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王宮へ帰ろう。

緊張で張り詰めた空気の中、グノーシスは、くましゃんから取り出した随分とボロになった紙を広げた。


「ぐう」と大神官が唸った。

エリオル王太子は汗ばみながら、切っ先を僅かに上げる。



広げた紙は、ところどころ掠れて良く読めない箇所もあったが前後の単語から推測したり、良く見れば筆の跡が走っていたので理解は容易だった。


グノーシスは青い顔で言った。

「まず、これは契約書の様ですな。セイアン・ハーマインとありますから……これはこの国が統治されるよりももっと以前、青銅の大戦で失われた、かつての時代の初代国王の御名ということに…」

「おいおい、勘弁してくれないか。……2000年は昔じゃないか。何年生きているんだ、貴様は」

エリオル王太子は剣を些かも下げずに言う。

汗が頬を伝う。


真剣となればかなりの重さだ。

片手で緊張を解くことなく、優奈を守りながら切っ先を大神官に突きつけ続けた。


「【何歳なのかも分からない】って【精霊と存在は違うけどこの世界ができた時からいる】【神様だったけど、神様じゃなくなったモノ】って言ってる」

花梨が精霊の言葉を吸い上げて伝える。


「おい、そこの神官、気を抜くなよ」

「もとより承知です」


グノーシスは生唾を飲み込み読み上げた。

「・宝石の輝きが失われた時、神殿が異世界の女性を召喚するものとする。

・召喚した女性は生贄として捧げられる。

・捧げられるまでの間、聖女の名の下、王太子の婚約者として国の神格化に努めることとする。

・聖女に関することは神殿側の管轄として政治と分断しなければならない。

・信仰と政治はお互いを不可侵とする


……とまあ、こんなことが書かれておりますな」


グノーシスはふうと一息ついた。


「ばかな。そんな大昔のこの国のものではない契約に今まで踊らされていたのか、我々は。道理で聖女について、全てあやふやなわけだ。城には文献も何もほとんどないからな」


「生贄…」

未だ訳がわからない私は声を震わせた。


エリオル王太子は切っ先を下ろして言う。

「そこの神官、ヘイリーと言ったか。おくるみにでも包んで王宮に大神官を連れてこい。赤子を縛るわけにもいかんからな。女でなければ大丈夫だろう。衛兵はその周りを囲え。城に戻るぞ」

そう言ってから私を立たせてくれた。


「ユーナ、大丈夫かい?王宮に、帰ろう?」

エリオル王太子は疲れた笑顔を近づけた。


神殿から王宮に着くまでエリオル王太子はずっと警戒して、ぴったり私に付き添った。


花梨はグノーシス伯爵に護られていた。


晴れることのない気分で振り向いた神殿の寂しさを私は生涯忘れないだろう。





王宮の応接室で、グノーシス伯爵と花梨、私の三人。

なんだかすっかりお馴染みの光景な気がする。

引き続き滞在を許されていたリノーアが2杯目のお茶を運んでくれて、私は口をつけた。


大部分はグノーシスが要約した話を聞かせてくれたが、ところどころ花梨も精霊から聞いたという、この世界のからくりを聞かせてくれた。


「聖女は、大神官を産むための存在に過ぎないのですね」

私はぼたぼたと流れる涙を拭わなかった。

「そう、しかもおじいちゃんを産むわけだからさ、私たちの体は無事じゃないわよ。精霊から聞いた話を思い出すだけで吐き気がするわ」

花梨は口を押さえた。

「思い出す?今はなんて言ってるの?」

「それがね、神殿から出たらコントロールできるようになったみたい。今はミュートにしてる」

恐らくそれは神殿の気の流れでコントロールしやすくなったからなのかもしれなかった。

「今日は久しぶりに眠れそう」

と言って少し笑っていた。


「でも良く分からないんだけど、なぜ聖女に力を与えるのかしら。むしろ花梨みたいに厄介かもしれないのに」

「厄介とか言うな。お陰で助かったのに」

ごめんごめんと言って花梨に謝った。

「【大神官は元々神サマだから、受け入れる器にも神聖な気が宿っていないと受け入れられない】んだって…キショ…」



「失礼する」

エリオル王太子が大神官の取り調べから戻ってきた。

ため息交じり、どかっとソファに身を持たれた。


「ネンネの時間らしくてな、ヘイリーがミルクをあげて寝かせたんで戻ってきた」

みんながキョトンとする。


「ああ、そうそう、その大神官から少しは話を聞けたんだが……」


エリオル王太子によると、喚いて落ち着くまで、かなりの時間を要したらしい。

このまま自分がいなくなれば宝石は二度と戻らないぞと脅し、優奈がダメなら花梨を寄越せと言っているそうだ。


「勿論断固拒否したさ。今の世の中生贄だなんて冗談じゃない。宝石が戻らなければそれで結構と言ってやったさ。あんな昔の今はもう存在しない国との契約、僕たちには何の関係もない話だからな。そしたらなんて言ったと思う?」


それならば今の人間は何が一番困るのだ、とそう聞いたのだそうだ。


「元々、国王陛下も僕も異世界の聖女に頼ることは良しとしていなかったからね。それに、国民が困れば何とかするのが僕達の手腕だろう?」


聖女について今まで口出しできなかったが、生贄というなら話は別だとエリオル王太子はその姿勢を見せたらしい。

大神官は愕然としてそのまま機嫌が悪くなり、お昼寝タイムに突入したようだ。



「でも不思議なのはティアナよね、なぜ無事なのかしら?」

「【あんなの嫌だと思ったらしいよ】はあ!?贅沢言ってんじゃないわよ!腹立つわね!」


【ぼ、僕に言わないでよ…!】

「何よ!?あんたに言ってないわよ!」

花梨は精霊とケンカを始めてしまったらしいが、私たちには精霊の声は聞こえないので花梨だけが何もない空間にブチギレているようにしか見えない。


「ねえ花梨、ティアナの後私たちが二人呼ばれた理由は?」

「【それは大神官にも分からないよ】【ユーナとカリンを呼んだのは僕達だから】…うそでしょ?」


精霊によると、

本来であれば、大神官によって失われた宝石の輝きは大神官によってのみ戻せる。

聖女はただの生贄であり大神官を産むための器に過ぎず、そこに聖女の力は関与しない。


だが、今回は大神官が戻そうとした宝石の輝きをティアナが横取りしたので、輝きを取り戻すには今こそ聖女の力が必要だからと言うことらしい。


「【ユーナの闇の力でティアナから輝きを取り戻して、カリンの光の力で宝石に戻す】んだって」

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