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「そのライン、越えたら殺します」



長い間、戦いが行われることの無かった地で狂気を孕んだ言葉を大勢に投げ掛けたのは青年とも言えない少年だった。


死人の様に青白い肌。暗く深い瞳。絵の具をグチャグチャに掻き混ぜたかの様な髪。それを一纏めに縛っているのはボロ切れ。



中性的に整った顔立ちで、何処か退廃的とした雰囲気を持った美少年。

その手には、どれ程の血を浴びたのかもう分からない大剣を持っている。



そして、大軍の眼の前には地を切り裂いたかの様な亀裂が一筋。


自然現象にしては不自然な程綺麗な断面。まるで、剣によって切られたかの様な。



大軍は怯んでいた。たった一人の少年に。


広い平原でたった一人で、全てを殺すと決めた眼をしている少年に。




少年は最初、何も言わなかった。ただ、大軍の眼の前に亀裂を作っただけ。


普通はそれぐらいじゃ怯みはしない。脅えはしない。

現に、その亀裂いやラインを越えた者は何十人といた。しかし。


しかし、だ。


そのラインを越えた者全て斬り刻み業火で灰にした、目の前で。


斬り刻まれた後から吹き出す鮮血さえも、地に染みることなく全てが蒸発し、固形物は風に攫われる存在と成り果てた。



そんな少年が、言ったのだ。




"そのライン、越えたら殺します"と。呑気な者はこう思っただろう。もっと早く言え、言葉にしなくちゃ分からないと。


少年は嗤っていた。



見ていた者は動けない、が。後方の者は全く状況が分からなかった。


そんな惨状を理解できない者らは、とっとと進軍しろと喚いた。

元々、強制的に参加させられて徴兵たちだ。作戦を聞いた限り、進軍を止める理由が見当たらない。前の方で何か起こっている気配はあったが、そんなの誤差程度だろう。そう思った。


早く進めと、前の者を押す。それでライン(・・・)を越えてしまう者が出てしまう。


それが止まらなくなるのに、時間はかからなかった。押すたびに質量が軽くなっていると気がつくのが遅すぎた。



もう、少年に慈悲の心のは残っていなかった。

憎悪を宿した眼で睨み、処刑宣告を下す。




「…………全員、死ね」



少年は、荒れ狂う戦神の様に全てを殺した。


ある者は凍り、ある者は四肢が腐れ、ある者は潰された。



最後は全てが塵となった。何人かは逃げだせたが、大抵は致命傷を負っていて逃げ切る前に力尽きた。




結局、自国に帰り着けた者は一人だけだった。





大軍計二千ものの内、生き残れた者が一名。



それを成した少年の名前は。



魔導剣士"悪夢"アトラスこと、アトだった。





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