第11話
「さてっと、それじゃ行きましょうか」
「行くって、どこに行くつもりなんだ?」
彼女の言葉に首を傾げると、ルチカは呆れたようにため息を吐く。
「なに言ってるの。さっき兵士さんも言ってたけど、まずはシュージの身分証を作らなくちゃでしょ」
「あぁ、そう言えばそんなことを言ってたな。でも、身分証なんてそんな簡単に作れるのか?」
「……シュージって、本当になんにも分からないのね。まるでこの世界の人間じゃないみたい」
「んなっ!? なに言ってるんだよ。そんな訳ないだろ」
「あははっ、そっちこそなに慌ててるの? ちょっとした冗談じゃない」
唐突に図星を突かれて思わず狼狽えてしまう俺を見て、ルチカは大声を上げて笑う。
まったく、心臓に悪いぜ。
どうやら俺の素性がバレたわけではないようでホッと一息ついていると、その間にもルチカは親切にいろいろと教えてくれる。
「とりあえず、すぐに身分証を手に入れる方法は冒険者ギルドか商業ギルドに登録することかな。あとはお金を払って住民権を買う方法もあるけど、こっちはあんまりオススメしないかも」
いくつかの案を出してくれるルチカだったが、残念ながら俺にはどう違うのかが分からない。
「できれば、それぞれの方法の違いを教えて欲しいんだけど」
「オッケー。じゃあ、まずは冒険者ギルドからね」
そう言って頷いたルチカは、指を一本立てながら説明を始める。
「冒険者ギルドは、文字通り冒険者を管理してるギルドのこと。条件さえ満たせば冒険者になることは簡単だから、手っ取り早く身分証が欲しい人はよく利用する方法だね」
「なるほど。ちなみに、その条件って言うのは?」
「まずは犯罪歴がないこと。これはギルドにある魔道具で簡単に確認できるから、嘘を吐くことは無理ね。そして二つ目はギルドの用意した試験に合格する、もしくは冒険者からの推薦を受けること。そのふたつの条件を満たせば、誰でも冒険者になることができるの。シュージの場合は私が推薦してあげるから、犯罪歴さえなければすぐに冒険者になれるよ」
そこまで言って、ルチカはさらに指をもう一本たてながら説明を続ける。
「商業ギルドも冒険者ギルドと似ていて、こっちは商人を管理するギルドのことね。登録の条件は同じように犯罪歴がないことと、登録して二年目からは一年ごとにギルドへ上納金を収めること。いろいろと補償もあるし商人になるなら登録して損はないけど、定期収入が見込めないなら止めた方が良いかも」
「商人か……。戦うのはできるだけ避けたいし、登録するならこっちかな」
イモならいくらでも生み出すことができるし、それを売れば最低限の生活くらいはできるだろう。
そんな俺の呟きに少し不満そうな表情を浮かべるルチカは、さらに三本目の指を立てながら口を開いた。




