事するのを聞きつつ、キリは魔王の間の天井を支えている柱に向かう。


「(また今度ここに来るからな)」

「(うむ、待っておるぞ)」

「…………ほら、三人とも、早くここを離れるぞ。今この状態で魔族に襲われたらまずいだろ」


 倒れている魔王とは別の方向、柱の方から魔王の声が聞こえるのを確認して、キリは未だに喜んでいる三人を外へと急がせた。








 ――――この日、勇者一行は魔王の討伐に成功した。表向きだけは、だが。

魔王が幻影魔法を使うことによって生存しているという真実を知っているのは、人間ではキリだけなので問題はない。




 魔王城を出て歩き始めたキリたち四人がシルフィニア王国の王都へ到着したのは、それから二十日と少し経ってからのことだった。

 魔王様が初めてキリに会った時もマジックアイテムを使って大きくなっておけばよかったじゃん、とかいうツッコミはなしの方向で。

 「そ、そんなに軽々しく使えるものじゃねーし」と作者が言っていたということにしておいてくださいおねがいします。





※この小説のもとになった設定↓


 ――――誰がLV99が上限だと言った?



「ようやく辿り着いたぞ! 覚悟しろ魔王、お前は俺達が倒す!! お前の好きなようにはさせない!!」

「ふん、来たか勇者達よ。覚悟をするのは貴様達の方だ。 ――――我は魔王! 世を統べるべく生まれた夜天の王なり! かかってこい勇者よ!!」

「いくぞ皆! 俺たちで世界に平和を取り戻すんだ!」

「「ええ!」」

「…………はぁ」


 かくして勇者達は世界の命運をかけた決戦へと足を踏み出す。



魔王♂

LV99


勇者♂

LV91


魔法使い♀

LV88


僧侶♀

LV87


剣士♂

LV999




 …………アレ……?




 ――――――逃げてぇ!! 魔王様超逃げてぇ!!!!

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