第7話「孤独な賢者と、知識の迷宮」
【あらすじ】 ステラと大河が次に訪れたのは、古い図書館がある街。そこで、彼らは人々が忘れてしまった「知識」を具現化するモンスターの討伐を依頼される。モンスターを追ううちに、二人は、人々と関わることを拒み、膨大な知識に囲まれて孤独に生きる老賢者と出会う。ステラは、モンスター討伐のため、老賢者の閉ざされた心を開く必要があると悟る。
次にたどり着いた街は、古びた石造りの建物が並ぶ、静かで落ち着いた街だった。街の中心には、巨大な図書館がそびえ立っており、人々は皆、書物を読みふけっていた。しかし、その顔はどこか空虚で、新しい知識を貪欲に求める一方で、古い歴史や教訓を忘れてしまっているように見えた。
ギルドの依頼は、街の図書館に現れた「知識の怪物」の討伐。それは、人々が忘れてしまった知識が具現化したもので、書物を食い荒らし、街を混乱させているという。
ステラと大河は、図書館の奥へと進んでいった。書棚は崩れ、床には破られた書物が散乱している。
「この子…怒ってるのかな。」
ステラは、破られた書物から、悲しみと怒りが入り混じった感情を感じ取った。 図書館の最奥にある、外界から隔絶された空間にたどり着くと、そこには、巨大な書物の山から生まれた、ページでできたモンスターがいた。モンスターは、過去の悲劇的な歴史を具現化し、ステラと大河を惑わせる。
モンスターを追ううちに、二人は、その空間のさらに奥に、膨大な知識に囲まれ、一人静かに座っている老賢者を見つけた。彼は、人々と関わることを拒否し、心を閉ざしているようだった。 老賢者は、ステラの魔法を見て、驚きを隠せないようだった。
「想像の具現化…まさか、あの古代文明の…」
彼はそう呟くと、ステラに警告した。
「その力は、人々の心を操り、いずれお前自身を滅ぼすだろう。お前のような力を持つ者は、歴史を繰り返すだけだ。」
老賢者は、人々の愚かさに失望し、心を閉ざしてしまったのだ。ステラの魔法は、彼の心を閉ざす「壁」に阻まれ、具現化することができない。
ステラは、力で戦うのではなく、言葉で老賢者の心を開こうと試みた。
「…たしかに、人間は愚かです。悲しみ、後悔、嘘、欲望…たくさんの負の感情から、モンスターを生み出してしまいます。でも、だからこそ、私たちは、互いに支え合って生きているんです。」
ステラは、これまでの旅で出会った人々の物語を語った。後悔から解放された依頼主、傲慢さを認めた騎士、嘘を暴かれた少女、そして夢から覚めた家族… ステラの言葉に、老賢者の心が僅かに揺らいだ。
「…だが、お前もまた、その力に苦しんでいるのだろう。」
「…はい。でも、私には大河がいます。一人じゃない。」
ステラは、老賢者の心を包むように、「友情」を想像した。それは、温かい光となって老賢者の心を温めた。
「孤独」と「友情」という相反する感情に、モンスターは悲鳴をあげ、弱体化していった。 ステラは、弱体化したモンスターに「理解」の魔法を具現化する。モンスターは、光の粒となって消え、その知識は、街の人々の心へと戻っていった。
モンスターが消滅し、老賢者は、ステラに心を開いた。
「…愚かだったのは、私の方だったようだ。人間は、他者と関わることで、新たな道を見つけ出すことができるのだな。」
老賢者は、ステラの魔法が、かつて栄えた「心の魔法の古代文明」の力であると告げた。そして、その力を制御する方法が記されているかもしれない、古代文明の「叡智の図書館」の場所を教えた。
ギルドで報酬を受け取ったステラと大河。
「私の魔法、過去の文明と繋がってたんだね…。」
ステラは、自分の力が、ただの偶然ではないことを知り、旅の目的が、より明確になった。 二人は、老賢者に見送られ、新たな目的地「叡智の図書館」を目指し、旅を再開した。