5話 ルコと?
朝食を食べ終え部屋に戻り、作った百%ポーションをルコに渡し飲ませる。
「あっ、苦くないです。美味しいです!」
俺も飲んでみたが、百%ポーションは天然水みたいで普通に美味しかった。
いつか味の付いたポーションとか作ってみようかな?
ルコがポーションを飲み終わるのを待ちながら、どんな味にするか考える。
そろそろ生産で、お茶、野菜、果物、薬草などの種なんかを作って、育てるのも良いかもな。
石で植木鉢を作って、収納に入れて育てればいい。
宿は前に十日延長したので、今日を含めて後十一日泊まれる。
「主様飲み終わりました。この後は、お買い物ですか?」
「うん。とりあえず、ルコの服を買いに行こう」
二人で服を買いに行く。
離れるといけないので手を繋いでおく。
町の物が珍しいのか、あっちに行ったり、こっちに行ったりで、服以外にも、あれが欲しいと言われて、俺はどんどん買っていった。
食べ物も買っていたので、朝ごはんが足りなかったのだろう。
服屋では、定員さんに可愛らしい恋人さんですね。と言われた。
買い物が終わった時には、手持ちの金が、あと少しになっていた。
宿に戻り、買った物を収納に入れ、ルコの着替えを部屋の前で待つ。
着替えてくれと言ったら、いきなり服を脱いだので慌てて外に出た。
「主様、着替え終わりました」
着替えが終わりルコが部屋から出てきた。
今の服装は、ルコの戦闘スタイルに合わせて動きやすい服にしている。
冒険者は、一年中働いている。
依頼で亡くなる冒険者が一番多い季節は冬だ。
今は五月十四日で水の日だ。
俺が地球で亡くなったのは、十一月だったから約半年くらいのズレがある。
時間の経過も違うかもしれない。
「よし。じゃあ、冒険者ギルドに登録しに行こう」
☆
宿を出て、冒険者ギルドに向かいルコの登録をする。
今は十一時半近く。
今日は冒険者はいないみたいだ。
明日の朝が怖いなぁ。
ビーナさんの所に行く。
「こんにちは、ビーナさん。この子の登録とパーティー申請をしたいんですけど」
「こんにちは! ルコと言います。主様の番です! よろしくお願いします!」
ルコが頭を下げて、そんな自己紹介をした。
もしかして……
俺はあの夜の事を思い出した。
俺と一緒に来ないか? →お前を妻にする事にした。
手を掴んでくれ→俺から離れるなよ。
これが原因か!
ビーナさんも驚いている。
そして、何故か俺をジト目で見ている。
しかし、そこは流石に、屈強な冒険者達の相手をしている受付嬢、いつもの営業スマイルに戻り
「はい。登録ですね。その前に、お二人ともこちらの水晶に手を置いてください」
かなり怪しまれているが仕方ない。
何も悪い事はしていない。
先にルコが、後に俺が水晶に手を置く。
(何もなかったわね。この女の子は魔族かしら? それにこんなに可愛い子に主様なんて呼ばせてるから疑っちゃったけど、特に何もないなら問題ないわね)
「ありがとうございます。では、ルコさんはこちらの紙に名前と年齢を記入した後、今度はこちらの水晶に手を置いてください。戦闘系のスキルがあるか調べます。戦闘系のスキルがないと冒険者になれませんので注意してください。アストさんはパーティー名の方をこちらに書いてください」
パーティー名何にしようかな?
と考えているとルコから念話が入った。
:(主様、私の年齢どうしましょう。主様と同じで
いいですか?)
:(そうだな。魔族は成人してからは、外見はそんなに変わらないから二十でいいだろう)
俺もルコも書き終わりビーナさんに渡す。
パーティー名は『星の集い』にした。
ビーナさんからルコにギルドカードが渡された。
俺のギルドカードも更新してもらいパーティー名とメンバーの記入をしてもらう。
メンバーは後三人だが、もうひと枠入るな。
「ビーナさん、メンバー枠の後一人って誰を登録するんですか。確か一パーティー五人までですよね?」
「そこは主に街の門番かギルドの人を登録します。何かあった時に連絡するための人ですね。よろしければ私を登録しますか? この町の門番さんでもいいですけど」
「じゃあ、お願いします」
名前の横の丸を押すと相手に繋がるみたいだ。
その時、ルコの名前が光った。
横の丸を押す。
「主様、聞こえますか? これ凄いですね」
「あぁ、普通に声が聞こえてるよ」
ルコは俺の目の前で通話をしている。
:(ルコ、ギルドカードでの連絡は周りに誰かしらい る時にしよう。戦闘時や普段は念話で、それと念話の事も秘密だ)
:(わかりました! 秘密です!)
登録を済ませた後、依頼ボードの方に移動する。
とりあえず、Fランクのクエストを三つ受ける。
ギルドを出て弁当を買い町の門を出る。
その時、門番が声をかけて来た。
「おう、嬢ちゃんじゃないか無事に冒険者登録できたみたいだね。君は、数日前にこの町に来た、えーと」
「アストと言います。こっちはルコです。よろしくお願いします」
「あぁ、よろしく。俺はモルクだ。元Cランク冒険者だ。歳で体力がなくなってきたから引退したんだ。これから依頼か? 気を付けろよ」
「はい。行ってきます」
「行ってきまーす!」
森までの道を少し進んで、転移を使い森の近くまで来た。
森に入る前に昼食にする。
魔物討伐はルコに任せて、俺はルコの装備を作っている。
ルコは体術スキルを持っているため、武器は自分の体だ。
主な攻撃方法は脚を使った、雷を纏った蹴りだ。
俺は、錬成術のスキルを習得し、以前作ったミスリルをブーツ、ガントレットの形にしている。
型はできたから後は、星魔法の印で――
・サイズ自動調整
・偽装、鉄製
・自動修復
・使用者制限ルコ
・装着者の魔力を使用し空中に足場を作る (ブーツのみ)
の効果を付ける。
「ルコこれを付けてみてくれ。不具合があったらすぐに言ってくれ」
作った物をルコに装備させる。
シャドーをしたり、跳んだり、空中に立って見たり。
「特に問題は無いみたいです。ありがとうございます! 主様!」
ルコの装備を作り終えたら、森に入り、地図と鑑定を使い依頼品を採取する。
ルコには、魔物や獣を倒してもらっている。
「主様、ゴールドラビットを仕留めました!」
そう言って、ルコが金色のうさぎを持ってきた。
[鑑定]
『ゴールドラビット』 討伐ランクF
毛皮が金色のうさぎ。
遭遇率は低く、逃げ足が速いため、捕まえにくい。
毛皮も肉も高値で売れる。
「良くやったルコ! 今日は夕食たくさん食べていいぞ」
「わーい! 主様大好きです! また、狩ってきますね」
地図で魔物やお互いの場所も分かるし、変化があるから気配を消して狩っているのだろう。
雷を纏った蹴りがいきなり背後から襲って来るのか。
考えると怖いな。
ルコが狩ってきた魔物と獣を俺の収納に移す。
現在時刻は午後の三時だ。
「ルコそろそろ戻ろう。誰もいない所に転移しよう」
「はい。わかりました」
転移を使ったため三十分で帰って来れた。
モルクさんに早めに戻ったと、挨拶をして、冒険者ギルドに向かう。
ちらほら冒険者がいるようだ。
「ビーナさん、依頼品の納品に来ました」
「あれ? もうですか? 早いですね。もう少し遅くなると思ってました」
「運が良かったのか、たくさん生えている所を見つけたんです。これ納品の品です。それと、狩ってきた魔物と獣があるのですが。どうすればいいですか?」
「魔物と獣ですか? ……もしかして、アイテムボックス持ちですか? とりあえず、解体部屋の方にどうぞ」
ビーナさんに案内されて解体部屋の方に行く。
結構広い、あと血生臭い。
「ネルガンさん、魔物と獣の解体お願いします」
「おう。じゃあそこらに出してくれ」
ネルガンさんと呼ばれた人は、筋肉ムキムキの四十代の人で茶髪だ。
収納から魔物と獣を出す。
「ボックス持ちか、冒険者では、珍しいな。ゴールドラビットもいるのか。一時間ほど待っていてくれ」
そう言われたので、ギルドの食堂で待っていようと思い部屋を出ると、ビーナさんに呼び止められた。
「すみません。アストさん、ルコさん、ギルドマスターの部屋まできていただけませんか?」
恐らく、アイテムボックスの事だろうな。
「はい。わかりました」
ビーナさんについていきギルドマスターの部屋の前までくる。
「オーリンさん、ビーナです。今よろしいですか?」
「ちょっと待ってください。……はい。良いですよ」
「失礼します。アストさん達もお入りください」
部屋に入るとソファーとテーブルがあり、明かりの魔道具もあった。
ここのギルドマスターはオーリンさんと言うらしい。
男性だ。
種族は、エルフだった。
金髪ロングで後ろで一つに縛っている。
俺が驚いていると――
「エルフは見たことないですか?」
「はい。初めて見ました」
「ふむ、あなたは、すごい魔力量をお持ちですね。三百年以上生きてきて、そこまでの持ち主とあったのは初めてです。私と同じ魔術師ですか? そっちの子は初めて見る種族ですね。鬼人族ではないですよね?」
他人の魔力量がわかるのか?
後で記録で調べる必要がありそうだ。
そして、ルコに関しては考えていた種族を言っておく。
「彼女は有角族といいます。あまり、多種族とは交流はしません。ここにいる理由は、察してくれると助かります」
「なるほど。それでここにきたのは?」
そう言ってオーリンさんはビーナさんに問いかけた。
「はい。アストさんがアイテムボックス持ちでしたのでお連れしました」
「そうですか、それはそれは、とりあえず、椅子に座ってください」
椅子に座る。
オーリンさんはなんだか嬉しそうだ。
「やっぱりアイテムボックス持ちは珍しいんですか?」
俺がそう問いかけると――
「そうですね。私も使えますが、使える方は少ないと思いますよ。それに、アイテムボックス持ちは大体商人になったり、王族、貴族の方達に仕えたり、色々と重宝されるのであまり変な扱いは受けないですね。冒険者なんていつ死ぬか分からない職業には付きませんね」
まぁ、そうだろうな。
「そこで! あなたにお願いがあります。ここで職員になって働きませんか? 給料などもかなり上乗せさせていただきますよ」
そして、やっぱりスカウトか。
「すみません。もう行商人として登録しているんです。それに、俺は仲間と旅をしたいと思っているので。いつかエルフの住む所にも行ってみたいんです」
「そうですかー。やっぱりダメでしたか。まぁ仕方ないですね。あーでも、荷物が多い依頼とか受けてくれると助かります。それとエルフの住処に行くのなら私の故郷を教えるので行く事になったら連絡ください。私からの手紙を持っていれば歓迎されると思いますので。今ランクは、……Fですか。では、Eに上げてしまいますね。ビーナさんお二人をEランクに上げてください。実力なら心配しなくてもいいと思います」
「わかりました。では、アストさん、ルコさん、もう一度受付までお願いします」
ギルドマスターの部屋を出る。
「なんだかどんどん話が進みましたね」
ルコがそんな事を言った。
「アストさんを見てテンションが上がっているのでしょう。決して男色と言うわけではないですよ。同じアイテムボックス持ちで冒険者、保有している魔力量も多い。共通している所が多いからだと思います」
ビーナさんはそう言った。
俺とルコは受付でビーナさんにギルドカードを出して更新してもらい、依頼の報酬と魔物と獣のお金をもらう。
D、E、Fランクの魔物とゴールドラビットで全部で銀貨十二枚だった。
☆
「ルコ、宿で夕食を食べよう。約束通り、今日はたくさん食べていいぞ」
「やったー! 主様、ルコ全部食べたいです」
「食べ物が勿体無いから残す事はするなよ」
冒険者ギルドを出て、ルコと話しをしながら宿に帰る。
宿に戻り、ご飯を食べながら、明日の朝の商品を考えた。
ルコは大銅貨一枚分のご飯を食べた。
流石に全部は無理だったようだ。
そして今、ルコは初めて酒を飲み。
酔っている。
俺が止めなかったらもっと飲んでいただろう。
ルコに肩を貸して部屋まで連れて行く。
明かりがないので部屋は真っ暗だ。
ベッドに寝かせたら、腕を掴まれて引っ張られ体制を崩して、ルコの上にかぶさった。
「主様、ルコは可愛くないですか? ルコじゃダメ ですか?」
誘惑には勝てなかった。
明日の朝、起きれるかな?
読んでくれてありがとうございます。
次回は10月2日の18時に投稿です。