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更紗の脈理  作者: VIKASH


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53/58

53




――なあ、殺戮者。どういうことだ?


 ……聞かれていた。

 すべて聞かれていたに違いない。


 あの男、我々の会話まで――盗聴していたのか。


――ベンゼル、その前に……アストロを助けてやらなければ。


 そう言う間もなく、ベンゼルはアストロの肩を掴み、私から引き剝がした。

 次の瞬間、容赦ない蹴りが腹を撃ち抜く。


 痛みはあった。だが――貴様の抱える悔しさに比べれば、微塵も痛くない。

 そうだろう、ベンゼル。


 二人はまだ来ない。

 ならば、今言うべきか。


 私が姉の弟であること。

 殺戮者の弟であることを。


 今が、その時なのか。

 誰か、教えてくれ。


 ……いや、誰も教えてはくれない。

 そうか。

 なら、やるしかないようだな。


 ふと思い出す。

 ベンゼルはこれまで、何度も私を助けてくれた。

 牢獄に囚われたときも、脱出できたのは彼のおかげだった。


 ベンゼル――感謝している。

 その気持ちは本物だ。


――私が、私こそが。


































――ちょっと待って。ルドルフ、知らない?



 ルドルフだと? 一緒に行動していなかったはずだ。

 まさか……攻撃を受けているのか?



――ルドルフ、どこにいる?



 応答がない。

 どういうことだ。

 返事をしてくれ。


 なぜ、応答がない?

 返せない理由があるのか?

 ……まさか、口を塞がれている?


 いや、ルドルフがそんな状況になるとは思えない。


 ベンゼルがゆっくりと近づいてくる。

 重たい足取りで、一歩、また一歩と。


 怒っているのは分かる。

 当然だ。私は、彼を欺いていた。

 それは事実だ。


 だが、裏切りではない。

 姉を救うため――それしか方法がなかったのだ。

 わかってくれ、ベンゼル


――すまなかった。


 ベンゼルは泣きながら、私に拳を叩き込んだ。

「嘘だと言ってくれ」――その叫びが、神経伝達を通して痛いほど伝わる。


 彼もまた、苦しいのだ。

 本当に、すまなかった。


 ベンゼルよ。

 お前を“忘却対象”にしたこと――許されることではない。

 もし立場が逆なら、私も許せはしないだろう。


――この男は、俺が預かる。お前はルドルフを助けろ。


 攻撃の手が止まった。

 なぜだ? 憎くないのか。


 ――なぜ殺さなかった?


 ――一度助けてもらった。貴様に真価を見いだした。ただ、それだけのことだ。


 ……助かった。

 待っていろ、ルドルフ。今、行く。


「飛車・零式」――起動。

 鳥瞰するように、邸宅全体を見下ろす。


 ――ルドルフ、どこだ?


 いくつもの穴が空いている。

 奴の仕業に違いない。


 何者だ。

 我々の裏をかき、サラサを知っている。

 奴の攻撃か。

 ……おそらく、そうに違いない。



 ――さあ、姿を見せろ。


 その瞬間だった。


 目の前に、牙が現れた。




 


 現れたのは、人狼に変貌したルドルフ・ヴァレンシュタインだった。






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