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更紗の脈理  作者: VIKASH


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52

 



 鋼鉄製のマカダミア弾が、布を切り裂いた。


――何が狙いだ。何が目的だ。


 私に、何を求めている?


 男の動きを注視していた。

 どう出るつもりなのか。

 何か秘策でもあるのか。

 いくつもの可能性が脳裏をよぎったが、通話制限のせいで何もできずにいた。


 私はアストロを抱えたまま、落ちていく。

 その瞬間、男と空中ですれ違った。

 何かを言っていた。

 興味深いことを――言っていたに違いない。


――サラサではないな? 誰だ?


 嘘だろ。姉を知っている?

 いったい何者なんだ。


 ここ三年で、私たちの属していた南のソサエティは壊滅した。

 リーダーである私も、サブリーダーも、幹部たちも――全員辞職を余儀なくされた。

 なのに、なぜ姉のことを知っている?


 もしや、五年前。

 姉と共に戦っていた組員なのか?


 訊きたいことはいくらでもあった。

 だが、この状況ではどうしようもない。

 私は、落下しながら男を見つめ続けた。


「鷹飛車」から「飛車」へ切り替える。

 いっそ「飛車・零式」でもよかった。

 だが――なぜ見た目が姉そっくりな私を見て、

「サラサではない」と断言できたのか。

 それをどうしても確かめたかった。


 だが今は、アストロを助けねばならない。

 男は何らかの能力で宙に浮いている。

 そのまま去ってもおかしくはない。

 だとしても、なぜここに現れた?


 ……情報が漏れているのか?

 そんなはずはない。

 我々の電脳世界には、何重もの層で構成された「ウォール」がある。

 中枢部、そして核を守るための強固な防壁だ。


 あの男――まさか破ったのか?

 一年かけて五十人がかりで設計した、あの「ホワイトウォール」を。


 ありえない。そんなことが、あってたまるものか。

 私がサラサのフリをしていることを知るのは、私だけのはずだ。


 それなのに、なぜ彼は「サラサではない」と見抜いた?

 私は一つの確信を得た。


――あの男は、サラサの情報を握っている。


 いいだろう。どちらかではなく、両方だ。

 アストロを助け、そして――サラサの真実を掴む。


……アストロ。もう少し耐えてくれ。


 私は静かに息を整え、呟いた。


――「飛脚」


 必ず追いついてやる。

 そして、姉について聞き出す。

 逃げるな。私はここにいる。


 男は、空間に穴を開けた。

 宙が裂け、そこに吸い込まれるように姿を消す。

 まるで神隠しだ。予想外だった。


 どこの國の者なのか?

 姉は、あの組織と関係していたのか?

 理由は分からない。

 ただ、姉の強さが常軌を逸していたのは確かだ。

 だが今にして思えば――それは、彼女自身の力ではなかったのかもしれない。


 そういうことなのだな。


 私はアストロを抱え、地に舞い降りた。

 そこには、腕を組んだベンゼルが待ち構えていた。






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