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13月のアウローラ  作者: 兎乃井メライ
【第一章】傍観者の椅子
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天使と冥魔

 人類の歴史は、冥魔との戦いの歴史といっても過言ではない。


 その因縁を紐解くと、起源は一千五百年以上遡る。

 世界のあらゆる宗教を事実上統率・管理する世界教会の共通聖典『マアルーラ』に、その記述が存在する。

 冥魔はもともと神に仕える御使い――天使であった。だが神が人間を創り寵愛するようになると、それを妬んだ者たちは闇の深淵(テネブライ)へ墜とされた。その憎悪の矛先はやがて繁栄を極める人間へ向くようになる。

 人の世に紛れて姿を現しては、人々を惑わし、狂わせ、翻弄しながら、冥魔は邪悪な力を秘めた666の”種”を蒔いた。種は憎悪や怨嗟、嫉妬や怒り――そういった負の感情を糧に芽吹き、数々の争いや災禍をもたらした。災いが生んだ穢れは、やがて深淵への扉を形成する邪石(イコン)となり、月蝕の夜に軍勢を地上へ放つ。それが13月の始まりである。

 冥魔の軍勢はその邪悪な息吹で地上を汚染して腐敗させ、感染した人間を”魔者(マモノ)”に変え、時には体ごと乗っ取りその魂を食らった。

 魔者と化した者は心を失い、人々を襲い破壊の限りを尽くす。魔祓いの祈祷も聖水も効かず、いかなる武器をもってしても冥魔を退けることは出来ず、小さな街や村は一夜で暗黒に呑み込まれていった。

世界は確実に滅亡へと向かっていた。その危機を救ったのは、一人の敬虔な司祭の祈りだった。

 彼の願いにこたえ、光輝く翼を持つ7人の天使が人々を救うべく地上に降り立った。

 天使のために、神は7人の心清らかなる人間に自らの力――秘力を与えた。7人が姿を変えた武器を手に、天使たちは冥魔の軍勢を退け世界に光を取り戻す。

 だが種は世界中にばら撒かれたままであり、すべてを回収しない限り悪夢は終わらない。


『この地上からすべての悪しき野望が消え去るまで、我らは地上に輪廻転生し、世界の加護する戦士となろう。そして神が力を与えし美しき魂の持ち主が、戦士の武器となるだろう。戦う力は二つで一つ、どちらが欠けても邪悪な者には打ち勝てぬ。互いに慈しみ、信じ合い、二つの心を揃え困難を乗り越えてゆくがよい。それが神の御遺志である』


 7人は司祭に『預言者』の役割と戦士たちを導くためのさまざまな知識や神秘の力が宿った秘密の書を授け、他の天使たちとともに地上に転生した。天使が舞い降りたフランス北西部の小島の聖堂を本拠地として、司祭は祓魔騎士修道会『神徒の座(セプテム)』を設立。世界教会より魔祓いに関する全権を委ねられた。

『神徒の座』は、

天使の聖痕を宿す者――祓魔騎士(シンクワィア)とその武器となる秘力を神に与えられた者――洗礼者(サクラメント)が集結した、宗教の隔てのない世界唯一の対冥魔組織として、今もなお冥魔と戦い続けている。


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