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更紗の脈理  作者: VIKASH


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11

 



 北の指導者が問いかける。

「東へ行くのか」

「そうだ」私は答える。

「何を探している?」と北の指導者。

「かつて指導者であった姉を探している」そう言い残し、私は彗星のごとく飛び去った。


 北の指導者は追ってこなかった。だが、やがて激しい後悔に襲われることとなる。

 指先から芽が伸びていたのだ。何の植物かはわからない。だが、あのフラスコのせいだと即座に悟った。

 しかし身体は軽く、速度は増すばかりだった。

 この調子なら、明日には東へ辿り着けるかもしれない。


 ――東の指導者よ。待っていろ。私が行く。


 やがて、白い摩天楼は姿を消し、眼前に青い砂漠が広がった。

 なぜ青い? 最初は不気味に感じたが、よく見るとそれは砂漠ではなく、まるで海のようであった。


 東は海となっていた。

 ソサエティに属していた頃から、影にまつわる情報しか得られず、東が海であることなど知らなかった。


 うねる波、砕ける白い泡――それらを私は目に焼きつけていた。


 そのとき、背中に重い何かが圧し掛かった。

 銀色の何か。


 私は溺れていく。

 このまま海の藻屑と消えるのか。

 ――それだけは御免だ。


 代償はあろうが、「飛車」を応用すれば「玉」の効果を制御できるのではないか。


「玉」がエネルギーなら、「飛車」は推進の力。

 私は空気を噴出させ、腕を海底に向けた。体が回転していくのがわかる。


 回転の最中、銀色の人型の何かが、水と共に弾き飛ばされていった。

 私は姿勢を立て直し、そのまま東へ進む。


 ふと気づくと、私の身体は樹と化していた。

 水を吸い込み、重くなりつつも、水面を滑るように飛んでいく。


 すると、巨大な鮫が現れ、私を飲み込もうと迫った。

 その目玉には、姉の顔が浮かんでいる。


「幻影に違いない」


 そう思った。だが、いくら目を擦っても、その幻は消えなかった。


 仕方なく、鮫に追われながら水上を飛ぶ。

 私も速かったが、鮫は桁違いに巨大で、口ひとつで船を呑み込めるほどの大口を開けていた。


 どうすべきか――。


 前方には高く聳える岩壁が立ちはだかっていた。

 びしょ濡れの体を何度も叩き、私は上空へ飛翔する。


 鮫が大口を開け、側面からその口腔が迫った、その瞬間。

 私は「玉」を用いて小さな噴射を起こし、辛くも鮫の牙を逃れた。

 間一髪であった。






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