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ほう。これが西か。大帝国たるその地には、誰も足を踏み入れようとしない。
阿呆だと思われるだろう。私は戦闘機に仁王立ちし、いままさに領空へと突入したのだから。
向こう側の戦闘機が群れをなしてこちらへ向かってくる。
面白い。
たった一人に対して八機だと?
皮肉なほどに興味深い。
相手は私だ。
「来い」
言い捨てると、弾丸が瞬時に私を襲った。
快い感触だ。
弾をも弾く肉体というのは。
あれから二週間か。
日本帝國は領土を拡大している。
表面上は政治は良好に見える。
だがそれは氷山の一角にすぎない。
その奥底でどんな犯罪が行われているか、今の私には知る由もない。
これはもはや戦いではない。
戦争だ。
勝ち取ってみせる。
「飛車」
私は真上へ跳び、戦闘機同士の衝突をかわした。
西の五機はV字を描き、編隊を組んでいる。
まずい、と直感した。
空を弾丸のように飛びながら、朝日が眩しく刺す。
姉よ、これを見せてやりたい。
さて、西の民たちだ。
どうしてやろうか。
尋問するか?
ふふ、悪くない考えだ。
「おい、指導者はどこにいる?」
「ひ、ひええ」
ほう、よほど怯えているようだな。
パラシュートを持っているようだ。
私は“角”の怪力で、その降下者のパラシュートを意図的に作動させ、操縦士を助けてやった。
まだ四機残っている。
さて、次はどうするか。
簡単だ。約束は守る。危害は加えぬ。
遊覧飛行でもしてやろうか、とな。
ふふ、やってやるさ。
思わず笑みが零れる。
私は操縦士たちの脳内へ「DIVE」した。
こ、これは……?
DIVE阻止か。
西は相当に技術が進んでいるらしい。
何も見えない――どういう策だ?
まさか視界を遮っているのか。
電脳化における工夫だろう。
記憶を司る海馬へ、手動で電極を差し込み「DIVE」を解除する。
あるいは「DIVE」を阻止する。
そんな可能性があるとは思っていたが、ここ数年の技術か?
動くオーパーツが存在するとは思わなかった。
仕方ない、やってやる。
「香車」
操縦席のキャノピーを裂こうとしたが、開かない。面倒だ。
駄目か。
ならば不足はあるまい。
私は左腰の鞘に手をやり、刀を抜いた。
これは変形する刀、『日ノ刀・怪』だ。
殺すつもりはない。約束だ。
だがエンジン系統、そして主翼は斬っている。
「ゆく」




