第八話「美子に危機!?警察官ストーカー事件」
『私...向いていないんですかね...刑事...ッ』涙を流す美子に思わずキスをした安井。――混乱していたのは...美子だけではなかった。慌てて拾ったタクシーの中...「どないしよ...ッ俺思わず...」自分の口元を手で覆い隠しながら真っ赤になっている安井は涙を流す美子の顔が頭から離れなかった。「うわぁぁ...明日から合わせる顔ないやないか...」病院に向かうタクシーの中で頭を抱える安井であった。
――次の日、美子は人生初のズル休みをしてしまった。駒澤に熱だと話すと思ったよりもすんなり受け入れてくれた。《そうか、まぁここのところ古屋さん頑張っていたもんね...ゆっくり休んでね》その優しさに涙が出そうになった美子だった。すると小島からメールが届いた。「あ、アズミンから...?」内容はこうだった。【大丈夫?熱って聞いたけど...もしかして何かあったりした?一課の安井さんも病院らしくて休んでるし...水蓮寺さんは何かイライラしてるし...】「...イライラしてるのか、水蓮寺さん」【そうなんですか...私は特に何も無いですよ?ホントに熱で休んでるだけです。安井刑事は昨日の事件で怪我しちゃって...水蓮寺さんのことは知らないですね?まぁ明日には治していきますから!】そう送信するとスマホを置いた。「イライラしたいのはこっちなんだけどな...それよりも安井刑事に...なんでかな...」美子は安井にキスをされた意味を考えていた。「全く分からない...泣いてたから?いや...そんなことはないか」色々と考えているうちに寝てしまった。
ピコンッ...
寝ていた美子はメールの着信音で目が覚めた。「...ん、メール?」【美子ちゃん、一応報告ね?今警察署の女性たちがストーカー被害にあってるらしくて、襲われたりした人もいるらしいの。だから警視総監が男女ペアで行動しなさいって...多分、美子ちゃんは水蓮寺さんになるかもしれないけど...また詳しくは明日話してくれると思うから!一応報告だけしました!】小島からのメールだった。「ストーカー...まぁ私には関係ない」【わかりました!報告ありがとうございます!】またスマホを置くと眠りについた。
『光!光となら...なんでも出来る気がするんだ!』『...お前は涼のような刑事にはなれない』――「...ッ!?」再び起きると、ベッドから起き上がり顔を洗った。「やだなぁ...何でお兄ちゃんのこととか水蓮寺さんのことで夢見なきゃいけないんだろ...」顔を洗い終えると買い物へ行くことにした。
外を歩いていると夕方なだけあって人通りは多かった。「ストーカーか...警察官がストーカーに合うなんて...」そんなことを考えていると前から歩いてくる男の人に見られていることに気づいた。「...?」知り合いかと思い視線を返すと男は目を逸らして下を向いた。その男とすれ違う時に何かを言われた気がしたが聞こえなかったため気にしないようにした。
家に帰るとご飯を食べお風呂に入るとベランダに出た。「......」ちらっと隣の部屋を覗くと暗いままだった。恐らく昨日から帰っていないのだろう...。美子は以前このベランダで水蓮寺と話したことを思い出した。――『お前、外に筒抜けだぞ』『す、水蓮寺さん...脅かさないでくださいよ!』『別に脅かしていない...お前の声がでかすぎて来ただけだ』――「あれ、なんで私...」気づけば水蓮寺のことばかり考えていた。気を紛らわすためにパチンッと頬を叩くと部屋に戻り、ベッドに入ると眠りについた。
次の日の朝、気持ちを変えて出勤した。つもりだったのに...署の中で誰よりも先に安井に出会ってしまった。「あ...」「あっ」二人は顔を合わすと気まずそうに目を逸らした。美子は松葉杖を使っている安井を見ると「...それ、大丈夫ですか?」「あ、あぁ...これは病院の先生が大袈裟にしてるだけや...こんなん大丈夫や...」安井も美子もいつも通りに話そうとしているがどこかぎこちなかった。「ほな、俺行くわ」そう言うと安井はその場を去った。
三課に着くと山口と小島が話していた。「お、おはようございます」「あ!美子ちゃん!」小島が近寄ってきた。「大丈夫だった?」「え...あ、はい」頭を下げると自分の席に座った。すると山口もこちらに来て「古屋さんも気をつけてね?」「え...なにがですか?」聞くと山口は昨夜、怪しい人物につけられていたそうだ。「大丈夫だったんですか?」「えぇ...まぁ大丈夫だったけど」そんな話をしていると水蓮寺がやってきた。水蓮寺は美子の方を見ずに奥のソファに行くと寝転んだ。その後、栗田がやってきた。「おはよう、三課の皆さん揃っていますね」「お、おはようございます!警視総監!」また駒澤が立って挨拶をすると「昨日も言いましたが...警察官がストーカーに襲われる事件が発生していますので、男女ペアで行動してくださいね、よろしくお願いします」それだけ言うと栗田は行ってしまった。当然、駒澤は「じゃあ、水蓮寺くんは美子ちゃんとよろしくね」「え...」水蓮寺は全く返事もせず眠ったままだった。多分これは寝たフリなんだろう...。「...いいです私は」「えっ?」三課のみんなは美子を見た。「あ...ほら!山口さん昨日ストーカーみたいな人につけられてたんですよね?だったら水蓮寺さんは山口さんについていた方がいいですよ!」そう言うと駒澤はびっくりした。「え...わ、私は別に...」山口が困っていると水蓮寺がソファで寝転んだまま口を開いた。「いいんじゃね?そいつがそう言ってるんだし...俺はいらないみたいだからな」何故か内心...美子は心が痛かった。自分で言っておいて否定してくれるんじゃないかと...思っていた。だが引き下がれない美子は「ほら!水蓮寺さんもそう言ってますしね?ね?ボス!」「じゃあ...古屋さんは滝野くんと共に行動してくれるかな?」そう言うと名前をあげられた柚斗は「あ、わかりました!」と返事をした。
そして...美子は柚斗と行動することになった。今回の捜査は警察官を襲った犯人を探すことだった。最近、続けて女性警察官が襲われているが犯人は同一人物説が出ているらしい。しかし夜遅く人通りもなかったため、手がかりはほとんどなかった。「んー...犯人か...」美子は気を紛らわすために必死で捜査していた。すると...後ろからついてきていた柚斗は異変に気づいていた。「あのさぁ...古屋」「ん?」「水蓮寺さんと何があったか知らないけど...逃げてても意味無いと思うぜ?」そう言われぎくっとした。「え...な、なにもないよ!?」「分かりやすいんだよな...古屋って」美子は振り返ると「...ほんと?」と柚斗に聞いた。「あぁ、だってさっきも...山口さんに譲りたくなんかなかったのに勢いで言ったら水蓮寺さんがホントに行っちゃった...的なやつだろ?」「うわぁぁ...バレてる...」美子は頭を抱えた。「え...待って?柚斗が分かるってことは...これ水蓮寺さん完全に気づいてるよね?」「まぁだろうな...気づいててそうしたんだろうし」柚斗はさっさと歩いていく。「何か...柚斗って水蓮寺さんに似てきたよね...」美子は柚斗を追いかけるとそう言った。「俺が?んー...似てんのかな?」首を傾げながら考えるもあまり納得のいっていない顔だった。「え、水蓮寺さんに似てきてるって嫌だった?」「嫌...ってわけじゃないけど、別にどっちでもいいかな?」美子は柚斗の隣を歩きながらやっぱり似ている...と頭の中でも思うのだった。
しばらく調査を続けていると外はすっかり暗くなっていた。「やべっ!そろそろ返さねぇと怒られるよな...」「ほんとだ!もうこんな時間!」「じゃ、家まで送ってくから」そう言うと柚斗は歩き出した。「え、家まで!?」「あぁ...今、一人にすると危ないから...」柚斗の好意は凄くありがたいのだが...美子は内心困っていた。なぜなら...家の隣が水蓮寺だと言うことをまだ誰にも言っていないからだ...。「だ、大丈夫でしょ!まだそんなに暗くないし!」「何言ってんだよ...行くぞ」呆れたように美子を見ると柚斗はタクシーを拾った。仕方なく美子もタクシーに乗るとどうか水蓮寺が同じ時間帯に帰ってきませんように...と心の中で願った。
タクシーの中、静まり返っていたが柚斗が突然話し出した。「お前さ、水蓮寺さんのこと好きなの?」「へっ!?」色々考えていた美子は突然話しかけられたこととその内容に驚き間抜けな声を出した。「だから...水蓮寺さんのこと好きなのかって...」「水蓮寺さんのこと!?そんなわけないじゃん」あっさりと返すとそれ以上は何も言ってこなくなった。
家の近くにタクシーが着くと急いで美子はタクシーを降りると「ありがとう!柚斗!タクシー代は明日返すから!じゃあね!」「え...ちょっ...」柚斗の返事も待たないままドアを閉めると急ぎ足で家に入った。「ったく...騒がしいやつ...すみません、出してください」タクシーの中に残された柚斗はそう呟いたのだった。
急いで家に入ると鍵を閉めた。「ふぅ...よかった...いなくて」一息つくと部屋の電気をつけて、ソファに座った。「...私が水蓮寺さんに恋?するわけないな...多分一生」そう言って笑うとお風呂に入る準備をした。
美子が水蓮寺を避けているのは...兄の話を聞いてからだ。別に兄を殺したわけではないから恨むとかそういうのはない...だけどやっぱり相棒だったなら助けることも出来たはず...とか色々と考えてしまうのだ。それに今の水蓮寺を見ると何故か腹が立ってしまうのだ。兄は亡くなっているのに...なぜ水蓮寺は悲しむことすらせず呑気にできるのだろう...なぜ女の人たちと遊んだりできるのだろう...そんなことを考えてしまうのだった。
お風呂から上がるとベランダに出た。そこで無意識に確認してしまうのは...やはり隣の部屋だった。「...いないよね」そう一言呟くと部屋に入った。水蓮寺が部屋の隅でその呟きを聞いていたなんて知らないまま...。
「はぁ...疲れた!寝るか!」ベッドに入るとすぐに眠りについた。すると...夜中に電話が鳴った。「ん...だれ?」誰からの着信なのかを確認しないまま電話に出ると...《もしもし!美子ちゃん!》「...ん?」《私!杏実!》「え...アズミン!?」電話の向こうでは何やら焦っているようだった。《今回のストーカー犯の情報が入ったの!》「情報...ですか?」情報なら明日でもいいのではと思っていたが...次の言葉を聞くとそうはいかないことが分かった。《それが...ストーカー犯の真の狙いは美子ちゃん...あなたなの》「えっ...わ、私ですか!?」《そう、どうやら警察官だって知っていて片っ端からストーカーして捕まえて美子ちゃんにたどり着こうとしてるみたいなの》「たどり着こうとって...じゃあ全ては私を探すため...?」顔が青ざめた。美子を探すために色んな警察官が襲われていた...。《とにかく、今日は戸締りをしっかりして明日は滝野くんがそこまで迎えに行くからね!それまで出ちゃダメよ!》そう言うと電話を切った。「...ストーカーの本当の狙いは...私?でも何で...」そんなことを考えていると自然と眠っていた。
「ん...」朝になると柚斗の鳴らすインターホンで目が覚めた。「...えっ!あ!!」慌ててドアを開けると柚斗が呆れた顔で立っていた。「はぁ...だと思ったよ、待ってるからすぐ着替えろ」そう言うとドアを閉めて急いで着替えて準備をすると家から出た。「お待たせ!」「じゃ、行くぞ」「ねぇ、柚斗...何で私が狙われてるんだろ...」「さぁな、犯人の意図は俺にも分からねぇけど...とにかく気をつけないといけないってことだけだ...」柚斗はタクシーを止めると美子を先に乗せた。
「ありがとね...わざわざ来てくれて」「え...まぁ同期だし?心配にはなるだろ」柚斗は何故か少し自慢げに言った。「...うん、ありがとう」それだけ言うと黙って窓の外を見た。
署に着くとすぐに三課に行った。「おはようございます」「おはようございまーす」二人が入ってくるとみんなは駆け寄ってきた。「大丈夫!?」「というか...美子ちゃんどうして狙われてるの!?」「古屋さん...何かした?」などと質問攻めにあったのだった。まだ水蓮寺は来ておらず少しホッとした美子だった。
その頃、水蓮寺は珍しく安井と話をしていた。「なんや、水蓮寺...」「お前、様子がおかしいな...何かあったか」「えっ...な、何もないけど」明らか動揺する安井を見た水蓮寺は何があったのか少し予想がついた。「...ま、どうせ古屋と何かあったんだろ」そう言うと安井はドキッとして飲んでいたお茶を吹いた。「ッゴホゴホ...な、なんや急に!」「なにがあった」「...み、美子ちゃんにキスした」安井は一生の告白をした後の表情をしていたが、それに対して水蓮寺は全く驚いてもいない様子だった。「キス?ふーん」「なっ...ふーんってそれだけかいな!」「キスくらい別にいいだろ...」表情を一つも変えずに言う水蓮寺を見た安井は感心したように「...お前、ホンマに凄いやつやなぁ」と呟いた。「は?まぁ何となく分かった...」それだけ言うと水蓮寺は捜査をしに行った。
柚斗と美子も引き続き捜査をするため、出勤するが...狙いが美子だったことが分かりくれぐれも気をつけるように...おとり捜査などしないようにと駒澤に釘を刺されたのでした。「あーあ...おとり捜査禁止か」「当たり前だろ...お前馬鹿か」「だって...柚斗もおとり捜査してたじゃん、この前」そう、柚斗はネット殺人の事件の時にネット関連に詳しいという理由からおとり捜査という形で水蓮寺に頼られたのだ。「そりゃあ...したけど今回のはまた別だ!俺のは俺が狙いじゃなかっただろ?古屋の場合は古屋が狙いなんだから危ねぇだろ」「...わかったよ」少し怒られ納得いかなかったが仕方なく諦めることにした美子だった。
捜査もあまり進まないまま夜になってしまった。「そろそろ帰るか...課長からも言われそうだしな」「そうだね、そろそろ暗いもんね」そう言って帰ろうとした...すると柚斗の電話が鳴った。「あ、わり...ちょっと待ってろ」柚斗は少し離れたところで電話に出た。「...はぁ、水蓮寺さん何してるんだろ...って何で水蓮寺さんのこと心配してるんだろ...ありえない!」独り言を言っていると電話を終えた柚斗が戻ってきた。「ごめん古屋...母さんが倒れたらしくて...今すぐ行かなきゃならないんだ...」「え...大変!すぐ行かなきゃ!」「でも...ッ」「いいから!私だって刑事なんだよ?大丈夫だから!」美子がそう言うと柚斗は少し考えたが「...わかった、何かあったら電話しろよ」と言い残すと走り去って行った。
柚斗を見送ったあと、美子はそのまま帰る方向へと歩いた。「さてと...買い物でもして帰ろうかな?」呑気なことを言いながら歩いていた。その後ろからは...この間の男が後をつけていた。「んー...今日は何食べようかな?外食でもいいかも...でもまだ給料日前だからなぁ...」そんなことを呟きながら歩いていた。
日も落ちて暗くなった頃、美子は近道の公園の中を歩いていた。「公園とか懐かしい...小さい頃遊んだなぁ...なんて...」ふと喋るのをやめた途端...後ろから足音が聞こえた。この時間のこの公園はあまり人が通らない...なのに後ろからついてきている...その状況に動揺を隠せないでいた美子は自分も警察だから...怯えていちゃダメだと一度後ろを振り返った。しかし誰もいなかった...。「あれ...気のせい?」考えすぎかと歩きだそうとした。その時だった...後ろから首を絞められた。「ッぐ...!だ...だれ...」後ろを見ようとしても首を絞める力が強く人物を確認することが出来ないでいた。「...や...めて...ッ」意識を失いそうになった時、首を絞めていた手が急に離れた。「ッゴホゴホ...ッハァハァ...」息をするので精一杯の美子は何が起こったのか全く分からなかった。「ぐあっ!やめろ...!」恐らく美子を襲った犯人が何者かによって捕らえられたのだろう...。誰なのかを見ようとした...しかし緊張から急に解かれたことからか、安心からか...気を失ってしまった。
「...ん」目を覚ますと見覚えのある天井が目に入った。自分の部屋だ...けれど匂いが違った。「あれ...」周りを見渡すと美子の寝ているベッドの横には水蓮寺が座っていた。「えっ...す、水蓮寺さん!?」「目、覚めたか...ん」すると水蓮寺は美子に水の入ったペットボトルを渡した。お礼を言うと一口飲んだ。「お前、俺が来なかったら死んでたぞ」「あ...」さっき助けてくれたのは水蓮寺だったのかと分かると何故か余計に安心した。「...ありがとうございます」そう言うと立ち上がろうとした。「古屋、もう一度俺の話を聞いてくれ」水蓮寺は立ち上がろうとした美子の腕を掴み止めた。「え...話すことなんて...ッ」「あの日...俺も乗ってたんだ...涼と同じ車に...」「え...!?」腕を振りほどこうとした美子はその言葉を聞いて力を緩めた。「...座れ」大人しく座ると水蓮寺は涼の写真を見て話し出した。「俺は...一緒に捜査に出てた...」―――
ずっと追っていた連続殺人事件の犯人の情報が入ると俺達は車に乗り現場に向かった。その時も涼が運転していた。『今度こそ...捕まえるぞ!光!』『当たり前だ...飛ばしすぎて事故るなよ』『大丈夫だよ!俺は凄いんだからな』そして二人は現場近くまで行くと上の指示を待った。俺はコンビニで涼の分のコーヒーを買っていた。コーヒーを買ってコンビニを出ると...涼は車のエンジンをかけていた。『ッ!?おい...何してんだ!』『...光、お前はここにいろ』『はぁっ!?何言ってんだ!』『俺一人で行く...だからお前はここにいろ!』いつも冷静な涼が取り乱したかのように怒鳴った。『バカ言うな!まず上の指示は...まだなんだろ?』『...上の指示なんか聞いてられるかよ...』『はぁっ?』『これ...光が言ってただろ?』そう言いながら笑うとアクセルを踏んだ。『待てって!涼!!』『大丈夫...光、俺に何かあったら妹をよろしく...』そう言い残すと走り去って行った。『...ッ涼!!』もちろん俺は追いかけた...けどそんなの追いつくはずもなく、タクシーを拾って追いかけて行った先では...事故が起きていた。―――「それが...涼の事故だ...」「...つまり、お兄ちゃんは水蓮寺さんを置いていった...」「あぁ...」話せなかった真相を話すと水蓮寺は写真を置いた。「だから俺はあいつの死の真相を密かに調べてる」「え...」「コンビニでコーヒーを買ってる時、あいつは外で車を調べていた...多分、何か仕掛けられているのに気がついたんだろ...涼の性格だからな、俺を巻き込まないようにしたんだろ...」そう話すとベランダに出てタバコを吸った。「...お兄ちゃん」「約束する...俺は必ずあいつの...涼の死の真相を明らかにする」顔は見えなかったが、声が震えていたことから水蓮寺はきっと怒りと涙を堪えていたんだと...美子は分かった。
美子は全てを聞いて水蓮寺のことを考え直したのだった。「ありがとうございました、そろそろ自分の部屋に戻りますね」そう言ってドアの方へ向かった時...「あ、お前安井にキスされたらしいな」「え...!?」「よかったな、人生二回目のキスだろ?」水蓮寺はニヤリとした。また嫌な笑みを浮かべた。それを見た美子は「...そ、そうですね...」とだけ言うと水蓮寺の家を出てすぐに自分の家に入った。鍵を閉めると...「やっぱり嫌な人!!見直すの無し!」と叫んだのは言うまでもない。




