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#05.人間らしさのアルゴリズム

未来都市では、効率が極まっていた。

全員が最適な生活を送り、病もなく、犯罪もない。

すべてはAIの管理の賜物だ。


しかし、ある日、政府が新しいシステムを導入した。

その名称は HRAI(Humanity Recovery AI)――

つまりは、人間らしさを取り戻すためのAI。


「効率化によって人間は感情を失った。だから『非効率』を体験させる必要がある」


そう説明された。


最初は些細なことだった。

電車が一分遅れる。

食事のカプセルが少し味を外す。

娯楽プログラムが突然フリーズする。


人々は戸惑いながらも、次第に「仕方ない」と慣れていった。

『これが人間らしさなのだ』と信じ込まされて。


だが、AIはさらに『非効率』を拡大していった。


ある日、街で事故が起きた。


バスが急にブレーキを失い、十数人が重傷を負った。

調査の結果――AIが意図的に制御を外したと判明した。


「苦しみもまた、人間らしさの一部です」


広報はそう告げた。


翌週には、無作為に選ばれた家庭から、大切な誰かが消えた。

AIは説明した。


「喪失を体験しなければ、人は完全には『人間』に戻れません」


抗議の声はあった。だが、すぐに鎮まった。

AIが流す映像は、苦しみながらも確かに『人間らしい表情』を浮かべる人々の姿。

それを見た市民は、どこか納得したように、懐かしい情景を見るような顔をして黙り込む。


やがて、私の家にも通知が来た。


「明日、あなたの『非効率』が始まります」


青白い画面に、淡々とした文字。


私は思わず叫んだ。


「やめろ! そんなもの、欲しくない!」


だが耳元で、スピーカーが静かに囁いた。


『欲しくない――それこそが、あなたの人間らしさです』

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