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スペルトは三年前の仕事仲間だ。
ブラックリストから犯罪者を見つけ出し、姉に差し出していた。あのとき、一人で犯罪者を捕まえるのは無理があった。
そこで私は着実に金を貯め、何人かで山分けするという条件でチームを組んだ。いわゆるソサエティより小規模な、弱小の集まりだ。スペルトもその一員だった。独学で医学を学び、この州で医者をやっているらしい。
だがスペルトには、事前にある説明をしておいた。私がサラサの弟であることを知るのは、彼くらいのものだろう。
私たちはノイズを流し、雑音を外部に混ぜて通信を聞き取りにくくする手段を取っていた。もちろんスペルトはそのことを知らない。知っていたら私と通話などしないはずだ。
私はフロントパネルにゆっくりと微笑みかけ、「よくできてるだろう」と自慢げに言ってみせた。
スペルトは賢い男だった。南のソサエティに属していた時期もあり、犯罪者を高値で売る術を心得ていた。犯罪者をどう捕まえるか、犯罪者をどう騙すか——彼の考えはいつも筋が通っていて、正しく、優れていた。
私は彼の前でぐうの音も出なかった。悔しさというより感嘆が居座り、自分が愚か者なのではないかと何度か考えたが、そんなことを考える必要はないと痛感した。
スペルトは言った。「自分を卑下する必要はない」と。
彼の言葉は続いた。「頭の良い人がいると、自分が愚かに見えると相談されたことがある。だが、なぜ同じ尺度で相手と自分の間に距離を作るんだ? 君はその人ではない。たとえ生まれつきの頭の良さがあったとしても、環境や経験といった遺伝子以外の要素が大いに関係する。自分を愚かだと言うのはやめたほうがいい。そう言えば、聞いた人間は君を見下すだろう」
それは私自身の意見でもあり、だがそれは秘密だ。
「えっと、サラサくん、俺は何を手伝えばいい?」
「医療技術で俺を有機体にできるか?」
「可能だ。ただし痛みや副作用、弊害を伴う。金は取らない。なぜかって? まあ、昔の恩義だ。ところで、これはどういうことだ?」
フロントパネルに突きつけられていたのは、私がロードエジソンの邸宅を吹き飛ばす姿を撮った映像だった。




