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更紗の脈理  作者: VIKASH


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8/60

8

 


 その男は自らを「指導者」と名乗ったが、どこの地域の指導者であるかは明かさなかった。

 私が南の者である以上、少なくとも南でないことは確かだ。

 おそらく東か西だろう──そう考えながら、ひとり思索に耽る。


 考えるという行為は、疲れるものだ。

 ただ男がそこに立っているだけで、「敵か味方か」と判断を迫られる。


 男は言った。「助けに来た」と。

 そして私にこう尋ねてきた。


「指導者はどうした?」


 だが、私が指導者であることに変わりはない。

 その旨を伝えると、彼は目を見開いた。


「五年前は、女だったが……男になったのか?」


 と妄言を吐くので、「違う、それは姉だ。私はその弟だ」と答えてやった。

 彼は何度か頷き、ようやく納得したようだった。


 私は、星の民と会話できることは伏せておき、代わりに自分の特異能力である「玉」について話した。


 すると彼もまた、特異能力を持っているという。

 名を「飛車」と言った。


 彼の力を一言で表すなら、「弾丸」だろう。

 ただ念じるだけで、あるいは口に出して唱えるだけで、一直線に突き進む。


 猪突猛進。

 縦、横、そして上下――三方向に自在に移動できる能力だった。


「他にも能力者はいるのか?」と尋ねると、彼は「桂馬」を見たことがある、と答えた。


 その力の詳細までは知らぬようだったが、「玉には及ばぬだろう」と高を括っていた。


 実際、「玉」にはできることが多い。

 攻撃の一手にもなり、防御の一手にもなる。

 それこそが、最大の強みだ。


 この歓楽街は、どうやら場所が悪いらしく、男は移動を望んでいた。


 そして彼――北の指導者は、私の手を取り、高く舞い上がった。


 空を、飛んでいた。


 遥か眼下に、歓楽街が広がる。人々はまるで豆粒のようだった。

 私たちは、白い摩天楼よりも高く飛んでいた。


「これより北へ向かう。心せよ」

「……わかった」


 私は信じていた。姉は、北にいると。

 姉は必ず、北にいる。


 北の指導者に掴まりながら、私は空を、縦横無尽に駆け巡った。






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