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更紗の脈理  作者: VIKASH


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35

 



 ここはエジソン州の州都、ニューライト。

 街中が電気の光で溢れている。


「エジソン」と呼ばれた彼は、電気工学に精通した人物だ。

 だが、勘違いしてはいけない。トーマス・エジソンではない。――ロード・エジソンだ。


 さて、今日は十月二十三日。

 テレパス法の施行日である。

 つまり、テレパシーが全面的に禁止される日だ。


 電脳世界での会話は禁止とされた。

 なぜなら、電脳同士の通信はニューロネットワークを介しており、それも「テレパシー」とみなされるからだ。


 仕方がない。

 死人に口なしというが、どうやって伝えればいい。

 これでは、技を放つこともままならない。


 もっとも、電脳世界も日々変化している。

 言葉よりも神経伝達を使った方が、効率的なのも確かだ。


 ――やってみるか。


 私はベンゼルに触れた。

 すると、「右だ」と感じ取る。


 私は「桂馬」を念じる。

 次の瞬間、右斜め前方へと移動していた。


「言っただろう」とでも言いたげな気配が伝わってくる。


 まあ、いい。これくらい造作もない。


 ――ルドルフは、なぜ動かない?


 そうか。喋れないのだ。

 言葉を交わせぬまま、彼の気配が徐々に薄れていくのがわかった。


 つまり、もう戦闘態勢に入っているということだ。


 平穏な街だと思っていたが、物騒なものだ。

 エドワード・ニューライトから名を取った州都の名を、ふと思い返す。


 ニューライト――彼には一度だけ会ったことがある。

 光を自在に操る戦士だった。

 今、彼がどうしているかは知らない。


 だが、偉大な男だった。

 いや、今でも偉大な男だと、私は信じている。


 エリザヴエッタが私の肩に触れた。

 その瞬間、彼女の思念が伝わってくる。


 ――彼に会いに行くつもりらしい。


 わかった。

 それが我々の目的であるなら、従おう。


 三年という歳月が流れた今、私にできることは何か――歩きながら考える。


 こうすればいいのか。いや、こうした方がいいのか。

 自問自答を繰り返しながら、ただ前へと進む。


 やがて、舗装された道に辿り着いた。


 ここがそうなのか?

 信じ難かったが、間違いないようだ。


 ロード・エジソンの邸宅――。


 重厚な三重構造の門をくぐると、ドーム型の建物が姿を現した。


 この電脳世界には、現実を再現したオブジェクトがいくつも存在する。


 たとえば、これ。

「マジックライト」


 念じるだけで、指定の場所に光を灯せる。

 神経伝達と光学を組み合わせた応用技術だ。

 まったく、便利なものだ。


 ――さあ、作業に取り掛かるとしよう。


 私は、隣に立つベンゼルへと手を伸ばした。






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