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第十話「総理の猫を探せ!三課出動!」

―――三課のみんなはグッタリしていた。「もう無理です!」「見つからないじゃないですか...」三課のみんなはいったい...なにを探しているのだろうか?それは数時間前のこと―――


「猫探しですか?」朝、みんなが出勤したと同時に最近は常連と言ってもいい警視総監が三課にやってきた。三課にしか出来ない大事な依頼があると言われて、何事かと思ったが...猫探しをして欲しいと言われた。「す、すみません警視総監...猫探しというのは...普通探偵とかに頼むものでは...」意を決した駒澤が聞くと警視総監はニッコリとして「猫探しと言ってもただの猫探しではないんですよ...実はね、総理大臣の猫を探して欲しいんです」「「総理大臣!?」」三課は声を揃えて言った。「ね?君たちにしか出来ない大事な依頼でしょ?見つからなかったら...大変なことになるかもしれないからね」ニコニコしながらそれを伝えると一言だけよろしくと呟くと三課を出ていった。残された三課のメンバーは一瞬静まり返っていたが...崎沼が最初に口を開いた。「よし!行きましょうか!」そういうと山口、小島、柚斗も立ち上がったのだが...奥のソファで寝ていた水蓮寺はいつもと違い乗り気ではなかった。「水蓮寺さん...行かないんですか?」「...総理大臣の猫なんて興味無い」いかにも水蓮寺が言いそうな言葉だった。「まぁまぁ水蓮寺さん...行きましょうよ」美子は水蓮寺を引っ張ると無理やり現場に連れていった。


総理大臣の家に行くと日本で一番と言っても過言ではないほど豪邸だった。「それで...いなくなった猫ちゃんは...」崎沼が代表して聞いてくれていた。その頃水蓮寺はというと...豪邸の中を歩き回っていた。「ちょ...水蓮寺さん!何してるんですか!」美子は水蓮寺とペアを組んだことにより、また水蓮寺に振り回されるのだった。「なにって...猫探しだろ?しかし...広すぎるな、ここは」水蓮寺はぶつぶつと言いながら鍵の開いている部屋を片っ端から開けて入っていく。「水蓮寺さん...ッ勝手に!」あとに続いて入っていくとそこは書斎だろうか、本が沢山あった。いや、沢山なんてものじゃない...本棚が沢山あり警察署の資料保管室のようだった。「凄いですね...この本の数...ッわ」感心しながら歩いていると突然止まった水蓮寺の背中にぶつかった。「どうしたんですか?」「...この本」水蓮寺が本棚の上の方に手を伸ばした...その時、「...ッくしゅん!」美子はくしゃみをしたと同時に水蓮寺を押してしまった。「おわっ...!」「きゃっ...!」すると手を伸ばしていた本棚にぶつかり本が落ちて二人はバランスを崩し倒れた。「...ッいたた...ッ!」目を開けると目の前に水蓮寺の顔があった。バランスを崩した二人は一緒に倒してしまったのだが...なんと水蓮寺が美子を押し倒しているような状態になっていたのだ。「す、水蓮寺...さん」「...ったく...ッ!」水蓮寺も目を開けると二人は至近距離で目が合った。美子はまた『無経験女子め...』なんて言われてからかわれるのだろうと構えていた...しかし「...気をつけろ」そう一言だけ言うと立ち上がり美子の手を引いて立ち上がらせた。書斎は暗かったため表情は全く見えなかったが怒っている感じはしなかった。


二人は書斎を片付けるとロビーに戻った。「あ!水蓮寺さんに美子ちゃん!何してたの?」「すみません!」「猫探し...あっちにはいなかったぞ」水蓮寺はぶっきらぼうに言うと歩き出した。「あ、猫の写真はメールで送っておいたからそれ見て探してね!」「あ、はい!」そして三課のみんなは美子と水蓮寺、山口と崎沼、柚斗と小島の三手に分かれて猫探しを始めたのだった。

そして美子と水蓮寺は豪邸の庭を探し始めた。「庭とかだといそうですけどね...んー...って水蓮寺さん全然探してないじゃないですか!」庭で猫探しをしつつ水蓮寺の方を見ると優雅に椅子に座って先程書斎にあった本を読んでいた。「水蓮寺さん!自分だけ休んでるなんてズルいですよ!」水蓮寺の前に立つと本を取り上げようとした。しかし器用に交わされ逆に顔を近づけられると「お前、何イライラしてるんだ?」「別にイライラなんて...」「あれか、生理か?」ニヤリと笑われると美子は真っ赤になり「...ッ!?そ、そんなことないですし、もしそうだとしても関係ありませんから!」そう怒鳴ると猫探しに戻った。「もう...さっきの態度は気のせいだったみたいね...!」書斎での出来事は勘違いだと思うことにした。


その頃、山口と崎沼は豪邸の中を捜索していた。「いないですね...猫ちゃん」「ホントにこの家の中にいるのかぁ?もう外に行ってるんじゃないのか?」崎沼は何故かスクワットや腕立て伏せを加えながら探していた。「...崎沼さん、それ何してるんですか?」「ん?いや...いつどんな時でも鍛えられるなら鍛えた方がいいと思いまして!」ニコニコしながら答える崎沼に苦笑いをすることしか出来ない山口だった。

小島、柚斗ペアはというと...小島の作った探索機器で家の周りを探していた。「反応しないなぁ...この辺にはいないのかな?」「それ、ホントにちゃんとしたやつか?」「なっ...どういう意味?」「いや、役に立たない器具だったりしてって思っただけ...」最後まで言う前に小島は柚斗に詰め寄ると小さな機械を見せた。「...な、なんだよ...それ」「これね、小さいけど記憶がすこーしだけ消せるのよ?消してあげようか?滝野くんの記憶も!」完全に小島を怒らせてしまった柚斗は青ざめた。「わ、悪かったって!は、早く見つけちまおう!」逃げるように小島から離れると草むらをかき分けて猫を探した。「ところで...滝野くんって美子ちゃんのこと好きでしょ?」ガサッと大きな音を立てたと思ったら柚斗が草むらに顔を突っ込んでいた。「な、何してんの!?」小島は柚斗に近寄り腕を引っ張ると草むらから顔を出した柚斗が髪についた葉っぱを取りながら言った。「そ、そんなわけないだろ!あいつは同期で...まぁちょっと仲がいいってだけだよ...!」明らか顔が赤くなっているのを見て小島は面白いものを見るかのような顔になっていた。「ふーん...ま、今はいっか!」スキップをしながら戻るとまた猫の捜索を始めたのだった。「...ったく、あぶねーやつ」赤らめた頬をかくと柚斗もまた捜索に戻るのだった。


そして...冒頭に戻るのだ。「もう無理です!」先に声を上げたのは山口だった。「全く見つからないじゃないですか...」各々のペアが最初にいた豪邸のロビーに戻ってきた。「いったいどこにいるんですか...」「もう近くにはいないんじゃ...」疲れのせいか弱音を吐くメンバーたち。しかし以外にも崎沼だけはずっと探し続けていた。「崎沼さん...頑張ってますね...」他人事のように崎沼を見る美子に対して柚斗は「馬鹿か...お前も早く探すんだよ」そう言って肩を軽く叩かれた。「分かってるけどさ...ホントに見つかるのかな...」「崎沼は猫を飼っているからな...それでいつもより必死なんだろ...」後ろからきた水蓮寺は崎沼の方を見ながら説明した。「そうなんですか...それで...」崎沼を見ると何故か自分も休んでいてはいけないと思った美子だった。「私、あっちの方探してきますね!」ロビーを飛び出し豪邸から離れた。



大臣の豪邸から少し離れた交差点に行くと交差点の近くに古く小さな喫茶店があった。「ここで聞き込みすれば...何か分かるかな?」美子は喫茶店へ入った。カランカランと扉を開けるとカウンター席が五つあり、奥にテーブル席が二つとこじんまりとした喫茶店だった。カウンターにいたマスターらしい人は三課のボスの駒澤と同じく白髪が良く似合う五十代くらいの男性だった。「いらっしゃいませ」美子は軽く会釈をすると「すみません...あの、警察なんですが...」そう言いながら警察手帳を見せるとマスターはじっと警察手帳を眺めた。何か不審なところが?と思い警察手帳を見ると「あ!また反対に...すみません...こっちです!」警察手帳をひっくり返すとマスターは納得したような顔をした。「猫探しをしているんですが...このような猫を見かけませんでしたか?」そう言って大臣の猫の写真を見せた。するとその写真を見るとマスターはすぐに「あぁ、この猫なら昨日だったかな?うちのすぐそばに来たから餌をあげたよ」「そ、その後...どこにいったか知りませんか?」美子はカウンターに身を乗り出すかのようにマスターに訪ねた。「んー...知らないね。また来るかと思ったが今日は来てないみたいだからね」「そうですか...」美子はしょんぼりしながら店をあとにしようとした...すると「あ!この猫ちゃん...ッ」美子とマスターの話を聞いていたのかカウンターの端に座っていた女の人が声をかけてきた。「し、知ってるんですか?」「今日の朝...事故にあって死んでいるのを見かけたわ...」「え...?」女の人は気の毒そうに話した。「朝、そこの公園を通った時にね...」―――

喫茶店の近くの公園を通った時に子供たちが何やら話をしているのを目撃した。『ちょっと?学校遅れるんじゃない?何してるの?』声をかけながら近寄ると、子供たちが囲んでいたのは一匹の猫だった。『事故にあったみたいで死んじゃったんだ...』『僕達で可愛がってたのに...』子供たちは悲しんでいた。『そっか...お姉さんがお墓作っておいてあげるから、みんなは学校行きなさい?大丈夫だから』『うん』そう言うと子供たちは学校へと向かった。残された彼女は約束通りに公園の隅にお墓を作り、猫を埋めるのはいけないと思い一応動物病院に電話をして引き取りに来てもらったそうだ。―――


「まさか...探していた猫だったなんて...」「刑事さん、大丈夫かい?」女の人もマスターも心配してくれた。「だ、大丈夫です!ご協力...ありがとうございます...」お辞儀をすると店を出た。交差点を渡ると水蓮寺がいた。きっと美子の後を追いかけたのだろう。「水蓮寺さん...」「...どうした?古屋」「猫が...猫が...」水蓮寺の顔を見た瞬間、緊張が解けたのか涙が出てきた。「ッ!?なにがあったんだ!」水蓮寺は慌てて美子の元へ駆け寄ると事情を聞いた。


―――「そうか...」水蓮寺と美子は場所を公園のベンチに移動し、泣き止んだ美子は事情を説明した。「どうしましょう...水蓮寺さん...」「俺たちがどうこうできる話ではないが...正直に話して墓まで案内するしかないな...」水蓮寺は前を向いたままそう話した。美子は涙を拭きながら水蓮寺を見ると何故だか兄のことを思い出したのだった。「あ...」「ん、どうした」「小さい頃にも...こんなことありました...飼っていたハムスターが私のせいで死んでしまって...」―――『ッぐす...チュウタが...ッ私のせいで...』『美子、美子のせいでチュウタは死んだんじゃないよ?チュウタは自分で出て行ってしまって事故にあっちゃったんだ』優しく頭を撫でながら丁寧に説明してくれる兄の涼。『でも...私がちゃんと見てなかったから...ぐすッ』『俺もいたのに見てなかった...それなら俺のせいでもある』『...お兄ちゃんッ』『生き物はいずれ死んでしまうんだ。俺だって美子だってそう...父さんや母さんもいずれは死んでしまう。』そこまで言うと兄は私を抱きしめながら『でもね、必ず生まれ変わってやってくる。チュウタも必ずまた美子の元へ帰ってきてくれる。その時は...もう見離さないようにしてあげようね』体を離すと兄は私の顔を覗き込んだ。『美子、わかった?』『...うん』『よし、いいこだね』そう言うともう一度、頭を優しく撫でた。―――「好きだったんですよ...小さい頃も、大きくなってからも...優しく撫でる兄の手が...」美子は懐かしそうにそんな話をしていると不意に頭を撫でられた。「え...」「涼の代わりは出来ないが...これくらいならしてやる...」気づけば水蓮寺は優しく美子の頭を撫でていた。「水蓮寺さん...」撫でるのをやめて頭から手を離すと水蓮寺は静かに呟いた。「もう少し...俺を頼れ」「え...?」「...一応、相棒なんだからな...」美子は水蓮寺を見ると水蓮寺は上を向いて顔を隠していた。ちゃんとは見えなかったが夕日のせいか、少しだけ...水蓮寺の顔が赤くなっているように見えた。


涙もすっかり止まった美子は水蓮寺と遅くなりながらも大臣の豪邸へ戻った。「遅くなってすみません...あの...」美子はどうやってみんなに猫の件を伝えようかと迷っていた。すると...ロビーの奥からニャーという猫の鳴き声が聞こえてきた。「へっ...」「美子ちゃん、猫見つかったよ!」「えっ...で、でも」戸惑いの隠せない美子はキョロキョロとしていた。もちろん、ロビーの奥から出てきた大臣が大事そうに抱っこしていたのは、あの写真と同じ猫だった。「皆さん、ホントにありがとうございます。」「え...見つかった...?」「あれ?水蓮寺さんが言いに行ってくれたはずだけど...?」小島がそう言うと美子は全てが分かったようで、水蓮寺を見た。すると水蓮寺はニヤリと嫌な笑みを美子に向けた。「もぉー!!水蓮寺さん!!私を騙しましたね!」「騙される方が悪いんだろ...ばーか」そう言うと水蓮寺は豪邸をあとにし、さっさと歩いていく。「ッ!?水蓮寺さんなんて...水蓮寺さんなんて...ッ」最後まで言わずに水蓮寺の後を追いかけた。

「ほんと、仲良いですよね」「いやー相棒っていいものですね!」なんて言いながら崎沼と山口も後を追って歩く。「いいのー?取られちゃうよ?あれ...」小島が柚斗に小声で言うと「ッ!?だからいいってば!というか...あっちの方がお似合いでしょ...」そういうと優しく笑い二人の後を追う柚斗。「まぁ、何だかんだで上手くいってるみたいね...疲れたー...」伸びをすると小島もみんなの後を追った。


三課に戻るともう暗くなっていた。「おかえり、みんな」駒澤は笑顔で迎えてくれた。「ほんともう疲れましたよー」「みんな今日はすぐに帰っていいからね」駒澤がそう言うと崎沼は真っ先に帰った。なんでも家の猫が恋しくなったみたい。「あ、私も今日は久しぶりにネイルしに行こーっと小島さんも行きます?」「え、ほんと?じゃあ行ってみようかなー?」山口と小島は帰る準備をする。「美子ちゃんも行く?」「え...あぁ、私はいいです。やることがあるので...」「わかった、じゃあまた明日ね!」そう言うと山口と小島は帰った。「んじゃま、俺もそろそろ帰るか...チビたち待ってるしな...」パソコンを閉じると鞄を持ち柚斗も帰った。「では、私もやることがあるのでそろそろ...」美子はそう言って鞄を持った。すると「古屋さん」「はい...ボスなんですか?」駒澤が呼び止めた。「...少しだけ大事な話があるんだ」「大事な話...わかりました」その様子を横目で見ながら水蓮寺は帰っていった。


「君の両親のことでね...」「父と母ですか?」「先週起きた殺人事件の被害者宅から...古屋さんの両親の遺品らしきものが見つかったらしいんだ」「え...?」静まり返る三課。さっきまで何気ない話で盛り上がっていた三課。美子に最大の危機が訪れようとしていたのだった。

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