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更紗の脈理  作者: VIKASH


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9

 



 飛行のさなか、私は北の指導者に訊ねた。

「星の民とはなんだ? 彼らは生き物か? それとも化け物か?」


 北の指導者は答える。

「生き物と言いたいところだが……化け物に近いな。腕がいくつも生えているもの、頭が三つあるもの。摩天楼のように巨大な者もいれば、口の中にすっぽり収まるほど小さな者もいる」


「星の民というからには、星から来たのだろう」

 私が続けると、彼は首を振った。


「違う。星からここへ来るには、時間がかかりすぎる。私たちが見ている星は、常に過去だ。星の民からすれば、我々は過去。逆に我々からすれば、星の民もまた過去なのだ」


 理解はできなかった。

「では、臍を噛むような思いはないのか?」と問うと、北の指導者は答えた。


「星の民は、過去・現在・未来をすべて見通している」


 信じがたい話だった。だが、真実というものは、いつだって受け入れ難いものだ。


「着陸する」

「わかった」


 北にもソサエティが存在した。

 しかし様子がおかしい。

 彼らの姿――翼が生えていたのだ。


 その翼は、鳥類の遺伝子を取り込んで生えたものらしい。だが人間の体重では飛べるはずもなく、皆がそれを「偽りの翼」と呼んでいた。


 偽りか……。

 私もまた偽りの存在だ。


 北の指導者に導かれ、ラボを訪れた。ここでは遺伝子組み換えの実験が行われているという。


「どんな実験だ?」と訊ねると、彼は答えた。

「植物と人間の遺伝子を組み合わせている」


「そんなことが可能なのか」

 私は驚き、フラスコを手に取り、その液体を一気に飲み干した。


 異変も異常も感じられなかった。

 植物とは、育つのに時間がかかるものなのだ。


 私は北のソサエティで南のことを語り、姉を探していると告げた。

 だが「知らない」と返されるばかりだった。


 私は怒りに駆られ、「姉は生きているのだ、嘘をつくな」と言ってしまった。

 やがて後悔した。


 ――これは恐喝ではないか。

 牢に放り込まれるのではないか。

 そんな疑念ばかりが頭を過ぎる。


 天の民よ、聞こえるか。


「聞いている」


 ――これは恐れ入った。

 正気の沙汰ではない。


 私に何ができる。


「私は言ったはずだ。戻れ、と。影に忘却されたいか」


 やめてくれ。


「ならば、反対の行動をとれ」


 反対の行動? どういう意味だ。

 何に対しての反対なのだ。


 すると北の指導者が言った。

「ここで待っていてくれ。すぐ戻る」


 私は思案を巡らせることもなく、行動に移した。

 ――やってやろうではないか。


「玉」と念じ、「飛車」の真似をした。


 月光に照らされながら、摩天楼を上から見下ろしていた。






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