第十一話「いよいよ最終章!容疑者は美子!?」
「先週起きた殺人事件の被害者宅から...古屋さんの両親の遺品らしきものが見つかったらしいんだ」「え...私の両親の遺品って...」「まだ完全に決まったわけじゃないんだが...その遺品についていた指紋をDNA鑑定すると古屋圭司さんのものだったらしい...」駒澤はDNA鑑定の結果の資料を見せた。そこには確かに【古屋圭司】としっかり美子の父の名前が書いてあった。「これ...確かに生前父が使っていた万年筆です」その遺品とは万年筆だった。
事件は先週の水曜日の夜に起きた。被害者は火島達夫さん、世界でも有名なデザイナーで一ヶ月後にはショーも控えていた。火島は独身で一人暮らしをしていたため、目撃者もいなかった。しかし火島の死体の傍に万年筆が落ちていた。かなり古い型だったが綺麗にしまわれていたのか、ホコリひとつなく置かれていた。指紋も古屋圭司のものしかついていなかったそうだ。
「それでね...古屋さん、非常に伝えづらいんだが...古屋さんの両親の遺品が残されていたことから...君が容疑者にあがっているんだ」「ッ!?私が...容疑者に?」どうやら、一課は美子も容疑者の一人に入れて捜査しているようだ。「だからね、その...明日から多分話を聞きに来ると思う」「そう...ですか、分かりました...」美子は駒澤にお辞儀をすると家に帰った。
家路につきながら美子はずっと考えていた。「...私が容疑者...何でお父さんの万年筆が...?」両親が殺されたのはもう十年前のことだ...そんな時の遺品が今になって出てくるのはおかしい。家に帰ってもずっと事件のことが気になっていた。お風呂に入り寝る準備をしていた頃、電話が鳴った。「誰からだろ...水蓮寺さん?」電話に出ると静かな声が聞こえた。《...ベランダ》「え...?」《ベランダ出てみ?》言われた通り携帯を持ったままベランダに出た。すると隣の部屋のベランダに水蓮寺がいた。「水蓮寺さん?」水蓮寺は電話を切るとタバコに火をつけた。「あの...」「駒澤と何話してた?」「え...?」タバコを吸いながら美子の方を見た。「駒澤と...帰りに話してただろ?」「あ、えっと...」美子は少しためらった。なぜなら自分が容疑者になっていることを知られたくなかったからだ...。「こ、これからも水蓮寺さんと頑張ってね...って」バレるかもしれない。そう思いながら水蓮寺を見つめると「...そうか」案外あっさりと納得してくれた。「ま、よろしくな...」そう言うと水蓮寺はタバコの火を消して部屋に戻ってしまった。「何か用だったのかな...」そんなことを考えていると家のチャイムが鳴った。「え、だれ?」こんな夜にと不思議に思いながらも家のドアを開けた。すると水蓮寺が勢いよく入ってきた。「えっ!?す、水蓮寺さん...?」「納得するわけないだろ...なに言われた」家に入るなり壁に押し付けられ問い詰められる。「だ、だから...これからも...ッ」「俺がお前の嘘を見抜けないとでも...?笑わせるな...正直に言え」いつもと違う真剣な目で見つめられ、仕方なく観念した。
―――「容疑者に...?」「はい...」美子は水蓮寺を家に招き入れると仕方なく先程の駒澤との出来事を全て話した。もちろん、預かっていたDNA鑑定の結果の資料も見せて...「なるほどな...で、お前はこの万年筆はここ十年見たのか?」「いえ...両親が亡くなった頃は小さかったので兄が全て...でも、万年筆なんて持っていませんでした...」水蓮寺は立ち上がると「...そろそろ動き出すな...五年前の決着がつく時かもしれない」そう言うと水蓮寺は部屋を出ていった。残された美子も今日は眠ることにした。
朝になり美子は重い足取りで三課に向かった。もちろんその途中、警察署内で色んな人に話を聞かれたり注目を浴びた。「おはようございます...」「美子ちゃん、大丈夫?」最初に声をかけてくれたのは小島だった。「...はい」「古屋が容疑者なんてありえないからな、俺らで解決しようぜ」柚斗はそう言うとパソコンを開いて調べ始めた。「私も何か手がかりを探すために科捜研の知り合いの人に聞いてくる!」小島も立ち上がると三課を出ていった。「じゃあ俺は事件捜査に行った一課に話を聞いてみるか!」崎沼は一課に向かった。そして山口も刑事仲間の人達に話を聞いてくれた。「皆さん...ッ」「古屋さん、大丈夫。三課はみんな味方だから」駒澤はそう言うと優しく笑った。そこへ一課の安井と新堂がやってきた。「すまん美子ちゃん、話はもう聞いてるかもしれんけど...ちょっと取調室まで来てくれへんか?」少し遠慮がちに聞いてきた。「...分かりました。大丈夫です」そして美子は安井たちと取調室へ向かった。―――
「これは確かに美子ちゃんのお父さんの万年筆やねんな?」「...はい」取調室では安井が現場に落ちていたという万年筆を見せた。「ちなみにこの被害者と美子ちゃんは顔見知りか?」「いえ、まったく見たことありません...父の知り合いかどうかは...ちょっと分かりません」全てを正直に話す美子に安井は優しく聞いていた。すると調書を取っていた新堂が立ち上がり取調室から出ていった。「...?あいつどこ行くんや」不思議そうに新堂を見るもまた美子の方に向き直る。「まぁこれは別に話を聞きたかっただけやからそんな問い詰めるなんてせえへんよ。大丈夫」「は、はい...」「戻ってええよ、もう」そう言うと安井は調書を取っていたパソコンを操作すると、パソコンを閉じた。美子は一礼すると取調室を出た。
三課に戻ると水蓮寺の姿がなかった。「あれ...水蓮寺さんは?」「何か調べ物があるとかで出て行ったよ?」駒澤は普段は使わないはずのパソコンを不器用に操作しながら答えた。「そうですか...私も捜査してきますね!」美子は三課をあとにした。
その頃、水蓮寺は何かをしていた新堂を捕まえていた。「お前...どういうつもりだ...」「どういうつもりって...水蓮寺さんならもう分かってるんじゃないですか?」―――
科捜研に殺人事件の調査のことを聞きに来ていた小島は何かの資料を持って出て来ていた。「...そっか、なるほどね...」そう呟きながら歩いていた。そしてパソコンを操作しながら事件のことを調べていた柚斗も何かを掴んだのかUSBデータの保存をしていた。「...やっとか」USBを抜き取るとそう小さく呟いた。一方、崎沼も同じく情報を手に入れたのか携帯を握りしめながら走っていた。「よっしゃ...!」少し嬉しそうだ。「ありがと、いい事聞いた!」山口も刑事仲間と話をしていたが嬉しそうな表情をしたかと思うと歩き出した。「...はぁ、分からない...」三課に戻ってきた美子は机の上に広げられた事件の資料を見ながら悩んでいた。するとそこへ柚斗がやってきた。「大丈夫か?古屋」「あ、柚斗...大丈夫、だと思う」「ところでさ...十年前のこと覚えたりしてないの?事件のこと...」柚斗は美子にコーヒーの入ったカップを渡すと訪ねた。「んー...事件の時、私は家にいなかったし覚えてないよ...だからこそ真相知りたいんだけどね」そう言ってコーヒーを飲んだ。「ふーん...なるほどね...」小さく呟くと柚斗は席に戻った。柚斗の発言に少し疑問を持っていたが、そこへ山口がやってきた。「古屋さん!あの万年筆は本当にご両親のものなのよね?」「え...はい」「でも亡くなった当時はなかったということよね?」「はい...」それだけ言うと他は何も聞かずにまた出ていった。山口とすれ違いでやってきたのは崎沼だ。「古屋、お前の父親は刑事だったらしいな」「あぁ、ほんとに昔ですよ?私が産まれる前だったかな...」「その頃に父親の仲間だった人とか覚えてないか?」そう問い詰められるも何も分からない美子は顔の近い崎沼から逃れるように椅子から立ち上がり「いえ...だから...ほんとに覚えてないですって...」そう言うと三課を出ようとした。しかし小島が出口に立っていた。「あ、アズミン?」「私...美子ちゃんのこと信じるからね?これからも...ずっと...」いつもの小島とは思えないほど少し悲しそうな表情をすると自分の席に座った。
今日は明らかにみんながおかしい...そう思った美子は三課を出ていった。
外に出て宛もなく歩いているととあるビルから水蓮寺が出てくるのが見えた。声をかけようと思ったが何となく水蓮寺が出てきたビルの名前を見てみると【影月組】と書かれていた。影月組は横浜でも有名なヤクザで横浜内のほとんどのクラブやお店は影月組が所有しているほどだ。「え...何で水蓮寺さんが...ここに?」どこかへ歩いていった水蓮寺の背中を見ながらますます疑問が増えるのだった。
水蓮寺の後をつけようと思ったが、何故か怖くなって水蓮寺のあとを追うのをやめた。「はぁ...なんで...今日のみんなおかしすぎる...」駒澤はあまり使わないはずのパソコンを不器用に使っており、柚斗は十年前の事件のことを聞いてきていた。そして山口は万年筆のことをしつこく聞いてきたし、崎沼は父親の昔のことを聞いてきた。そして小島は何だかいつもと違い元気がなかった...そして極めつけは水蓮寺だ。なぜ水蓮寺がヤクザ組の本部のあるビルから出てきたのか...。「も、もしかしたらあのビルの別のところに用事...だったのかも...」なるべくヤクザと水蓮寺が繋がっているかもなんて考えないようにした。
「そうだよね...水蓮寺さんがそんなわけ...」「俺がなに?」美子はあの後家に帰るといつものようにベランダに出て考えていた。「うわぁっ!?」「...俺がなに?」誰もいないと思っていたが...水蓮寺は少し身を乗り出すともう一度聞いてきた。「俺がなんだって?」「...あ、えっと...今日、みんながおかしかったんです!」美子は水蓮寺が今日ヤクザ組の本部のあるビルから出てきたところを見たということ以外を話した。――
「...別に普通なんじゃないか?」「え...」「駒澤も滝野も崎沼も山口も小島も...そりゃ何か考える時だってあるだろ...」くわえていたタバコに火をつけると髪をかきあげた。「...そうなんですかね」「あんまり気にするな...」最近、水蓮寺が何だか美子に優しい気がしていた。「...落ち込んでいるお前は見たくない」「え...」美子は水蓮寺を見た。水蓮寺はタバコを消すと「お前のこと泣かせんのは俺だからな...」そう言いながらニヤリと笑うと部屋に戻っていった。「...な、なんなの...ッ」顔が熱くなってしまった美子は冷ますためにもう少しベランダにいることにした。
しばらく風にあたり、美子も部屋に戻った。ベッドに入ると被害者のこと父親のこと...そして兄が何を調べていて、どこまで調べていたのかを考えていた。「今回の犯人は...もしかしたらお父さんとお母さんを...そしてお兄ちゃんを殺した犯人なのかもしれない...」それが誰なのかまだ分からない...まだ事件が続くかもしれない...しかし美子は必ず犯人を捕まえる。そう決意しながら眠りについた。
『父さんの後輩なんだよ、このおじさん』『先輩、おじさんって酷くないですか?まだ若いですよ』あれ、この人...どこかで...ッ―――
ピピピッ...
目覚まし時計を止めると布団から出る。「...あの夢、何だったんだろ...」覚えていない記憶がどこかにあるのだろうか...そう考えながら美子は準備をするのだった。「...早く犯人を突き止めないと!必ず...そして三課のみんながおかしいのは確かだ...それも必ず!」服を着替え準備を終えると家を出た。すると車に乗ろうとする水蓮寺にばったりと会った。「あ、水蓮寺さん!おはようございます」「古屋、ちょうどいい...今から現場に行くぞ」「え...?」状況が読めないまま美子は水蓮寺の車に乗せられ現場に行くのだった。
先週起きた殺人事件の現場に着くと水蓮寺は家の中に入った。「ちょ、水蓮寺さん?」「お前の無実を証明するんだろ?」「は、はい...」火島は自宅で殺されていた。争った様子はなく家を荒らされた形跡もなかった。「夜に事件は起きたんですよね?」「あぁ...独身でこの高層マンションに住んでたら叫び声とかもなかなか聞こえないだろうな...」水蓮寺はそう言いながら壁を叩いた。「なにしてるんですか?」「...防音になっている」「防音...?つまり大声を出しても聞こえないってことですよね?」美子は壁に近づくと水蓮寺と同じく壁を調べた。「...喘ぎ声も聞こえないわけだ」「なっ...!」慌てて水蓮寺の方を見るとニヤリと笑った。「水蓮寺さんはまた!そんなこと言って!」「無経験女子のわりには...喘ぎ声とかは分かるんだな...むっつりか」いたずらっぽく笑いながら美子をみる水蓮寺。「...そ、そんなことないです!」顔を赤くさせながら水蓮寺に怒鳴ると別の部屋へ移動した。「全く...なんなの...!」殺人現場の隣の部屋はたくさんの衣装があった。「ここ...」「ま、仕事部屋だろうな...」「ッす、水蓮寺さん...!」水蓮寺は美子の怒りを無視し部屋へと入っていく。「もぉ...」「仕事をしていたところに...来客、そして殺されたってところか...」水蓮寺は手袋をはめるとデザインしている途中だったと思われる衣装を触った。「恐らくこの衣装を作っている途中だったのかもな...」「こんな綺麗な衣装を...」「事件現場にも手がかりが無さそうだな...」水蓮寺は頭をかくと立ち上がり部屋を出た。美子もその後に続いて現場を出ていった。
二人はマンションの管理室へ行った。「何度もすみません...監視カメラの映像を見せて貰えますか?」「どうぞ...これです」美子と水蓮寺は事件当時の監視カメラの映像を見た。「ここですね...一課の人たちも言ってたみたいですが犯人らしき姿も映っていなかったみたいです」監視カメラの映像を黙って見ていた水蓮寺が口を開いた。「ここ...巻き戻して」「え...あ、はい」映像を巻き戻すと「...ストップ」とあるところで水蓮寺は映像を止めさせると携帯で撮影した。撮影を終えると管理室から出ていった。「ちょ...水蓮寺さん!?すみません...ありがとうございました!」美子は管理人に一礼すると管理室を出て水蓮寺の後を追いかけた。
「待ってください!水蓮寺さん!」追いつくと水蓮寺は歩くのをやめた。「...お前は先に戻ってろ」「え...」それだけ言うと水蓮寺は車に乗り行ってしまった。「...女の子を置いていきます?普通...」そんなことを言いながらタクシーを拾うと警察署へ向かった。
三課に行くと駒澤しかいなかった。「おはようございます、あれみんなは?」「あぁ古屋さんおはよう。事件捜査に行ったよ」「事件捜査...ですか...」今までは全く事件現場に行きたがらないメンバーが集まっていたのだが、ここ数ヶ月で三課のメンバーは随分と変わったのだ。美子はそんなことを考えながら自分の席に座った。「水蓮寺さんは何かするみたいだから...私はここで資料捜査でもしようかな...」捜査資料を開くと遺体の傍に落ちていた物の写真を見た。「...万年筆だけじゃなくてメモ帳まで...でもこのメモ帳はお父さんのじゃないし...」写真ファイルを捲りながら証拠の品や遺品など色々調べていた。「...まず何でこの人のそばにお父さんの万年筆が...顔見知り...?いや、そんなことないはず...」パソコンと資料ファイルを見比べながら難しい顔をしていると後ろから声をかけられた。「古屋、大丈夫か?」後ろを振り向くとそこには柚斗が立っていた。「あ、おつかれ」「お前ずっとうなされてるみたいにパソコンとファイル見てたぞ...」呆れたようにため息をついた。「あー...早く犯人見つけたいでしょ?私が容疑者になってるんだし...」「まぁ...あんま無理すんなよ?俺らもいるんだし」「うん、ありがと」そう言うと柚斗はパソコンを片付けて三課を出て行った。「古屋さんもそんなにこんつめないようにね?今日はもう帰っていいからね」駒澤は美子が疲れていることを分かってか、そう言ってくれた。「はい...ありがとうございます...もう少ししたら帰ります」「僕は調べることがあるから...先に失礼するよ」「お疲れ様です、ボス」駒澤も帰ると美子は一人でパソコンを見ていた。「何かあるはず...絶対に...」
それから二時間ほど何度もファイルとパソコンを見てもやはり決定的な手がかりは見つからなかった。諦めてパソコンを閉じた。「...今日は帰るか。遅いし...」帰り支度をしていると「今日は一人なんですね」声が聞こえたのでドアの方を見ると新堂が立っていた。「あれ...新堂さんだけですか?」「ん?安井さんもいてほしかったですか?」冗談っぽく言うと美子に近づいてきた。「いや、そういうわけでは...」「他の人はいないんですか?」「皆さん、捜査に出ていってるみたいで...」「ふーん...何か三課も変わりましたね」「そうですね...それは私も思いました」美子は話しながら帰り支度を終えると帰ろうとした。「ねぇ古屋さん、いいこと教えてあげようか...」「え...」新堂の言葉で足を止めた。「水蓮寺さんのことで...俺、知ってることあるんですよね」「水蓮寺さんのこと...ですか?」美子は新堂を見ると新堂は何かを企んでいるような顔をしていた。「影月組に出入りしてるんですよ、水蓮寺さん」「か、影月組...」「目的は知らないけど出入りしてるのは本当ですよ」美子は新堂の言っていることが信用出来なかった...いや、信用したくなかったのかもしれない。「...そうですか、貴重な情報ありがとうございます」そう言い残すと三課を出ていった。「ま、こんな感じかな」美子が出ていったあと新堂は静かに呟いた。
美子は家に帰ると早速ベランダに出た。「...はぁ」「また悩み事か...」「そうなんです...ってうわぁ!?またですか!」隣のベランダには既に水蓮寺がいた。「お前な...俺の家なんだからベランダにもいるだろ...」「そ、そうですけど...」「あんまり悩むなって言ってるだろ...ったく...」そう言うと水蓮寺はベランダの端にやってくると手招きをした。「...ん?」「ちょっと来い」不思議に思いながらも近くへ行くと水蓮寺は美子の頬を両手で包み...軽く触れるくらいのキスをした。「ッ...!?」「これで少しは気持ちが軽くなるだろ...」水蓮寺はまた意地悪な笑みを浮かべると部屋に戻った。「なっ...何するんですか!?」顔を真っ赤にさせながらその場にしゃがみこむと自分の胸が苦しくなっているのに気がつくのだった。
しばらくして落ち着いた美子も部屋に戻ると非通知で電話が来ていた。メッセージが入っていたので聞いてみると...《古屋美子、お前の両親は人殺しだ。その証拠を見せてやる。今夜十時に帝東ビルへ来い...来ないと古屋圭司が残したものを破壊する》メッセージはそこで終わっていた。「...なに、これ...」メッセージの意味も、誰からなのかも機械音で分からなかったが、とりあえず行かなければ両親の無実をはらせないと思い家を飛び出した。
帝東ビルに着くと一部屋だけ明かりがついていた。「...あそこかな」美子は意を決してビルの中に入った。明かりのついていた部屋の前に行くと...「よし、何が来ても大丈夫...」深呼吸をして部屋のドアを開けた。するとそこには...「うそ...ッ」美子の目の前には血だらけの死体があった。「...ッなん...で...ッう...」血や死体が苦手な美子は気分が悪くなり気を失ってしまったのだった。




