第七話「相棒シャッフル?安井と美子の一日」
――『俺は...古屋涼、つまりお前の兄のかつての相棒だ』『...これが俺が話せる全てだ』――
朝、美子は警察署に行きたくなかった。「はぁ...何かどうしよう...」昨夜、心にあったモヤモヤ全てが話された。知りたかったはずの兄の真相を聞かされて...嬉しいはずなのに...スッキリしたはずなのに...何故かモヤモヤが晴れない。それどころか何だか水蓮寺に不信感すら抱いていた。
それでもやっぱり行かないといけないため、美子は重い足を動かした。「水蓮寺さんには...今は会いたくないな...」そう呟きながら少し早めに家を出た。
出勤すると柚斗と駒澤、そして山口と小島が来ていた。「おはようございます...」「あー、古屋さん昨日はご苦労様でした」美子が挨拶をすると駒澤がすぐに声をかけてきた。多分、出勤した三課のみんなに言ったのだろう...。昨日は遊園地爆破事件で三課みんなが出勤したのだから。「あ、はい...捕まってよかったです」あからさまに元気のない声で対応する美子。みんなはおかしいと思っていた。するとそこへ一課がやってきた。「失礼すんでー」「失礼します」安井と新堂が入ってくる。「横浜駅のすぐ近くで時間があったんやが...水蓮寺と美子ちゃんにも来て欲しいんやけど...水蓮寺は?」見渡す限り水蓮寺はまだ来ていなかった。美子は内心...水蓮寺には会いたくないと思っていた。そんな美子はとっさに思いもよらないことを言い出した。「あの...安井刑事」「ん?なんや?」「...私、今は水蓮寺さんとは相棒でいたくないんです...だから...安井刑事と共に行動してもいいでしょうか?」いきなりの発言に驚く三課、そして安井だった。「え!?み、美子ちゃん!?」「だめ...ですか?」安井はハッキリと嫌とは言えずに困っていた。すると隣で面白そうに見ていた新堂が口を開いた。「いいんじゃないですか?たまには相棒シャッフルっていうのも」「はぁ?お前なぁ...」「俺も水蓮寺さんと一緒に捜査してみたかったですし、古屋さん安井さんのこと任せましたよ?」そう言うと先に行ってしまった。残された安井も仕方なく美子と共に現場に向かった。
「仕方ないから...今回だけやで?」パトカーに乗ると助手席に乗った美子に一言言うが内心安井は幸せだった。「ありがとうございます!」シートベルトを締めるとパトカーを発進させ現場へ向かった。
現場に着くと、水蓮寺と新堂は既に現場捜査を始めていた。安井と美子もその近くに行くと水蓮寺が近づいてきた。「...あ、あの」「お前、どんな理由かは知らないが...安井に迷惑だけはかけるなよ」と冷たく言い放った。そんな態度に腹が立った美子は「わ、分かってますよ!水蓮寺さんよりも先に犯人を捕まえますから!」そう怒鳴ると水蓮寺は無言で立ち去って行った。「あ、水蓮寺さーん」その後を新堂も追いかける。「じゃあ、現場捜査しよか...っと美子ちゃんは死体が苦手やってんよな?俺がそっちの調査はするから...この近辺のこと調べといてくれへんか?」安井は優しく言うと自分は死体現場に行った。「...優しい安井刑事...」美子はこのままがいいと少し思った。そして近辺調査のために現場近くを歩いていた。「んー...調査するとは言ったものの...死亡推定時刻も聞いてないからな...」と考えていると後ろから死体の調査を終えた安井がやってきた。「おまたせやで美子ちゃん」「あ、安井刑事!」「死亡推定時刻は昨晩の十一時やな...その頃周りには誰もおらんかったそうや」恐らくメモを書いてある手帳を見ながら説明してくれた。「十一時...となると犬の散歩とかしてそうですけど...ここは河川敷ですし...」そう言うと周りを見た。犬の散歩をしている人やジョギングをしている人がいたため、その人たちに一応話を聞くことにした。
「昨日ですか?昨日の夜は早めに散歩をしたので...分からないですね」「そうですか...ありがとうございました」一礼すると美子と安井は他の人に話を聞きに行った。「美子ちゃん、何か成長したな」「え...?」「いや、俺が全部見てたわけやないから...偉そうなこと言えんけど、初めて会った時よりホンマに刑事らしくなっとる」そう言って貰えたのは初めてだった美子は嬉しさでいっぱいになった。「そんなこと言ってくれるの...安井刑事くらいです...」「そ、そうか?」「嬉しいです...もっと頑張りますね!」眩しいくらいの笑顔でそう言うと安井は顔を赤らめた。「ほ、ほな...次行こか」照れ隠しをするかのように安井は前を歩いた。
被害者の南孝喜さんの遺族の方に話を聞くことにした。「夫は...浮気をしていたと思います」「え...浮気...ですか?」「ええ...相手はお隣の奥さん」そう言うとカーテンを開けて隣の家を指さした。「隣の...何で奥さんは浮気しとるって思ったんですか?」「...私が隣の旦那と浮気してるからです」「え...?」聞くところによると、南孝喜さんの奥さんの遥さんは隣に住んでいる相良陽二さんと浮気をしていたそうだ。そしてその相良さんの奥さんの美代さんは遥さんの旦那様であり今回の被害者の孝喜さんと浮気をしていたらしい。言うなれば...「ダブル不倫ってやつやな...」被害者の遺族の話を聞いたあと、車に戻ると安井がふと呟いた。「え...ダブル不倫ですか?」「あぁ...ややこしいことになったで...これやと容疑者が三人おるやないか」安井は頭をかくとハンドルを握った。「相良陽二さんとその奥さん...そして被害者の南孝喜さんの奥さん...この三人が容疑者なんですか?」「いや、被害者の奥さんは違うやろな...ほれ」車を発車させると安井は自分の鞄の中の写真を見るように指示した。「これは...」写真には名前の挙がっていない人物が写っていた。「そいつは被害者の会社の同僚の佐々木や」「同僚...」「どうやら被害者の奥さん...浮気しとったんは一人やないみたいやで」安井は前を向いたたま話した。「え!?じゃああの奥さん...この佐々木さんとも!?」「恐らくな...そりゃこじれるで」苦笑いを浮かべると安井は車をとあるお店の駐車場に停めた。「安井刑事...ここは?」「息抜きや、腹が減っては何とやらって言うやろ?ここのんは美味いで!」そう言い残すと車を降りた。美子も疑問に思いつつ車を降りる。
お店に入るとソースのいい匂いが漂ってきた。「わぁ...いい匂い...」「おっちゃん、いつもの席座るで」お店の人にそう言うと奥の座敷に入った。「おいで美子ちゃん」と手招きした。それに釣られて美子も座敷に上がった。
「ここのお好み焼きはめっちゃ美味いねん」「は、はぁ...」「あんまり考えすぎも良くないで?水蓮寺と捜査のとき、あいつあんまり昼メシとか食べてへんやろ?」「あ、確かに...そうですね」安井はオススメのメニューを頼むとお水を取ってきてくれた。「あ、ありがとうございます」「気楽にやろうや、な?そんなすぐに解決なんて出来ひんのやから...しっかり食べて、しっかり寝て、それから考えるんや」そう言うと出てきた材料でお好み焼きを器用に焼き始めた。「大阪出身の俺が美味いお好み焼きを美子ちゃんに食べさせたるからな!」「上手い...ですね」「そりゃあずっと焼いてきとるからな」ニコニコと笑いながら楽しそうに焼く姿を見て何故か心が締め付けられた。「...安井刑事でよかったです」「ん?なにがや?」「シャッフルして...よかったです」ポツリと呟くと安井は焼く手を止めずに話した。「まぁ...そう言ってくれんのは凄い嬉しいけどな、美子ちゃんに一番ふさわしい相棒は誰なんか...ちゃんと見てみたらええ」「ふさわしい...」「せや、あいつは口は悪いし人でなしなとこもあるけど...長い付き合いの俺から見たら意外とええやつやで?」そう言うと美子の方を向き親指を立てた。「...安井刑事」「ほら、出来たで!」焼けたお好み焼きを食べやすい大きさに切ってくれてお皿に乗せて出してくれた。「...ありがとうございます」「食べてみ?美味いから」「いただきます...」一口食べると口の中に広がるソースの香りと共に幸せも広がった。「美味しい...です」「せやろ?」満足気な表情を浮かべると安井もお好み焼きを食べた。安井が一生懸命美子を元気づけようとしてくれた思いが伝わり、美子は自然とお好み焼きを口に運んでいた。
「いやー、お腹いっぱいや!」「安井刑事...ご馳走様でした」「ええんやって、それより元気出たみたいやな」安井は自然と美子の頭を撫でた。「え...?」「あっ...いや...すまん!」手を離すと急いで車に乗った。美子は首を傾げながらも後を追いかけて車に乗った。「ほな、腹ごしらえもしたことやし...捜査の続き行くで!」「は、はい!」シートベルトを締めると次の捜査現場に向かった。「今からは被害者の同僚に話を聞きに行くから...被害者の会社に行こか」「あ、例の佐々木さんですね」車を走らせること三十分。
「さっきも二人組の無礼な刑事さんが来たんですけど?」佐々木を呼び出すと少し不機嫌そうにやってきた。「あぁ...それうちの同期なんやわ、許してやって」「来てそうそう、浮気なんてクズがやることとか言われて...俺別に浮気なんてしてませんから」水蓮寺が言いそうなことだ...と美子と安井は思った。そして「浮気はしとらん...か」「してませんよ、だいたい孝喜が死んだのって夜なんでしょ?俺、その時間は会社で残業してましたから」イライラしながら答える佐々木は帰ろうとしていた。「あ、その孝喜さんの奥さんとは面識は?」「一度しかないですよ!孝喜に家に招待されて...その時に会っただけです!お腹刺されたっていうか...孝喜は肺に持病持ってたんで...それで死んだんじゃないですか!?」その言葉に美子は少し疑問を感じた。「もういいですか!忙しいんです...!」「あぁ、すんません」佐々木は急ぎ足で帰って行った。「めっちゃ怒ってたなぁ...」「そうですね...」美子は車に戻ると何かをずっと考えていた。「どないしたんや?美子ちゃん...」「あ、いえ...」車を発進させると運転する安井の隣で美子は捜査資料を読んでいた。
警察署に着くと、一度捜査会議に出た。捜査会議では...やはり安井の言っていた容疑者が三人あげられた。相良陽二、相良美代、そして同僚の佐々木守だった。再び、その三人の近辺...そして事件時刻の行動をあらいなおすことになったのだった。
「まぁ、今日は一度帰って...明日の朝からまた捜査しよか」「...は、はい」安井と美子は捜査資料をまとめると会議室を出ようとした。すると捜査資料だけを貰いに水蓮寺と新堂が入ってきた。「水蓮寺、今日はやけに遅かったやないか」「...あぁ、少しな」チラッと美子を見ると美子は目を逸らした。小さく舌打ちをすると「お前、迷惑かけてないだろうな」「...かけてませんよ!安井刑事は水蓮寺さんなんかよりもよっぽど優秀です!」そう言い残すと今度は美子が安井を引っ張り会議室を出ていった。
「美子ちゃん、あんなこと言うて大丈夫か?」「...あの、安井刑事!私、犯人わかったかもしれません!」「え!?ホンマに言うてるんか!?」安井は驚いた表情をすると美子を空いた会議室に入れた。「...はい、犯人は多分...佐々木さんで間違いないと思います」「何でや?何でそう思ったんや?」美子は思い出すように話した。「佐々木さん...どうしてお腹が刺されたって知ってたんでしょうか...」「え...?」「ほら、だって佐々木さん言ってたじゃないですか」――
『お腹刺されたっていうか...孝喜は肺に持病持ってたんで...それで死んだんじゃないんですか!?』――「私たちも報道もまだどうやって死んだかなんて詳しく話してませんよ...?」「...確かにそうや!死因を知ってんのは犯人しかありえへんってことか...」安井は美子の肩を掴むと驚いた顔をした。「だから...佐々木さんが犯人だと思います...」そう言うと安井と美子は時間があったため、帰る前にもう一度捜査に出た。
相良さん夫婦の家を訪ねた。「なんでしょうか...」「すんません、何度も警察が来たかと思うんやけど...もう一度だけ話聞かせて貰えませんか?」安井が頼み込むと仕方ないからと家にあげてくれた。「何度も言いましたけど...昨日の夜は家にいましたから私も夫もアリバイはありますよ?」奥さんに話を聞いていると旦那さんが帰ってきた。「また警察か...ったく」「すみません...」相良陽二は鞄を置くと安井に近づいた。「一つだけ...言おうと思ってたんですが南さん、会社ではあんまりいい噂は聞いてないですよ」「え...会社ではって...」「あぁ、僕彼とは担当は違うんですけど会社自体は同じなんです」淡々と話す陽二。「いい噂は聞かないって...」「まぁ、同僚の佐々木さんに聞いたので本当かどうかは確かめてないから分からないですけどね」そう言うと鞄を持って部屋に入ってしまった。「すみませんが...夕飯の支度とかがあるので...」「あぁ、もう帰ります」安井と美子は相良さんの家を後にした。
車に乗ると「これは佐々木さんで決まりやろな...」「いい噂を聞かないって流したのも佐々木さんですし...」「あとは決定的な証拠がないとやな...」安井は車を発進させた。「とにかく今日は送ってくから...」「そういえば佐々木さんの家って...この近くですよね?」「あぁ、せやけど今日は行かん方がええ、また明日改めて...」「行きましょうよ!今言って確かめないと...!」「あかん、あんな美子ちゃん...捜査には順序とタイミングってのがあるんや、無理に乗り込むと大変なことになるんやで?」安井は少しキツめに美子に言った。仕方なく美子も諦めることにした。「...わかりました」「明日行こ、な?」「...はい」安井は車を走らせ、美子の家まで送ってくれた。美子はお礼を言うと家の中に入っていった。
「はぁ...」ソファに座ると深いため息をついた。美子は兄の手帳を開けると中身を見た。――
『あいつは俺にとって最高の相棒なんだよ』『そんなに?』『口悪いとこもあるけど優しくて面白くて...あいつとならなんでも出来る気がするんだ!』『俺があいつの相棒でガッカリしたか?』――「...ガッカリとか、そういうのじゃなくて...」美子は兄の手帳を閉じるとスマホを取り、安井に電話をかけた。
美子を家まで送ったあと、署に戻った安井は資料を見返していた。そこには新堂もいた。「安井さーん、どうでしたか?古屋さんとの捜査は」「あん?そりゃ...よかったで」照れ隠しなのか資料から目を離さないまま安井は答えた。すると安井の電話が鳴った。「ん、電話...美子ちゃんから!?」慌てて電話に出た。《もしもし...》「美子ちゃんどないしたんや?」《やっぱり私...今日行きたいです!佐々木さんを何としてでも...》「せやから...危険なんやて」《でもこのままじゃ...水蓮寺さんに先に...ッ》安井は水蓮寺の名前が出た途端...少し黙った。《...安井刑事?》「...原因はそれか?美子ちゃん」《え...》「水蓮寺に負けたくない、水蓮寺よりも先に逮捕したい...それが根っこやな」図星を言われて美子は黙ってしまった。「確かにその気持ちも分かる。佐々木のとこ行って問い詰めて吐かせれば逮捕はできるやろう...けどそれで行って佐々木に何かされたら美子ちゃんが危ないんやで?」安井は優しい口調で話していた。しかし...美子の頭の中は兄のこと、水蓮寺のことしかなかった。《...もういいです》「ん?」《私...一人でも行きますから!安井刑事には頼りません!一人で逮捕します!》「ちょ...ッ」美子はそう言い終えると電話を切った。
美子は佐々木の家の前にいた。「...私だって刑事なんだから...怖がってちゃダメ」そしてインターホンを押すとすぐに出た。「はい」「...ッ佐々木さん、お昼に会社に伺った警察のものです...もう一度だけ話を聞きたくて来ました」そう言うと少ししてドアが開いた。「...あんた一人?」ドアを少し開けると疑いの目でそう尋ねてきた。「はい、私一人です。だから入れてください」すると佐々木はドアを開けて美子を招き入れた。
「佐々木さん...単刀直入に聞きます!南孝喜さんを殺したのはあなたですね!」家に入るなり美子は佐々木に向かって言った。「は?」「お昼に伺った時、あなたは南孝喜さんがお腹を刺されたと言っていました...まだ公表されていない死因を知っていました」余裕を持った顔をしていた佐々木の顔は一瞬焦りのある表情になった。「どうして...死因を知っていたんですか?もし何かを知っているなら...ッ」「お前刑事なのに馬鹿だな...俺が怪しいって思ってるなら、そんなやつの家に一人で来るなんて...」佐々木はそう言うと美子に襲いかかった。「え...ちょっ...やめて!!」佐々木は美子を押さえつけるとポケットに入れていたナイフを取り出した。「...ッ!?」「一人殺したら...何人殺しても一緒だろ」ナイフを振り上げると佐々木はニヤリと笑った。美子はもうダメだと思い、目をギュッと閉じた。すると...すぐ側のドアが開いた。「美子ちゃん!!」「...おまえッどこから!」「その子から離れろや!」入ってきたのは安井だった。佐々木は美子から離れると安井の元へ行き、ナイフを振り上げた。安井は一度避けるも続けての攻撃を避けることが出来ずナイフで足を切られた。「ぐあっ...!」足を切られた安井は美子の方へ倒れた。「...安井刑事!!」今度こそダメだと思ったが...水蓮寺が入ってきた。「大丈夫か...」安井と美子をちらりと見ると佐々木からナイフを奪い、押さえつけると素早く拘束した。家から出ると水蓮寺は警察に電話をしてパトカーを呼んだ。「...安井刑事...ごめんなさい...ごめんなさいッ...」水蓮寺が電話をしている間、美子は安井に謝っていた。「ええて...美子ちゃんに怪我なくてよかったわ...」「でも...私のせいで...ッ」「そうだ、お前のせいだ」すると電話を終えた水蓮寺が入ってきた。「水蓮寺...お前...」「こいつは優しいから大丈夫って言うけどな...全部お前のせいなんだよ!お前がヘマしてなければ誰も怪我せず佐々木を捕まえられたんだ」「...ッ」「安井に迷惑はかけるなって言っただろ!」いつになく大声をあげる水蓮寺に下を向くことしか出来ない美子。そこへパトカーが到着し、警察がやってきて佐々木を連れていく。「...お前は涼のような刑事にはなれない」そう冷たく言い放つと水蓮寺もパトカーに乗り、行ってしまった。美子は目を丸くさせ、心の中の何かが壊れたような感覚に襲われた。
佐々木は南孝喜さんの奥さんとは浮気はしていなかったようだ。ただ、片思いをしていたそうだ。しかし被害者の孝喜さんはそれを疑い、佐々木を問い詰めた。佐々木は孝喜さんと言い合いから喧嘩になり殺してしまったそうだ。殺すつもりはなかった...と供述しているようだ。ちなみにダブル不倫についてはお互い了承済みで事件にはなっていないため、そこから先は触れてはいない。
佐々木を連行した帰り、足に怪我を負った安井に美子は肩を貸しながらタクシーを探し歩いていた。「すまんなぁ美子ちゃん」水蓮寺と美子のやり取りを見ていた安井は美子に慰めの言葉をかけようとするも美子は呆然としていた。「...ッ」すると美子の目から涙が流れた。「美子ちゃん...?」「私...向いていないんですかね...刑事...ッ」涙を流しながら聞くと安井はかける言葉が見つからなかった。「...美子ちゃん」名前を呼ばれ、美子は安井の方を向いた。すると...「ッ...!?」安井は自分の方を向いた美子にキスをした。顔を離すと真っ赤になった安井は美子から離れた。「や、やっぱりタクシーは一人で乗って行くわ!美子ちゃんはすまんけど...先に帰り!じゃ、じゃあな!」そう言うと慌ててタクシーを拾い乗って行ってしまった。残された美子は何が起こったのか整理がつかないまま...ただ呆然と唇を押さえながら家に帰ったのだった。




