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第4話

 最初の場所から出発して、どれくらい時間が経っただろう。

 歩きながらいろいろと試してみた結果、多少なりともこの能力について分かってきた。

 まず、この能力で生み出せるイモの種類はジャガイモとサツマイモの二種類だけ。

 コンニャク芋とか里芋とかを生み出そうとしてみても、なぜか上手くいかなかった。

 いけそうな雰囲気はあるのだけど、まるでなにか制限がかけてあるみたいにどう頑張っても出てこない。

「たぶんこれって、能力が成長すれば出せるようになる感じなんだろうな。問題は、肝心の能力がどうやれば成長するか分からないことだ」

 こればっかりは、いろいろとやってみて調べるしかないだろう。

 そしてもうひとつ分かったのは、イモを生み出すのにわざわざ叫ばなくてもいいということだ。

 と言うのも、出て来いと念じるだけで手のひらからは簡単にイモが飛び出してくる。

 イモの種類も、ただ考えるだけで切り替え可能だ。

 いちいち叫ばなくてもいいというのは、正直言ってかなり助かる。

 今後もし街なんかで商売を始めた時、これならこっそりとイモを補充することができる。

 いくらゴミみたいな能力とは言え女神から授かったからには、あまり人に知られない方が良いだろう。

 それに人前で「ジャガイモ!」とか「サツマイモ!」って叫ぶのはけっこう恥ずかしいからな。

 そして最後にもうひとつ、イモの飛び出し方も自由に変えられるっぽい。

 いちいち手のひらから飛び出していくのが面倒だなと思い始めていた時に気付いたんだけど、意識すれば手のひらにそっと乗るように生み出すこともできるみたいだ。

 その逆に勢いを強くして飛び出させることもできるようだけど、この仕様の使い方は今のところ思いつかない。

 ぶつければけっこう痛いんだろうけど、所詮はイモだからなぁ……。

 当たり所が悪ければ失神させるくらいならできるだろうけど、だからどうしたって話だ。

「そもそもそんなことをする必要があるかも分からないし、自衛手段として使うにはやっぱり心許ないよな。マジでハズレ能力だよ、これ」

 どうせ異世界に転生するなら、せめて魔法を使えるようになりたかった。

 別に最強チートで無双がしたいってわけじゃないけど、やっぱり男たるものそういうのに憧れるじゃん。

 それで襲われてる女の子を助けて、感謝されながらその子と一緒に旅をする。

 そのうち二人の間には絆が生まれて、そしてそれは次第に愛へと変わっていくのだ。

「なんて、アニメみたいな都合のいい展開も期待できないだろうしなぁ」

 なんと言っても、イモを生み出す能力だ。

 これじゃあとてもじゃないけど、そんな展開なんて想像できない。

 なまじ女の子と運命的な出会いをしたとしても、こんな能力じゃダサ過ぎてすぐにフラれてしまうだろう。

「まっ、そもそもまずはこの森を抜けないと出会いどころじゃないんだけどな」

 あいかわらず鬱蒼と茂る木々を見てため息を吐きながら、俺は森の中を進んでいくのだった。


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