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記録や録音と称して、星の民に売り、影から逃れるための通称「マインドレコーダー」という装置が、裏社会の人々の間で広まりつつある。
生活のすべてを記録しなければならず、まるで監視されているようなものだ。
私も、星の民の監視員と話をしていただけにすぎなかった。
そのため、監視の許容範囲内である限り、忘却されることはない。
忘却を防ぐ手段はいくつか存在するが――私がなぜ空を飛び、ヒーローまがいの真似事をしているのか。
その理由を話そう。
この「日ノ國」には、強力な者たちがいる。
彼らこそが、サイバーサムライである。
電脳化を施し、日ノ刀を振るって、相手を一瞬で仕留める。
特異能力を持たずとも、彼らはそれと同等の強さを誇るのだ。
その力は目を見張るものがあり、私の中に渇望を生んだ。
――ぜひ戦力に加えたい。そう考え、今まさに雇用の交渉を進めていたところだ。
サイバーサムライには、年齢の制限もない。
さきほど、子供にパーツを与えただろう。
そのパーツには、追跡装置や遠隔操作装置が内蔵されており、位置の特定はもちろん、
『人に非ず』に抵触する恐れはあるが、身体の自由を奪うことさえ可能だ。
何も、私が優しさだけでパーツを渡したわけではない。
言ったはずだ――上物だと。
加えて、あの子供が量産型の特異能力『歩』を有していることも確認済みである。
マイクロチップを内蔵し、『成り金』となることができる。
量産型は分かりやすい。力任せの突撃しかしてこないため、対処もしやすいのだ。
もし『玉』より上の能力が存在するなら、私も知りたいところだ。
現在、私が獲得している特異能力は――
『玉』『飛車』『角』『金』『銀』『桂馬』『香車』の七つ。
どうやら『龍王』『竜馬』と呼ばれる能力があり、それらは未発見らしい。
星の民に訊いてみるか。
「特異能力はいくつある?」
『――を超える』
……そうか。
雑音が混じっているな。
叫び声のようでもあり、砂嵐のようでもある、不気味な音だ。
我ながら、どう形容すべきか迷うほどに気味が悪い。
決めた。
この「日ノ國」を、我が領地とする。
そして、それは同盟ではなく――傘下であることを承知してもらいたい。
『
皆の者、聞こえるか?
私はサラサだ。
本日をもって、この日ノ國は南と結合する。
南は知の國として名高い。
ゆえに、このような名を提案しよう。
――日のあるところに、知力あり。
知力を育むには、書を説くこと。
日と書物の國。
すなわち、[日本]としてはいかがだろうか。
今しがた、紀年3889年。
ここに――日本帝國の設立を宣言する。
』




