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なんだ、この化け物は……。
私の目の前に、赤き装甲をまとった機械が立ちはだかっている。
まるで戦車を背負っているかのような姿だ。
肩から突き出た砲塔が、ひときわ印象的だった。
どこから現れた――?
その疑問が頭をよぎる間もなく、横からクナイが飛んできた。
赤い戦車ロボットに白い忍者。
なんとも、縁起が良い組み合わせじゃないか。
赤い戦車ロボットのハッチが開く。
現れたのは――ペティ。
いや、エリザヴェッタ・ペトロヴァだった。
……何をしている?
彼女は敵の兵ではないのか?
私は、ここにきて強い疑念に駆られる。
もしや――偽物なのではないか?
マカダミア弾が手元にある。
だが、撃つにはあまりに隙だらけだった。
撃てるはずがない。
撃つわけには――いかなかった。
――援護を頼む。
――わかったわ。
短い通信を交わす。
私たちはこの場所を危険区域と判断した。
この邸宅には、何者かの組織が深く関わっている。
鎖のように強固な結束が見て取れた。
ロストテクノロジーはすでに奪取した。
あとは――帰還するだけ。
少なくとも、その時の私はそう思っていた。
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三日後。
再び、あの邸宅を訪れる。
「ロスト・シヴィライゼーション」――失われた文明の跡地。
LEと刻まれた機械を再稼働させる必要があった。
でなければ、このテクノロジーは未完成のままだ。
問題は――どうやって動かすか、だ。
古代文字を読めるのは私だけ。
しかも、四人とも旧式の機械には不慣れだ。
とはいえ、ニューロウェア・インターフェースの接続に問題はない。
ただ、古い機構に触れる経験が不足しているだけだ。
どうしたものか、と考えあぐねていたその時――
白い忍者の一人、アストロが機械の前で横たわっているのを見つけた。
テレパス法はまだ施行中。
彼には言葉を送れないが、念じることはできる。
我々は、必ずややり遂げてみせる。
USZとして、一つの機関として、
ここで「そうですか」と諦めるわけにはいかない。
易々と立ち下がるわけには、決していかないのだ。
黒い男――。
おそらく、白百合白虎隊とは別勢力。
虎の印が見当たらない。
――アストロ、下を向くな。
私はアストロを抱え、空へと飛翔する。
鷹飛車の能力だ。
これさえあれば、空も陸も支配したも同然。
――人工翼、展開。
フリードリヒへ通知が送られる。
これを待っていた。
ミサイルで吹き飛ばすか?
いや、ここは貴重な遺産だ。
奴が現れるまでは手を出せない。
――アストロはこちらで預かった。
拡声通信で呼びかける。
しかし、反応はない。
コーヒー一杯の値段を気にしている場合ではない。
落ち着け。
浮遊を維持しろ。
奴は――必ず現れる。
彼らも、そのことを知っているはずだ。
その瞬間、人工翼が切り裂かれた。
身体が、真っ逆さまに地へと落ちていく。
気分はまるで堕天だ。
だが、まだ落ちぶれちゃいない。
そこだな――マカダミアをくらえ。
――発射。




