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運び屋は便利だ。金さえ払えば、南まで物資を運んでくれる。
ちなみに一日も帰っていないが、ソサエティの連中が元気でやっているといい。
さて、仕事の時間だ。出かけるとしよう。
空を飛び、人々を救う。
誰かが私のことを“ヒーロー”と呼んだ。
――何を言う、殺戮者のくせに。
助けているんじゃない。
命乞いをさせたいだけだ。
さあ、面を上げろ。
ショウタイムだ。
「何者だ」
喋るわけにはいかない。
音声から身元を割り出される。
なぜ南の指導者が東の人々を救っているのか――疑問は残るが、話は後だ。
まずは、芥を片付ける。
「チェンジ」
なるほど、こう使うのか。
相手は何者だ。教えてくれ、星の民よ。
『歩である』
量産型か。
面白い。
何か企みがあるのか?
……でなければ、「何者だ」だと?
ふざけた真似をしてくれる。
私を誰だと思っている。
私こそが――サラサだ。
「なんだ、そのふざけた声は」
芥が何か言っているな。
声は変更しておいた。
これなら正体は割れまい。
……実は酒男の声にしておいたんだが、どこへ行った?
完全に行方をくらましたか。
いや、逃げた――と言うべきだな。
性根の腐ったやつだ。
「と金」
なんだ――?
顔面に、力強い一撃を正面から食らった。
……視界が歪む。顔のパーツがいかれてる。
しまった、運び屋はまだか。
腹、腕、脚――
順に損傷を受けた。
たまったもんじゃない。
こっちは上物を使ってるんだ。
量産型と一緒にしないでほしいな。
――ああ、もう聞こえないか。
一撃で十分だ。
「玉」
相手が吹っ飛ぶのが見えた。
お、ホームランか。
いや、ハットトリック?
……いや、一人だけだ。しかも損傷がひどい。
オウンゴールだな。
「奪おうぜ」
子供の声か。
最近は、子供の間で機械化パーツを改造するのが流行っているらしい。
無法地帯だ、仕方ない。
さっきのも子供だったか。
……くれてやる。
もってけ、泥棒。
私みたいな嘘つきにはなるなよ。
「あざっす」
まだ損傷はひどい。顔もぐしゃぐしゃだ。
どうやら脳だけは機械化できないらしい。
それも当然か。星の民以外は解明できていないのだから。
『黙せよ』
『……わかった。録音を停止する』




