表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
星人転生–星の能力で自由な?異世界生活–  作者: 尾北ルイ
ソナヤ町
19/21

14話 領都到着?

この作品を投稿して、1ヶ月がたちました。

PVは2660越え、UAは620人超えです!

ありがとうございます!


星人転生、前回は、

アスト「閑話を二つ挟んだんだよな」

ルコ「本編はカーナちゃんが主な話でしたね!」

カーナ「ありがとうございます!それと、よろしくお願いします!」

 

「あー! エドルド! それは俺が、大事に取っておいた肉だ! 返せ!」

 そう言って、フィンさんはエドルドさんが、箸で掴んでいる肉を箸で奪いにいった。

 箸はこの世界の住人にも知られていて、使える人も多いそうだ。


「ふん。早い者勝ちだ。それに、まだたくさんあるだろう」

「確かにそうだが。これはそう言う問題ではない!」

 確かに、自分が大事に焼いた物だから、分からなくもないが、その内喧嘩にならないよな?


「皆さん! 追加のお肉持って来ましたよ!」

 ルコが追加のお肉を持って行った。

 ちなみに、あのテーブルは炎の剣の皆さんがいる。


「おっ、ルコちゃん、ありがとうなー。エプロン姿も似合ってるよ」

「フィンさん。肉と野菜が焼けたよ」

 グミルさんは、少し焦げてしまった肉と野菜をフィンさんの皿の上に乗せている。


「あの? 飲み物ってお代わりしてもいいですか?」

「どうぞどうぞ! ジュースは飲み放題です! 遠慮せず!」

 ホミルさんは、飲み物のお代わりをルコに確認している。


「アストさん。アストさんは、リンゴジュースかオレンジジュース、どちらにしますか?」

 カーナちゃんがジュースをどちらにするか聞いてきた。

 残念だが、俺はどちらでもなく。


「俺は、緑茶で頼むよ」

「お茶ですか。わかりました! それにしても、ボタンを押すだけで飲み物が出てくる魔道具なんて、すごいですね! このテーブルも、そのまま料理ができるなんて、私こんなの初めて見ました!」

「カーナ、私のも頼む。リンゴジュースで」

 ユーミルがカーナちゃんにリンゴジュースをリクエストした。

 お前は動いた方がいいんじゃないのか?

 というか、ルコとカーナちゃんを見習え。


「はい! わかりました」

「カーナちゃん、三つは持てないから、このお盆に乗せていくといい」

 カーナちゃんにお盆を渡して飲み物を入れてきてもらう。

 あんまり無理はして欲しくないが、本人も楽しそうだ。


「おい、ユーミル。トングが近くにあるなら、お前も肉を焼けよ。さっきから食ってるだけじゃないか」

「私は食べる専門でいいのだ。料理ができない奴は、触らないのが正解だ」

 今回は焼くだけなんだが……。

 こいつ、ずっと食べる専門で通すつもりだな。


「主様! ルコのお肉はありますか!?」

「あぁ、たくさん焼いておいたから、誰も取らないから落ち着いて食べろよ」

「わーい! お皿に山盛りです! いただきます!」

 ルコが戻ってきて、勢いよく、皿に乗せてある肉を食べていく。

 だから、もう少しゆっくり食べろって。

 誰も取らないんだから……網に乗って無い肉以外。


「飲み物持ってきました。どうぞ」

「ありがとう」

 カーナちゃんからお茶を受け取り、俺も肉を食べる。

 焼肉なんて久しぶりだな。

 そういえば、しゃぶしゃぶもしばらくやってないな。

 近いうちにやろう。


 俺たちは今、領都に向かっている。

 今いるのは馬車の外……ではなく、俺が作った改造馬車の中。

 そこで、皆で焼肉をしている。

 馬車と言っても、馬はいない。

 イメージは、小型トラックの荷台の部分がトンネル型で布を被せた感じだ。

 出入り口は三つ。

 一つ目は助手席側で玄関に繋がる。

 二つ目は運転席側で二階の玄関に繋がる。

 三つ目は後ろで、ここは訓練場に繋がっている。

 しかもこの訓練場、草原や、水場、凹凸の激しい岩場など、様々なフィールドに変える事ができるという多機能の訓練場である。

 エドルドさん達にも頼んで、カーナちゃんの相手をしてもらっていたりする。



「それにしても、アスト。お前、また凄い物を作ったな。何回か、貴族の屋敷に依頼で行ったことがあるが、そこよりも快適なんて驚きだ。この改造馬車の中は、見た事も聞いた事も無い魔道具が多くていい経験になる。つーか、本当に、お前、何者だ?」

 エドルドさんが隣のテーブルからそんな質問をしてきた。

 他のメンバーも気になっていたのか黙って俺の返答を待っている。

 うーん、神様のミスで異世界から来た。

 しかも、面倒な仕事を押し付けられて、とは言えないよな。

 まぁ、そこは言わずに、目的だけ言えばいいか。


「この世界を守るために、最近産まれた、凄い魔法使いです。すみません、説明が難しくて。俺も、どう説明していいのか分からないんです」

「世界を守るってどう言う事だ? それに、最近産まれたって言うのは?」

 今度はフィンさんが質問してきた。


「うーん。簡単に説明すると、ある所で瘴気と呼ばれる、生き物を住めなくする空気が発生していて、放って置くと、この世界を飲み込んで住民が死んでしまうんです。今は、出来たばかりで、精霊達が抑えてくれていますが、瘴気を取り除いて、元の状態に戻す事ができないみたいなんです。そこで、この世界を守る為に、数週間前に、俺が誕生したんです。こんなところですかね」

 ルコとユーミルは、俺の話を聞かずに、肉を食べている。

 炎の剣の皆さんとカーナちゃんは驚いているようだ。

 みんな、俺の方を向いて、箸が止まっている。


「ルコさんとユーミルさんも、アストさんと同じ何ですか?」

 最初に口を開いたのはホミルさんだった。


「違いますよ。ルコは、怪我をしている所を助けたんです。ユーミルは、スーラ様の縁者です。聖女と同じような事ができます」

 さすがに、魔物とは言えないのでそこは言わずに、真実を少しだけ言う。


「なぁ。それ、あたしらに言って良かったの? もしかしたら、あんたを裏切るかもしれないよ」

 今度はグミルさんが聞いてきた。


「大丈夫ですよ。その為に、皆さんと契約までしているんですから。今さら、俺を裏切っても特がないでしょ? まぁ、立ち塞がる障害は、取り除いていきますけどね」

 戦争を仕掛けてきそうな国とか。


「なるほどな。俺達に関しては、もう手を打たれているわけか。こりゃ参ったな」

 肉を食べながらそう言うフィンさん。


「こっちから聞いたんだ。何か協力できる事はないか?」

「ありがとうございます。エドルドさん、今も充分、協力してもらっているんですよ。瘴気に関しては、何もできないので、何か気になる事が起こったら教えてください。それで充分です」

「そうか。わかったよ。基本は、お前の作った魔道具の試験をしながら冒険者の活動。俺たちで対処できない事が起きたら連絡する。皆もこれでいいな?」

 エドルドさんが他のメンバーに確認する。


「俺は異議なしだ。魔道具に頼るのは危ないが、活動の範囲が広がるのは冒険者として、願ってもない事だからな」

「あたしも賛成!」

「もちろん、私も賛成です!」

 全員賛成のようだ。

 さてと、改めて話がまとまった所で


「皆さん。お酒はどうですか? ワインですが、かなりの自信作です」

 この日は、焼肉をしながらワインを飲んで一日が終わった。

 明日の昼前には領都に到着するだろう。

 あっ、もちろんカーナちゃんには、お酒は飲ませてないですよ。


 ☆


「ふん♪ ふん♪ ふふん♪」

 朝、起きて皆の朝食を作ろうと、厨房に行くと、グミルさんが鼻歌を歌いながら、すでに朝食を作っていた。

 炎の剣の皆さんには、食料庫の中の物は、自由に使っていいと言ってある。


(グミルさんって、料理できたんだ)

 俺は、驚いていた。

 てっきり、料理を作るのは、妹のホミルさんの方かと思っていたからだ。

 もしかして、ホミルさんてユーミルと同じで料理ができないのか?

 見た目は、ほんわかとしていて、何となく保護欲を刺激されるんだが。

 というか、どうしよう……なんか、出て行きづらいんだが。

 どのタイミングで出て行こうか迷っていると、一人こちらに来る気配があった。

 ここは任せてみよう。

 俺は変化を使い、透明化する。


「ふぁ〜。なんか飲み物ないか? って、グミルが作ってたのか。すまん、てっきりアストかと思った」

 来たのはフィンさんだ。

 厨房の明かりがついていたのと、いい匂いがしたので、俺が朝食を作っていると思ったのだろう。

 ちなみに、厨房はリビングと廊下の両方から入れるが、両方ともドアではなく垂れ幕にしている。


「おはようフィンさん。あたしが料理するのは以外だった?」

「おはよう。まぁ、少し驚いたな。料理ができるとは聞いていたが、普段は宿かギルドの食堂だし、野宿の時は非常食だからな。何か手伝うか?」

「じゃあ、スープの味見をしてよ。昨日は皆お酒を飲んだから、朝食は消化の良い物で軽めにしたんだ」

 グミルさんて、物事を色々考えるタイプかな?

 もしかして、ホミルさんの方が直感で動くタイプ?

 後で聞いてみよう。


 そして、フィンさんはスープの味見をする。

「いいんじゃないか。普通に美味いぞ」

「そう。それは良かった」

 二人の放っている雰囲気が甘く感じる。

 早く結婚すればいいのに……。


「お腹すきました〜。今日の朝ごはん何ですか?」

 今度はルコが入ってきた。


「とりあえず、今できているのはスープだけど、もう一品食べるとした何がいい?」

「ルコは肉がいいです。後、ルコもお手伝いします。ところで、主様見ませんでしたか?」

 そういや、ルコもサリアさんに、料理教わってたな。


「アスト? いや、あたしは見てないよ」

「俺も見ていない」

 二人は見ていないと答える。


「そうですか。どこに行ったんでしょう?」

「この馬車の点検とかしてるんじゃない? 昨日、まだ納得が行ってない所があるって言ってたし」

「そうですね。早く作って、朝食を食べましょう」

「俺は特に何もできそうにないから待ってるよ。あぁ、飲み物もらっていくぜ」

 この後、ユーミルとエドルドさん、ホミルさんも起きてきたので、皆で朝食を食べて、領都に向かって出発した。


 ☆


「よろしくお願いします!」

 言葉と共にエドルドさんに勢いよく頭を下げるカーナちゃん。


「これも依頼だからな。俺の方も、いい経験になる。遠慮せずかかってくるといい」

「はい!」

 二人は訓練場に向かっていった。

 少ししたら、俺も運転席に行って出発しよう。


 あぁ、そういえば、今さらだが、エドルドさん率いる炎の剣の皆さんには、領都までの護衛依頼として、付いて来てもらう事にした。

 あれは、ソナヤ町を出発する前の事――



「なぁユーミル。俺まで行く必要があるのか?」

「当たり前だ。貴様も一応は当事者だぞ。何より、貴様が行かないと私が任務を達成した、という証明ができないではないか」

 朝食を食べた後、俺はユーミルに連れられて、教会に来ていた。

 ディアナさんに軽く挨拶をして、二人で祭壇の前に行き、お祈りする。

 しばらくすると、意識が離れて行くような不思議な感覚に襲われた。


 そして――


「あー、あー。聞こえるかな? こっちでは、初めましてだね。この世界の女神、スーラです。よろしく」

 姿は見えないが、声は女の人の声だな。

 こっちも自己紹介しておくか。

 それと言いたい事もあるし、ここで言っておこう。


「はい。初めまして、空部和也です。こちらではアストと名乗っています。よろしくお願いします」

 最初は丁寧に自己紹介したが、ここからは砕けた口調でいいだろう。


「それと、菓子食って、ジュース飲んで、ゲームばかりしてないで、さっさと召喚封印の方法を教えやがれ。このぐうたら女神」

 日本の事を知ったなら、絶対にその文化に興味を持つはずだ。

 しかも、仕事が忙しかったんだろう?

 ストレスも溜まるよね?


 ☆


「よっしゃー! ついに……ついに! この小賢しい中ボスを倒したぞー! 毒とか、スタンとか、面倒な攻撃ばかりしてきて苦労したな〜」

 私は今、RPGのテレビゲームをしている。

 苦戦した相手をギリギリで倒す。

 この達成感が堪らない!


 これは以前、あの迷惑な野郎を探している時に、地球の日本という所で見つけた物だ。

 最初は、こんなボタンをポチポチして、何が楽しいんだろう。

 などと思っていたが、やってみるとすぐにハマってしまい、ゲームや漫画、アニメにドラマ、映画などの文化に心を奪われてしまったのだ。


「上から押し付けられた仕事も終わったし、後は私の世界の復興と、あの野郎を探し出して処分すれば解決! あ〜。ちょっと疲れたからセーブして、気になっていたアニメの続きを見よっと」

 お菓子と炭酸のジュースの追加を準備して……ふぅ……至福だ〜。


 ん? ……この感じは……。


「スーラ様。お久しぶりです。ユーミルです。任務を達成したので報告に参りました」

 ユーミル?

 自分で名前を付けたの?

 それとも誰かに付けてもらったとか?

 でもこの声の感じは、あのフクロウちゃんだよね?

 やっべぇ……こっちの事、全然把握してなかったわ。

 空いた時間に、少し様子を見ておけば良かった。


「うん。おつかれ〜。無事にたどり着いて良かったよ」

 そういえば、異世界人の召喚を封印する方法を、教えないといけなかったな。


「労いのお言葉、ありがとうございます。それと、本日は件の男を連れてきました。少々、無礼な所がありますが、ご了承ください」

 別に連れて来なくても良かったんだけど、わざわざ連れて来たんだ。

 これって、会話してくれって事だよね?

 今は部屋がちょっと汚いから、こっちには呼べないし。


「じゃあ、会話ができるようにするね。…………あー、あー。聞こえるかな? こっちでは初めましてだね。この世界の女神、スーラです。よろしく」

 まずは始めに短めの自己紹介をする。


「はい。初めまして、空部和也です。こちらではアストと名乗っています。よろしくお願いします」

 うん、うん。

 丁寧な青年だね〜。


「それと、菓子食って、ジュース飲んで、ゲームばかりしてないで、さっさと召喚封印の方法を教えやがれ。このぐうたら女神」


 ……な……なんか怖い。

 私は体が小刻みに震えていた。


 爽やかな声から、急にドスの効いた声になったんだけど。

 というか、何で私がお菓子とジュースとゲームを持っているって知ってるの?

 そんな事がわかる能力、あげてないよね?

 もしかして、この部屋が見えているのか?

 いや、ここでは私の力は絶対だ。

 声だけしか交信できないはずだ。


「この馬鹿者! スーラ様は忙しい仕事の合間に、こうして時間を取ってくれているのだ! 少しは感謝したらどうなのだ!」


 ユーミルちゃん……ファインプレー!


「まぁまぁ、ユーミルちゃん。今回は、君の熱意に免じて、少しの無礼は許そうじゃないか!」

「あ、ありがとうございます! スーラ様! お前も早く謝れ!」


 よし!

 話題を逸らす事には成功した。

 このまま、封印の方法を教えて、すぐに帰ってもらおう。


「そういえば、封印の方法だけどね」

「話逸らしやがったな」

 何か聞こえたが気にしない。


「星魔法の印で『異世界召喚を禁ず』とでも書いて、物に書いたり、地面に書いたりしてくれれば、問題ないよ。ただし、陣が小さかったり、効果範囲が広いと、無理矢理破られる事もあるから、そこは考える必要があるけど、問題なくやってくれると信じているよ」

 良し、伝えたい事は言えたから、早く帰ってもらおう。


「ありがとうございます。スーラ様」

「うん。じゃあ、そろそろ帰すから、また時間がある時に、教会によってね」

「ちょっと待ってく「聖女にも! 君たちの事は伝えておくから! それじゃあ、頑張ってねー!」

 二人との交信を切る。


「はぁ〜。なんか……仕事するよりも疲れたな。今日はもう寝よう」

 しばらくゲームはやめて、漫画とアニメだけにしよう。


 ☆


「お前は馬鹿なのか! スーラ様が寛大なお方だから許されたが、次あんな態度を取ったら、私が処分を下すからな」

 交信を無理矢理切られた後、俺はユーミルに教会で怒られていた。

 ディアナさんは、何があったんだろう? という顔でこちらを見ている。


 というか、処分を下すって。

 お前、俺に勝った事ないだろう。

 どう処分を下すんだよ。

 ハラスメントナッツでも持ってくるのか?

 はぁ〜……。


「わかった。わかった。今回は俺が悪かったよ。もう変な態度はとらないから」

 こう言わないと、ユーミルはおさまらないからな。


「本当だな? ひとまず、信じておくぞ」

 俺を睨みつけてそう言うユーミル。


「それよりも、ここでの用は済んだから、今度は冒険者ギルドに行くぞ」

 ユーミルの冒険者登録をしてもらう為に、冒険者ギルドに向かう。


「前から思っていたのだが、貴様はなぜそこまで冒険者に拘るのだ? 商人としてやっていくのだろう?」

 冒険者ギルドに歩いて向かう途中で、ユーミルがそんな質問をしてきた。


「確かに、基本は商人としてやっていくつもりだ。でも、冒険者のランクが低いのと高いのとでは、安全度が違うだろう? 戦いができない者と、戦いができる者。盗賊や強盗が襲うのは、弱い者だからな」

「まぁ、確かにそうだな。しかし、ランク上げは面倒だな」

「一応、ギルドマスターのオーリンさんに頼んで、Eランクからのスタートにさせてもらうつもりだ」

 冒険者ギルドに入り、ビーナさんの受付に行き、ユーミルの登録をお願いする。

 オーリンさんにも確認を取ってもらい、ユーミルのランクをEランクまで上げてもらった。


「ユーミル。いったん家に帰ろう。お昼御飯を食べて、午後からは自由行動にしよう」

「わかった。なら、私は午後から狩に行ってくる」

 ユーミルと共に家に帰り、昼食を食べ、俺は部屋に入り、エドルドさん達の居場所を地図で確認する。

 今なら電話をしても、問題ないな。


「エドルドさん。今、大丈夫ですか?」

「あぁ。今は休憩中でな。特に問題はない」

「そうですか。実は、数日後に、領都の方に行こうと思っているんです。炎の剣の皆さんに、護衛として付いてきてもらいたいなと思いまして」

 炎の剣は、現在この町の一番の冒険者パーティーだから無理かな?


「今、皆でこの電話を聞いているんだが、特に反対意見は出ていないから、その依頼は受けるぞ。実は、俺達も近いうちに、領都に行くつもりだったんだ。俺はその時、ランクアップ試験を受けるつもりだった。だから、今回のアストからの依頼は都合が良いんだ」

 ランクアップ試験か……Aランクの試験は、確かギルドマスターとの一騎打ちだったよな。

 領都のギルドマスターってどんな人だろう。


「そうだったんですか。それじゃあ、お願いします。出発はいつぐらいが良いですか?」

「俺たちは冒険者なんだ、いつでもいいぞ。今日は無理だがな」

「わかりました。では、二日後でお願いします。依頼内容の書いた紙は、ギルドの方に出しておきます」

「わかった」

 エドルドさんとの通信を切り、ギルドの方に依頼書を出しに行った。

 ルコとユーミル、カーナちゃんに二日後に出発すると伝えて、それまでにやっておきたい事は、やっておくように言う。

 旅に向けて、俺も準備をした。


 ☆


「時々、戻ってきますね」

「はい。気をつけて行ってらっしゃい」

「店は任せておけ。隣の坊主達も手伝ってくれるからな」

「お願いします」

 二日後のお昼を食べて、俺達四人は店を出た。

 炎の剣の皆とは、町の門で集合という事で伝えている。

 三人には、万能の腕輪と便利な魔道具を渡してある。

 ティリアちゃんも付いていきたいと言ったが、十二歳になったら必ず連れて行く、という事で納得してもらった。

 ディアナさんと教会の子供達も見送りに来てくれた。


 そして、門の所には――

「あれ? なぜお二人がいるんですか?」

 炎の剣の皆以外に、オーリンさんとクォーゼルさんがいた。


「私は領都の冒険者ギルドのマスターに、これを届けてもらいたくて」

「私もよ。きっと貴方の役に立つわ」

 そう言って、二人は手紙を渡してきた。


「わかりました。ありがとうございます。町長さんにもよろしくお願いします」

 この二人がいて、町長さんがいないという事は、仕事が忙しかったのだろう。


「迷宮に挑むのであれば、油断は禁物です。気をつけてください」

 元Aランク冒険者でギルドマスターの言葉だ。

 ありがたく受け取ろう。


「ありがとうございます。オーリンさん」

「領主様には、貴方が行く事が伝わっているから、面倒な商会があるみたいだけど、貴方達なら心配はいらないわね。頑張りなさい」

「ありがとうございます」

 お礼を言って、二人と握手をする。

 門番のモルクさんにも挨拶をして、俺達はソナヤ町を旅だった。

 その時、馬のいらない馬車を見せたら、驚かれてクォーゼルさんに少しだけ捕まったが、この後は、特に問題もなく順調に進んだ。


 ☆


「おっ。見えてきたな。あれが領都か」

 昼前になると、領都の外壁が見えた。

 そろそろ、放送をするか。


「皆さん。領都の外壁が見えてきました。あともう少しで、領都に到着します。忘れ物がないか確認してください」

 まぁ、ほとんどの荷物は、万能の腕輪の中にあるんだけどな。

 領都か……迷宮もあるし、楽しみだな。


 ☆


「皆さん。領都の外壁が見えてきました。あともう少しで、領都に到着します。忘れ物がないか確認してください」

 アストさんの声が部屋中から聞こえて、リビングの窓から出入りできる庭にいた私は、第一エントランスルームと呼ばれる、外との出入り口がある部屋に来ました。

 そして、ここの窓からは外の景色が見えます。


「懐かしいなぁ。ここら辺って、皆でピクニックに来たところだ」

 私は、目を瞑って、懐かしい風景に昔の事を思い出していました。


 ☆


「カーナ。魔法はね。こうやって使うのよ」

 お母さんは一番得意な風魔法を見せてくれます。

 私は目を輝かせて、すごいすごい、と言いながら、何回もやってと、お願いしました。


「ふふふ。カーナも、いつか魔法を覚えたら、一緒に魔物を倒しましょうね」

 お母さんは、嬉しそうに笑ってそう言います。


「カーナ! 次は剣だ! 剣はな、こうやって振るんだ!」

 お父さんは、剣の振り方を見せてくれます。


「やってみろ!」

「うん! ……えい! ……やぁ!」

 お父さんのマネをしてやってみますが、風を切る音は聞こえません。

 ぐるる〜。

 剣を振っていたら、お腹が鳴ってしまいました。


「そろそろ、お昼にしましょうか」

 お母さんはそう言って作ってきたお弁当を荷物から取り出します。


「わぁー! 美味しそう! ねぇ、もう食べてもいい?」

 私は待ちきれなくて、フォークに手を伸ばします。


「その前に、手を出して、綺麗にする魔法をかけるから」

 手を出して、魔法をかけてもらいます。


「さぁ、食べていいわよ」

「いただきまーす! ……美味しい!」

「母さんの作る料理は、いつも美味しいな」

「あら、ありがとう」

 お母さんは左に、お父さんは右にいて、私は真ん中にいます。


「お父さん! もう一回、ワイバーンを倒したお話して」

「おっ、いいぞ! 何回でもしてやる!」

 私は、お父さんの話す冒険譚が大好きでした。


「母さんが、魔法を撃ったら、ワイバーンの体勢が崩れたんだ。その時、父さんは強化魔法を使ってワイバーンの懐に潜り込み、目一杯の力を込めて グサッ と心臓を一突きにしたんだ。俺はその時、仲間の大切さを改めて感じたんだ。一人じゃあ、絶対に、討伐できなかった……」

 その後も、お父さんの話は続きます。


「その後からは、母さんと恋に落ちてな。なんだかんだあって、カーナが産まれてきてくれたんだ」

 そう言って、お父さんは、私の頭をくしゃくしゃと撫でてきます。


「そろそろ帰りましょう。また、ここにきましょうね」

「うん!」


 ☆


 ここには、何回も来て、何回も同じ話をしてもらって、きっとここは、私の原点なんだろうなぁ。

 不思議だなぁ……前の私だったら、絶対に泣いていたと思うのに、全然、涙が出ないや。

 むしろ、笑っていると思う。


「お母さん、お父さん。今は、ここにいる皆と一緒にいたいって、強く思うようになったよ。見ててね。今度は、私達が作るから」


 二人にも負けない冒険譚を!

 きっと今の私の目は、以前のように光のない目ではなく、キラキラと輝いていると思う。



次回の星転は

アスト「とりあえず、今後は店は安心だな」

ユーミル「そうだな。だが、ちょっかいをかけてきそうな所があるぞ」

???「あら、エドちゃん。また試験を受けにきたの?」

エドルド「今度は受かるさ。それといつまでも、子供扱いはしないでくれ」


読んでくださりありがとうございます。


あらすじにも記載されていますが、更新が日曜の週一回となります。


最近になって、何十年も続いている作品は、よく毎回毎回ストーリーを思いつくなぁ。

と思っています。

しかも、毎回面白い……。

エターナルにならないように頑張りたいと思います。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ