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きみを守るお姉さん

「───……シャランさん、なんか外の様子がおかしくないですか?」


「おかしいって………特に異常現象的なすごいことは何もないけど」


 窓から外を覗くと、天気の良い光景が広がっていた。


 日差しが建物の隙間を満遍なく照らしている。


「快晴だねぇ」


 変わらず穏やかな調子で何一つ疑っていないシャランさんは窓の縁に手を置いてただ眺めている。


「そうじゃないですよシャランさん、晴れてることがおかしいんです。だって今は日が沈んで真っ暗な空のはずだから」


「言われてみればそうだね。………じゃあ外のこれはどゆこと………?」


 違和感には気付いてもどういうことかはまるで分かっていない様子のシャランさん。


 かくいう俺もまさしくその状況なのだが、いったいどうすればいいのやら。


「んー……とりあえずさ、外に出て確かめてみようよ。何か分かるかもしれない」


「えっ!?外に出るって……本気ですか」


 異常気象現象なのか人によるものなのかも分からないのに、外へ出て確かめるなんて普通はしないだろう。


 なによりシャランさんも俺と同様、何も知らないのにそういうことを言い出すことが余計に怖い。


「だーいじょうぶだって、もしもの時はお姉ちゃんが助けてあげるから。だから私からは離れないでねアキトくん」


 胸をトンと叩いて自信満々にそう言い放ってはいるが、不安なものは不安だ。


 彼女を信頼していないというわけではない、どちらかというと信頼しきれていない。


 その最たる要因は、やはり自称お姉ちゃんキャラだ。


 部屋を出てから屋敷の外に出るまでに誰一人として屋敷の人間を見かけなかった。


 明らかに何かが起きていると思わせられる中、俺たちは外へ出た。


「変だねー、風はないし音だって何も聞こえない」


「シャランさん………空に太陽がどこにもありませんよ」


「……本当だ」


 これほど明るく照らす元となる物体が空のどこにも見当たらない。


 言うなれば空全体が光を発しているかのように、どこを見ても明るく眩しい。


 まるで夢でも見ているようだ。


「───むっ」


 突然何かに反応したシャランさんが、鞘から剣を抜き俺の頭上へ振りかぶった。


 次の瞬間に、ガキィィンと剣と剣がぶつかり合う甲高い音が鳴り響いた。


「び…………っっっくりしたー、いきなり斬りかかってくるなんてどういうことかな?」


 俺の目では何も見えなかった奇襲に即座に対応してみせたシャランさんは、本当に驚いた様子でいる。


「やるのなら正面から来るっていうのが普通じゃないの」


「何を言ってやがる………?正面から堂々と襲撃するバカがどこにいるってんだ」


 はっきりとこれが奇襲であるといった相手の男は、シャランさんと剣を交えて笑みを浮かべている。


「ははぁ〜ん、さては君たち、ヨンダルクからの刺客だな?」


 閃いたようにそう言ったシャランさん。


「なっ………なんで分かった!?」


 敵さんは目を見開いて驚愕の表情を見せた。


 アリシアとオルンさんがいない状況で襲撃が来たらヨンダルク家の者だと分かるものだし、向こう側も驚くことではないだろうに。


 いったい何を見せられているのか、剣を交えた二人がコントを繰り広げてしまっている。


「……シャランさん、その人は敵ですよ。何をふざけているんですか」


「むぅー………ふざけてないってば。こいつらは全員アキトくんを狙う輩で、私たちの敵なんだよね」


 口を尖らせて不機嫌な表情を見せたシャランさんは、目の前の男一人だけでなく他にも数人いることに気がついている。


「───生捕はそこのガキだけだ!テメェは殺す!!」


「………そうだね、まぁ何を言ってもいいよ。大事だもんね、遺言はさ」


 男と剣を交えて拮抗していたかに思われたが、次の瞬間に彼女の剣が突如として男の剣に斬り込みを入れていくのが見えた。


 剣が剣を滑らかに斬っていき、直後に男が為す術もなく真っ二つに斬られていくまでは、たったの瞬きひとつにも満たない間だった。


 力の入れ具合を変えたのか、刃の向ける向きを変えたのか、俺には何も知り得ることはできない。


 俺の前へ出て手を伸ばし、守るようにくっついて離れない。


「私から離れないでね、アキトくん」


「でも、これじゃあシャランさんが戦い辛くないですか?」


 足手纏いなことは自覚しているが、俺が彼女にとっての足枷になっていることが嫌なのだ。


「大丈夫だよ、アキトくんは全然邪魔になってないから。むしろお姉さんは君を守るためにここにいるんだから、存分に守らせろって感じだよ」


 前方に姿を現した数人の剣を持った男たちに囲まれていながらも、シャランさんは落ち着いた様子でそう言ってくれた。

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