表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
更紗の脈理  作者: VIKASH


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/60

26

 



 機動力を上げるため、私は零とから電力とパーツ、核エネルギーを供給した。


 ここでくたばっては、帰れない。


 生きて帰る。即ち、倒す。


 最初からそう決めていた。


 この男が格上であることは承知している。だが、下剋上に上限はない。


「飛車・零式」


 私は音速を超えた。瞬間、音が消えた。


 無音。音は置き去りにされ、私はベンゼルを抱えたまま急降下する。


 最初は不思議だった。なぜ、人間が空を飛べるのか。


 羽もない、翼もない。スクリュー構造でもない。ジェットもブースターもない。


 ここはファンタジーの世界ではない――


「科学至上主義の世界だろう」


 ベンゼルの言葉が頭を掠める。

 参った、いや、参ったな。


 そうか、そういうことか。


 この男――前に一度会っている。


---


「姉貴、連れてきた」

「助かる」

「よせ。俺は忘却されたくない」

「最後に言い残すことはあるか?」

「地獄から蘇って、貴様の脳天に弾丸をぶち込んでやる」


 だが、その願いは叶わなかった。悔しくも、彼は忘却されたのだ。


 印象に残ったのは、銀髪と琥珀色の瞳だけ。


 犯罪者だから売った――それだけのことだった。


---


 直後、私は頭を撃ち抜かれた。


 安心してほしい。死なない。


 換装して、戦い続ける。


「なあ、いつから機人と成り果てた」


 どこに隠していたのか、旧式のピストルを。なかなかやるじゃないか。随分と私を楽しませてくれる。


 これは演出か? いや、現実だ。


 私でなければ、銃弾を掴む真似事などしないだろう。いや、できないかもしれない。


「角・零式」


 驚くべき顔つきだ。鬼のような面構え。


 私は速度を落とし、「桂馬」に切り替えてベンゼルとの力量を分散させた。


 これでよかったのだ。


「見苦しいぞ。生かして何になる? 俺は、貴様を打った。その意味がわかるか」

「どうやって影から生還した」

「……そんなわけないだろう」


 動揺が見て取れる。こいつは一体何者なのだ。


「俺は、忘却されてないぞ……」

「誰が忘却と言った。私は何も言っていない」


 苦悶の表情を浮かべる彼に、私は泳ぐように近づいた。


 あるのか――あるのだとしたら、サラサ……


 私の姉は、帰ってくるのだな。


 私はベンゼルを近場の岸へと運んだ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ