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更紗の脈理  作者: VIKASH


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 腰に携えた帝刀を抜刀する。その勢いで、私の黒髪が揺れた。髪が乱れた瞬間、顔の横を何かが掠める。

 だが、何も見えない。——何事だ?


 ベンゼルは肉弾戦を得意とする。後方から、彼が拳銃を発砲している音が伝わってきた。


 その時だった。私の体に、何か大きなものがぶつかった。

 ……これはなんだ? 大きいといっても人間ほどの大きさだ。だが、なぜ見えない?


 もしバグやチート行為なら、すぐに違反として対処されるはずだ。だが、どうやらそうではないらしい。


 連携して攻撃パターンを読むか……

 突進、そして降り注ぐような連撃。

 なるほど。

 相手は速さに自信があるようだ。

 ならば——こちらも試してみるか。


 私は心の中で「飛車」と念じた。


 その瞬間、相手が光学迷彩を解除したかのように見えた。だが実際は、高速で映したり消したりしているだけだとわかる。


 三年前と比べて、「飛車」の能力は格段に向上している。

 速度が上がるだけでなく、それに対応するために動体視力や運動器官も強化され、身体全体が動的に反応できるようになっている。


 これは私が電脳化して以来、変わらぬ進化の過程だ。

 そもそも電脳化していなければ、この能力はあり得なかった。

 この技術は旧彗國と旧日本帝國の技術を融合させたもので、「零式」と呼ばれている。


 私はその「飛車・零式」をさらに発展させ、現在の形へと昇華させることに成功した。

 とはいえ、まだ完全に慣れたとは言いがたい。


 修業期間は三年。

 だが、「飛車」を昇華させるまでに要した歳月は二年。

 その後も使いこなすには、一筋縄ではいかなかった。


 たとえば、打撃を放っても狙いを正確に捉えられず、タイミングがずれてしまう。

 そんな問題が続いたが、私は諦めなかった。

 殺戮者としての真髄を忘れたことはない。


 出力や動作を何度も確認し、レコーダーに記録して分析を続けた。

 その結果、少しずつコツを掴み始める。


 一ヶ月前、一秒間に三発の打撃を打ち込むことに成功した。

 そして現在では——六発。

 その拳を、目の前の相手に叩き込んだ。


 相手が怯んだのが見えた。姿が消えたり映ったりしているせいだ。

 ……こんなことなら、最初から使っておくべきだったな。


 まさか、我が国の人間だったとは——。

 これより、神経伝達を開始する。


 どうやら出身は、バッハ州ハーモニアらしい。

 私も行ったことのない場所だ。


 なぜそこから来たのか、と問う。

 すると彼は、「アリストテレス州へ向かっている」と答えた。


 ——何かあるのか?


 神経伝達通話は強制的に遮断され、奴は姿を消した。


 私はベンゼルの肩に触れ、すべてを伝えた。






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