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デレる悪役令嬢

 着替えを済ませて先ほどの部屋へオルンさんと戻ると、アリシアはすでにそこにいた。


 真っ黒いドレスではなく、部屋着……なのだろうか、とてもラフな格好をしている。


「低俗な身分でこの私に目を向けるな、穢らわしい」


 ゴミを見る目そのもので睨みつけられてしまった。


「ダメじゃないですかアリシア様。この少年はアリシア様を慰めようとしてくれてたんですから。そんなの人生で初めてのことじゃないですか?」


 助けに入ったのかそうでないのか分からないオルンさんの付け加えにより、アリシアの目はさらに鋭さを増して睨んでくる。


「平民の分際で私に触れた時点で許されざる行いだ」


「いやあれはアリシアの方から殴ってきただけじゃ…──」


 俺が言い終わるよりも早く、アリシアの手元が赤い輝きを見せた。


 目の前が一瞬真っ赤に染まったと思ったら大きな爆発音が鳴り響いた。


「───ダメだよ、アリシア。それでは少年が死んでしまう」


 俺とアリシアの間に入ったオルンさんは怪我ひとつなく無傷だ。


 俺の目にはアリシアが魔法のようなものを俺に向かって放ったように見えたが、それをオルンさんが打ち消していた。


「どけオンカ!そこの変態に裁きを下さないと私の気が済まない」


「あれだけ殴ったのですから裁きは十分に行われたでしょう?それに、第一王子殿下以外にも、あなたのことを可愛いとこの少年が言ってくれたじゃないですか。私には分かりますよアリシア様、とても嬉しいのではないですか?」


 これほど恐ろしい悪役令嬢が可愛いと言われただけで嬉しく思うのか。


「なっ………!ななななにを言うんだオルカーーー!!?!?」


 顔を真っ赤に染め上げて照れた表情を見せるアリシア。


「っ、見るな変態!」


 目が合うなり自らの顔を隠して、横にあるソファへ向かってダイブしていった。


「ほらね少年、アリシア様は全てにおいて可愛いのだよ」


 ニヤニヤ顔でそう言ってくるオルンさんは。


 俺はソファに顔を埋めたまま微動だにしないアリシアの元へ行き、顔の高さを合わせるようにして膝を折った。


「……アリシアは本当に可愛いぞ」


 そう言うと、背中を向けたままのアリシアの身体がビクッと一度跳ねた。


「周りの奴らがみんな言ってこないだけで、アリシアはどんな女の子よりも可愛いと思う。この国の王子だって言うんだから、間違いないよ」


 つまりはアリシアが一番可愛いということだ。


「えっと、それから………一人で王子を奪い取ろうとしたところはとてもカッコよかったと思うよ。そ、そうアリシアは可愛いと格好良いの二つの良いところがあるんだよ」


 だんだんと自分でも何を言いたかったのか分からなくなってきた。


「あっ、あとアリシアは……───」


「もう、いい。もうそれ以上喋るな」


 彼女の表情こそ分からないが、耳が真っ赤に染まっていることに気がついた。


「少年〜、そこまでやれとは言ってないぞ。オーバーキルだ」


 オルンさんに肩を叩かれ、そしてアリシアの方へと寄っていく。


「ほらアリシア様、少年のことはもう許してあげましょうよ」


 オルンさんに支えられてソファに座ったアリシアは、俯きどんな表情をしているのか見えない。


「えっと……少年」


「……アキトです」


 アリシアにも少年呼びされたら本当に少年という名前で定着してしまうかもしれない。


「あっ……アキト、その…………もう一度、言ってくれ」


「何をですか……?」


「か………可愛いと、もう一度言え……!」


 バッと勢いよく顔を上げて強めの口調でそう言ったアリシアの顔は茹で上がっているかのようにそれはもう真っ赤っかだった。


 何を言ったのか理解できずに俺とオルンさんは揃って目を点にした。


「私のことを可愛いと、本気で思っているのなら……もう一度私の目を見て言え!」


「……っ、アリシアは本当に可愛い!世界一可愛い!!」


 〜〜〜〜〜〜っ、自分で言っておいてめちゃくちゃ恥ずかしい。


 チラッとオルンさんの方へと視線を向けると、目は点のまま口はポカンと開いたまま虚無の表情をしていた。


「うふっ、ふふふっ………そっか、そんなに私が可愛いのか」


 俺の人生最大の羞恥心を味わって放った一言を、言われた当人はとても嬉しそうに顔の表情を緩めている。


 先ほどの恐ろしかった鋭い表情が嘘のようだ。


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