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『
この製品には、いくつかの副作用が確認されています。
あらかじめご了承ください。
体の痺れは、効果終了の合図です。
※以下の注意事項を必ずお読みください。
このサンプルは試験的な製品であり、口に含む際は十分に注意すること。
製品版では「暗視効果」のみが発現しますが、
この試験版では「透明化効果」が一時的に適用されます。
効果時間はおよそ五分間。
光の屈折を利用し、身体を透過させます。
ただし、光のない場所では効果は発現しません。
なお、物理的作用や反動については例外とし、
透過の対象外といたします。
今後も研究を継続してまいります。
このサンプルを偶然手にした幸運なあなたへ。
決して、悪事に利用しないように。
――OX社
』
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なんだと……。
まさか、抹茶で“見えなくなる”とは――。
してやられたとは、このことか。
念のため、ベンゼルへ神経伝達経路を通じて位置情報を送ろうとしたが、
フリードリヒがやたら騒いでいる。
「旦那さま、旦那さま」と連呼しているな。
……人工知能なのだから、居場所くらいは把握しているだろうに。
まあいい。
先ほどの白い忍者を追うとしよう。
しかし、困ったな。
この状態では、私の特異能力が使えないのではないか?
いや、使えてくれ。頼む。
――おや? また妙なことが起きたな。
どうやら、無意識のうちに“玉”を放っていたらしい。
影に反応したのだ。
しかも、その玉は“見えない”――。
抹茶フレイバー、意外と使えるかもしれない。
ここは、しっかり味わわせてもらおう。
いや、使い尽くしてやる。
効果は五分。
残り四分弱、といったところか。
……鷹飛車。
私は上昇し、俯瞰的にドーム――ロード・エジソンの邸宅を見下ろす。
特に異常は見られない。
どこだ?
どこにいる?
効果が切れる前に見つけ出さねばならない。
訊きたいことがあるのだ。
――あの、“ロストテクノロジー”について。
鷹飛車で、蜻蛉のような軌道は可能か?
試してみる価値はある。
急降下、急停止。
足から推進力を得て、人工翼を展開。
機人のように舞うこの感覚――たまらなく愛おしい。
爽快だ。
風を感じる。
風圧が皮膚を打つ。
景色が流れていく。
私は、鳥になった気分だった。
青空を切り裂くように視界へ飛び込んできたのは、
ルドルフと白い忍者。
二人は互いに相対していた。
……すまないな、ルドルフ。
ロストテクノロジーは、私が頂く。
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忍者の手拭いを掻っ攫った。
何が起きたのか理解していないようだ。
私は、そのままペティ――
エリザヴェッタ・ペトロヴァのもとへ向かう。




