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奪われた光を奪還する作戦 3

ティアナは民衆の視線を一身に受け、ふんわりと頭を下げた。

その凛とした佇まいに、女の私ですら見惚れてしまいそうだ。



さて、花梨が精霊から聞いた方法を実践する時が来た。


私は緊張で手が震える。

ティアナにやっぱり止めると言われないか、

失敗しないか、

そんなことばかり考えてしまう。

ぎゅうと汗ばんだ両手を握った。


元より、人に見られながら何かをするのは苦手なのに、こんなにもたくさんの人に見守られながらとなると心臓が口から出そうだった。

震える手を諌めてティアナへと伸ばす。



私は目を閉じ、ティアナに気を集中させる。

両手を広げて、ティアナが纏った光を掴むイメージでぎゅっと…

ぎゅっ……


「ちょっと?何かの冗談かしら?」

ティアナが耳元で言った。


(しまったーーーー!!ティアナごと抱きしめてしまった!)


どうしよう!と、花梨の方を見たら何やら精霊と話した後、親指を立てた。

なるほど、このまま続行する様だ。


しゅうしゅうと私に光の源の様なものが入ってくる。

気を抜いたら掴み損ねてしまいそうだ。

水の様な、空気の様な、不確かな形の飛び交う「それ」


全て残らず吸い切らねば失敗してしまう。


そんな焦りを抱く。



花梨が私の背中にそっと左手を当てる。

そして、右手を天高く突き上げるとーー

ティアナから吸い取った光が私を通して花梨が放出していく。


皆が目を見開いた。

直後、花梨の右手からは直視できないほどの眩い光が四方八方に飛び散った。


誰もが眩さに目を覆う。


その瞬間、ティアナが私の耳元で囁く。

「エリオルのことが好きなのね。私、この一ヶ月よく考えたの。ようやく分かった、私は私が好きだったんだわ」

「ティアナ…」

「全く、こんな大掛かりなことして、笑っちゃうわ」



やがて、全ての光を放出し終え、私たち三人は力を使い果たして、もたれ合った。

お互いがお互いを理解し合えない三人だ。

しかし、その様子に民衆からは感嘆の吐息が漏れ聞こえた。


「三人の聖女様…素敵ね…」

「やりきった汗が美しいわ」

「かっこいい…」


もう疲れて、一歩も動けそうになかったが、私はエリオル王太子を見上げると目があって微笑む。


「さあ、君たち大丈夫か。少し休むといい」

そう言うや、エリオル王太子は私を担ぎ上げる。


「わ、やめて下さい!」

「やめない」


その姿を見たからか、グノーシスは花梨に駆け寄っていく。

「大丈夫か!?」

まだ少しだけ腫れた瞼をぱちくりさせた花梨は、グノーシスの顔を間近に見ると、やがて顔を真っ赤にした。

グノーシスの指には光るものが見えた。


ティアナにはセイレス伯爵が手を差し伸べる。

「聖女ティアナ様、私でよければ……」

「何か被るものを頂戴」

「何を言います。貴方は美しいでしょう」

すっかり茶色の髪と茶色の瞳に戻ったティアナはセイレス伯爵を見上げた。

その瞳をセイレス伯爵はしっかりと見つめて言った。

「お誘いしても、なかなかダンスを踊っていただけないから、いつも薬を貰うのにかこつけて貴方とバルコニーで語らうのが唯一の社交界での楽しみでしたから」

「それは愛の告白かしら?」

「娘が許してくれるなら、貴方との将来を考えたく」

そう言ってセイレス伯爵は、ティアナの手の甲にくちづけた。

すでに拘束する理由のなくなったティアナが、この祝賀祭を以て歴史に名を残す聖女となったのだ。

何しろ牢で過ごしていたことすら秘密裏に処理された。

セイレス伯爵とて憚ることなくティアナを求めることができるのだ。


(なるほど、あのバルコニーでの密会は…セイレス伯爵、ティアナが好きだったのね……)


エリオル王太子の腕の中でぼんやりとその光景を見つめた。


わっ!と人々が声を上げる。

振り返ると、国王陛下は自身の冠を高く掲げていた。

そこに、きらりと光るものが見えて目を見張る。

「見よ!我が冠にも宝石の輝きが戻った!」


うねりのような歓声が響く。


すると、エリオル王太子の冠や衣服に散りばめられた宝石も全てが眩く輝き出した。

抱えられた私はそっとその宝石に触れる。

ほっとして笑みがこぼれた。


エリオル王太子に抱えられたまま馬車に乗り込むと、座席には赤い薔薇の花束が置かれていた。


「これは……」


エリオル王太子の膝の上で、ぎゅうと抱きしめられる。


「遅くなってすまない。そして、この世界をすくってくれて、ありがとう」


私の鼓動は高鳴る。


「宝石が戻ったら、君に言いたかったことがある」


ポケットから取り出した箱を開けると、美しいエメラルドの指輪が見えた。


「この世界が救われても、僕には永遠に君が必要なのだ。例え生まれ変わっても異世界に君を探しに行くだろう」


エリオル王太子は、薬指に緑の輝きを湛えた指輪をそっとはめてくれた。


「やっと宝石が戻った。はれて君にプロポーズできる。僕と生涯を共に歩もう」


私は溢れそうな涙を必死に堪える。


「もちろん、ずっとそばにいます」

「うん?よく聞こえないな」

いつもの意地悪な笑顔で見つめてくる。


「二度は言いません!」


すると突然、顔が近づいて心臓が跳ねた。

頬にくちづけが落とされる。


「期待したか?」

「〜〜〜っ!期待なんてしません!」

「ほう?無欲だな?」


(全く!すぐからかう!)


私のムッとした顔を見て、エリオル王太子は意地悪を隠さずに言う。

「僕は欲深いからな。期待していいぞ」


髪の毛をひと束掬い上げて、くちづけを落とした。

そして、唇をそっと指でなぞられる。

「ここは式まで取っておくといい」


私は式まで心臓が保つかとても心配になった。

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