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第9話

 あの後、さらに歩き続けた俺たちは無事に森を抜け手入れされた街道を歩いていた。

「はぁ、やっと一息つけた。それにしても、ルチカって凄いんだな」

 人の手が加えられて森の中とは段違いに歩きやすい道に軽く感動を覚えながら、俺は隣を歩くルチカへと声を掛ける。

 実際、ルチカに出会えていなかったらヤバかっただろう場面も多々あった。

 そもそも方角すら分からない俺に比べて、ルチカはまるで森を知り尽くしているように真っ直ぐ森の外まで案内してくれた。

 さらに野生動物やモンスターが近づいてくるたびに、敏感にその気配を察知した彼女の指示によってやり過ごすことができた。

「きっと俺ひとりだったら、道に迷った挙句どこかでモンスターと遭遇して死んでたよ。本当に、ルチカに会えてよかった」

「そんな、大げさだよ。森だってそんなに広くないから、真っ直ぐ歩き続ければいつかは出られただろうし。それにシュージは、グレートベアーを倒せるくらい強いんでしょ? だったら、この森で出てくるようなモンスターなんてイチコロだよ」

「いや、アレは運が良かっただけだって。もう一度同じことをしろって言われても、できる気がしない」

 実際、いま思い出すだけでも恐怖で身体が震えてしまいそうになる。

 それくらい、あの時は明確に死の予感を感じていた。

 まさかこの短期間で二度も死の予感に震えることになるなんて、本当にクソ女神さまさまである。

 もし次に会うことがあれば、絶対に文句を言ってやる。

 改めてそう心に決めながら歩き続けていると、やがて目の前に大きな壁が見えてきた。

「あれって……?」

「うん、あれが目的の街だよ。タルディナレスっていう城塞都市で、この辺じゃ一番大きな街」

 確かに、遠目で見てもかなり栄えているように見える。

 近づいてみればその印象はさらに深くなり、壁の外側を囲むようにして街が広がっていた。

「なぁ、普通なら街は壁の中にあるものじゃないのか? 外にまではみ出してたら、壁の意味がないんじゃ?」

「まぁ、そうなんだけどね。だけどこの辺りは比較的モンスターも少ないし、それに衛士や冒険者も定期的に見回りしてるから。壁の中だけだと、どうしても住める人数に限りができちゃうから」

 そんなルチカの説明を聞いても、俺はあまり釈然としない。

 だったらどうして、最初に街を壁で囲ってしまったんだろうか?

「あはは、それは逆なんだよ。最初に壁があって、そこに街を作ったの」

「壁が先? それってどういうことだ?」

「あの壁はもともと、数百年前に起こった人魔戦争の時に建築された拠点のひとつで、戦争が終わった後も壁だけが崩れずに残っていたの。で、当時の人たちがその壁を再利用する形で住み着き始めて、やがてタルディナレスの街ができた。だけど壁の中の土地には限りがあるから、後からやって来た人たちは壁の外側に家を建てて、街はどんどん拡張されていったってわけ」

「なるほど、そんな理由があったのか。街に歴史ありってことだ」

 その成り立ちを聞けば、確かに壁の外に街があるのも頷ける。

 そうやって話している間にも街はどんどんと近づいていき、やがて俺たちは街の入り口にまで辿り着いた。


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