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第16話

「はい、こちらがシュージさんの冒険者証となります。紛失された場合の再発行には別途手続きが必要になりますので、失くさないように気を付けてくださいね」

「ああ、ありがとう。気を付けるよ」

 手渡された冒険者証には、確かに俺の名前とギルドの紋章がしっかりと刻まれていた。

「初めて登録された方は一律で鉄級からのスタートとなります。依頼の達成率やギルドへの貢献によって昇級しますので、まずは一つ上のランクである銅級へのランクアップを目指して頑張ってください」

「えっと、まぁ……。ほどほどに頑張るよ」

 身分証を手に入れるために登録しただけだから頑張るつもりはあまりないのだけど、この場でそれを言うのは憚られる。

 微妙な反応を返すことしかできない俺に助け舟を出すように、隣に立つルチカが話に割り込んでくる。

「ごめんね、コレットさん。私たち、この後もいろいろと予定があるの。後は私から説明しておくから」

「あら、そうですか。……でしたら後の説明は、公私ともに最高のパートナーであるルチカちゃんに任せちゃいますね」

「ちょっ、ちょっと! からかわないでよ!」

 最後に悪戯っぽい笑みをルチカに向けた後、コレットはそのままカウンターの奥へと消えていった。

 残されたルチカは頬を少しだけ赤く染めながら、それでも平静を装うようにして俺へと視線を向ける。

「まったく、コレットさんってば……。シュージも、言っておくけどアレはあの付きまとい男を追い返すための方便だからね。あんまり本気にしちゃ駄目だよ!」

「分かってるって。それで、次はどこへ行くんだ? 最高のパートナーさん」

「シュージまで私をからかって! もう、知らないっ!」

 そう言って、拗ねたように頬を膨らませながら俺を置いて歩き出したルチカ。

「ちょっ、待てって。冗談だよ」

 周りから注がれる生暖かい視線を全身に受けながら、俺は慌ててその背中を追うのだった。


 ────

「なぁ、そろそろ機嫌を直してくれよ。俺が悪かったって」

 むすっと頬を膨らませたまま歩くルチカに声を書けても、彼女はなんの反応も示さない。

「参ったなぁ……。どうしたら許してもらえるんだ……?」

 困ったように頭を掻きながら呟いていると、やがてルチカの肩が小刻みに震え始める。

 その震えは次第に大きくなっていき、やがて耐え切れなくなったように彼女は吹き出すようにして笑い始めた。

「ぷっ、あははははっ! もう限界、我慢できないっ」

 いきなり大きな声を上げて笑い出した彼女の様子に戸惑っていると、ルチカは笑いすぎて溢れた涙を指で拭いながら口を開く。

「別に、もう怒ってないよ。シュージがからかってくるから、私もちょっと意地悪しただけ」

 そう言ってまた笑う彼女の姿に、俺は思わずホッと胸を撫でおろす。

「良かった、ホッとしたよ。ルチカに見捨てられたらどうしようかって、心配で気が気じゃなかったんだ」

「ふふっ、安心して。私は一度言ったことは曲げない女だから。シュージのことは、ちゃんと最後まで面倒見てあげる」

 そう言って胸をドンッと叩いた彼女は、俺に向かって満面の笑みを向けた。


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