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魔女の心の処方箋  作者: 吉本アルファ
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第6話「飢えた貧民街と、欲望の怪物」

【あらすじ】 ステラと大河が次に訪れたのは、貧富の差が激しい、大きな都市。そこで、彼らは富裕層の区画で豪遊する人々を、貧困層の区画から恨めしそうに見つめる人々を目にする。貧民街では、人々の「欲望」が具現化した「欲望の怪物」が現れ、食料や財産を奪っていた。ステラは依頼を受け、貧民街へ向かうが、そこで、貧しい人々の強い欲望に心が引きずられ、魔法を暴走させてしまう。

次に二人がたどり着いたのは、高い城壁に囲まれた、巨大な都市だった。しかし、その華やかさは、門をくぐった瞬間に、見る影もなくなった。中心部から離れるにつれて、豪華な建物はボロボロの家へと変わり、行き交う人々は皆、空腹と疲労に顔を歪めている。


「…こんなに、差があるなんて。」


ステラは、富裕層の区画から流れてくる、甘い香りを恨めしそうに見つめる、貧民街の人々の目を感じた。その目には、強い「欲望」と「嫉妬」が渦巻いており、ステラの心に重くのしかかった。


ギルドの依頼は、貧民街に出没する「欲望の怪物」の討伐だった。それは、人々の欲望を糧に、食べ物や財産を具現化し、人々を混乱させ、その隙に食料を奪うというものだった。


「…この人たちのために、力を使いたい。」


ステラは、強い決意を胸に、依頼を受けることにした。


薄暗い路地裏で、「欲望の怪物」と対峙した。それは、無数の口と手を持つ、醜い姿をしていた。怪物は、人々が欲しがる豪華な料理や宝石を具現化させ、貧しい人々を惑わせる。人々は、幻影に手を伸ばし、怪物の思うがままに操られていた。


「大河、行くよ!」


ステラは魔法で剣を具現化しようとする。しかし、貧民街の人々の強烈な「欲望」が、彼女の心に流れ込んできた。


「食べたい…」


「金が欲しい…」


「楽になりたい…」


無数の声がステラの頭の中で響き、彼女の心をかき乱す。具現化しようとした魔法は、暴走し、形を成さないまま、不気味な光を放ち始めた。


「う…あああ…!」


ステラの顔は蒼白になり、全身が震え、その場に崩れ落ちた。


大河は、ステラの異変を察知し、彼女のそばに駆け寄る。しかし、今回は、彼の力でも人々の強大な欲望を制御することができなかった。 大河は、ステラを守るために、モンスターへと向かって行った。彼は、モンスターを倒すのではなく、その体が具現化した食べ物を、むさぼるように食べ尽くし始めた。 大河の行動に、モンスターは戸惑い、具現化したものが次々と消えていく。


その大河の姿を見て、ステラは魔法の暴走を止めた。彼女は、自分の魔法が、人々の心の感情にどれほど左右されるか、そして、一歩間違えれば、彼女自身もモンスターを生み出す危険性があることを、改めて実感した。


大河がモンスターの力を奪ったことで、モンスターは弱体化し、ステラは、残された力で、人々の心に「満足」を具現化した。それは、欲望を一時的に満たす、安らぎの光だった。 モンスターは悲鳴をあげ、消滅した。


ギルドで報酬を受け取ったステラの表情は、晴れなかった。彼女は、モンスターを倒したところで、人々の「欲望」は消えることはないと悟った。


「ねえ、大河…私の力は、人々の心の闇を消し去ることはできない。ただ、一時的に、安らぎを与えることしか…」


ステラは、自分の魔法の限界と、人々の心の闇の深さを思い知った。


次の街へと旅を再開した二人。 ステラの旅は、力で戦うだけではない。自身の魔法の危険性、そして、人々の心の闇と向き合い続ける覚悟を、彼女に与えた。 彼女の旅は、終わりなき戦いへと、変わっていく。



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