13話 家族
PV2000、ユニーク500人達成しました!
ありがとうございます!
前回は
アウサ「町長の妻です。」
バイエス「是非、領都にも店を出してくれ。」
ティリア「フライドポテトー!」
ルコ「天ぷらー!」
カーナ「私の事は?」
アスト「今回はカーナちゃんが主役みたいだな」
「お母さん?…………お父さん?」
お母さんとお父さんが帰ってきた!
でも、何も言ってくれない。
二人はどこかに歩いて行ってしまう。
「待ってよ! お母さん! お父さん! 私も連れて行ってよ! また話を聞かせてよ! またお弁当作って、魔物退治に連れて行ってよ!」
どうして止まってくれないの?
走ってるのに、どうして追いつけないの?
「待ってよ! 止まってよ! 置いてかないでよ!」
泣きながら、走りながら、そう言った。
でも、二人はいつまでも止まらずに歩き続けていた。
また……届かなかった。
☆
「待って! ……夢、だったのか……」
勢いよくベットから起き上がり、夢だとわかって、もう一度寝転ぶ。
「はやく、冒険者になりたいなぁ……」
私は涙を流しながら、親に会いたいのか、冒険者になりたいのか、よくわからない自分の願いを呟いて、もう一度眠りについた。
☆
朝起きて、歯磨きは歯ブラシがないのでせずに、生活魔法の洗浄と殺菌をかける。
殺菌の魔法は、たぶん菌の事を知っていないと使えない。
この世界の人々は、生活魔法の洗浄か使えない人は荒い布で磨く。
前者でもたぶん、充分いいのだろうが、主に貴族や魔法の使える冒険者くらいだ。
一般人は、荒い布で磨いた後、布を水で洗い再利用。
サリアさんとティリアちゃん、ウガンさんも荒い布で磨いている。
ウガンさんは生活魔法を覚えなかったみたいだ。
サリアさんは練習中らしい。
ティリアちゃんも魔法を使ってみたいと言ったので魔力操作を覚えさせてみた。
なんかルコがたまに雷魔法を教えているようだが、雷魔法って他の属性よりも難しいんだよな。
朝食は昨日の残りの天ぷらだ。
今日は、カーナちゃんに会いに行く予定だ。
カーナちゃんの承諾をもらったら、オーリンさんにも会って、カーナちゃんの仮冒険者登録をしてもらおう。
朝の九時までは店にいて、その後は落ち着くので店番をサリアさんとウガンさんに任せる。
ティリアちゃんは隣の教会に遊びに行っているようだ。
ユーミルは、ちょっと出かけてくると言って転移でどこかにとんでいった。
スーラ様とらやらに、会わなくていいのか?
気になったので地図で確認すると、森の方に向かっていた。
(まさか、あいつ自分に傷をつけた魔物に、仕返しに行ったな!)
俺はルコを連れて、隣の教会に行く。
ここ数日はカーナちゃん達は露店を開いてないそうだ。
ディアナさんは、朝、店に水を買いに来てくれている。
畑も時間ができた時に、俺が見に行っている。
子供達は、外で遊んだり、教会の掃除をしたりするようだ。
ディアナさんは普段は教会の掃除をしたり傷んだ部分を補修したりしているようだ。
「ディアナさん。おはようございます。いつも、お店に来てくれてありがとうございます」
「アストさん。ルコさん。おはようございます。隣にできて、すぐに帰ってこれるので買いに行けるんです。こちらこそ、ありがとうございます」
「今日は、カーナちゃんに用があってきました。カーナちゃん、成人したら冒険者になるつもりですよね。修行も含めて、俺の旅に同行させたいなと。最初が領都なので、少しつらいかと思いますが、連れて行こうかと」
「そうですか。本当は、私からもお願いしたいです。アストさんならルコさんを大切にされているので、カーナちゃんを預けても問題ありません。本人を呼んできますので待っていてください」
そう言って、ディアナさんはカーナちゃんを呼びに奥の方に行った。
「カーナちゃん了承してくれますかね?」
「わからないな。もしかすると、種族の事や他の子供達の事で、遠慮するかもしれない。でも、カーナちゃんには、もっと余裕も持って生きてもらいたい。だから、旅に連れて行ってあげたい、父親が帰ってこなかった事も気にしているはずだ」
話をしながら少し待っていると、ディアナさんとカーナちゃんがきた。
「あの? 私に話があるって聞いたんですけど?」
「あぁ。カーナちゃん成人したら冒険者になるつもりでいる?」
「はい。冒険者になってたくさん稼いでディアナさんやここにいる子達を少しでも楽にしてあげたいです」
「そうか。それは良い事だよ。とても良い想いだ」
やっぱり、自分の事は何も考えていないんだな。
「はい」
「でも、今の君が冒険者になっても、きっとすぐに無理をして死んでしまう。君のお父さんがそうだったように」
「え? どうしてお父さんの事を知っているんですか?」
「見た目が人族なのに、魔力量が多い君のことが気になって少し調べたんだ。お母さんの事やこの町に来た理由も知っているよ」
「そうですか。でも! 私は冒険者になりたいです! お母さんとお父さんみたいな、強くて、カッコ良くて、優しい冒険者になりたいです!」
泣きそうになりながら、自分が弱いとわかっていながら、両親の背中を、影を追いかけて……。
きっとカーナちゃんの目には、病で倒れた母親でも、帰ってこなかった父親でもなく、二人で一緒に魔物を倒し、自分達の武勇伝の話をしている記憶の方が、強く残っているのだろう。
いつか……ひょっこりと現れて……家族でまた一緒に魔物を倒して、魔法や剣を教えてもらう。
そんな……賑やかな光景が。
「カーナちゃん。俺達の旅についてこないか? 最初は領都だから、少しつらいかもしれないけど。でも、強くて、カッコ良くて、優しい冒険者になるには、努力と経験が必要だ。君がご両親を目標に、そして、さらに上に行くには、もっとたくさんの事を知って、考える必要がある。カーナちゃん。改めて言うよ。俺達と一緒に来ないか?」
「カーナちゃん! 行きましょう! 色んな所に行けば、美味しい物いっぱい食べれます!」
ルコは自分の楽しみを言った。
「カーナちゃん。私が冒険者になるのに反対したのは、あなたがすぐに死んでしまうと思ったからです。お母さんとお父さんを追いかけて」
ディアナさんも思っていた事を言う。
「ディアナざん。わたじ……ぅ」
「行って来なさい。そして、どんな旅をしたのか私やあの子達に聞かせてね」
「はいっ。いぎます。……行ってきます! 帰って来たら、必ずお話します!」
「はい。約束ですよ」
こうして、俺達の旅の仲間にまた一人加わった。
「アストさん。よろしくお願いします!」
「こちらこそ、よろしくね」
お互いに握手をして、ルコとも握手をして、カーナちゃんの登録やオーリンさんに話をするために冒険者ギルドに向かった。
ユーミルは森の中にいる。
やっぱり復讐しに行ったようだ。
冒険者ギルドに入り、ビーナさんにオーリンさんを呼んでもらう。
「ビーナさん、この子の仮登録をしたいんですけど、オーリンさんにも話したい事があるんです。今、話せますか?」
「少々お待ちください。確認してきます」
少し待ち。
「アストさん大丈夫ですよ。ギルドマスターの部屋にどうぞ」
ギルマスの部屋に通された。
「やぁ。アスト君、こんにちは。そちらの魔族の子も。そして、カーナちゃんでしたか? お久しぶりです。仮登録をしに来たと聞きました。ディアナさんの許可はもらったようですね。もう、迷いはありませんか?」
「はい! 大丈夫です! アストさん達の旅に、連れて行ってもらいます。ちゃんと修行をして、立派な冒険者になります!」
「そうですか。それは良かったです。私からも、仮登録の許可を出しましょう。ビーナさん彼女の登録をしてあげてください」
「ルコ。カーナちゃんと一緒にいてあげてくれ」
オーリンさんが、俺の方を見てきたのでルコも部屋から出て行ってもらう。
「わかりました!」
ビーナさん、ルコ、カーナちゃんが部屋から出て行き、俺とオーリンさんだけになった。
「アスト君、彼女の事、ありがとうございます。十五歳になったら冒険者として登録ができますが、かなり心配だったんです。旅に連れて行ってくれるのなら、しっかりと守って、ちゃんと育ててくださいね」
「はい。分かってます。それと、町長の事はどうしますか?」
オーリンさんも、考えているであろう事を聞いてみる。
「あなたは、どう考えていますか? 前に話そうと素振りを見せましましたが、ダメでしたからね」
「ただの意地だと思います。帰ってきたら、ぶん殴ってやろうと思っているんじゃないですか? アウサさんも気になっていると思います」
「やっぱりそうですよね。何とかして、訃報とカーナちゃんの事は伝えてあげたいです」
「それは、俺に考えがあるので任せてください」
「わかりました。だったら、えーと、……あった。これを持って行ってください。カーナちゃんのお父さんのギルドカードと武器です。迷宮で死んでしまったので、遺体はありませんが」
「わかりました。お預かりします」
部屋を出て受付に行くとカーナちゃん達も登録し終わったようで、嬉しそうにギルドカードを見ていた。
「カーナちゃん。ギルドカードはどう?」
「はい! 嬉しいです!」
「ちょうどお昼時だから、ここの食堂で食べて行こうか」
冒険者ギルドの食堂で昼食を食べる。
調味料をふんだんに使っているのか、前の塩味だけよりは美味しくなっていた。
「お昼を食べたら、寄りたい所があるんだカーナちゃんも一緒に来てくれ」
「わかりました。どこに行くんですか?」
「町長の家だ。ルコは先に戻ってくれ」
「わかりました!」
カーナちゃんと二人で町長の家に行く。
ユーガット辺境伯様は、今はこの家にいないようだ。
チリンチリン
鈴が付いていたので鳴らすと――
「はーい。あら、アストさん。こんにちは。そちらの子は?」
「こんにちはアウサさん。この子はカーナちゃんって言います。ウィムアさんに用があって来ました。今、大丈夫ですか? アウサさんにも聞いてほしいんですが」
「私もですか? 主人なら大丈夫ですよ。とりあえず中に入って」
「それでは、お邪魔します」
「お邪魔します」
家に入り部屋に案内された。
「どうぞ。これお水です」
「ありがとうございます」
水が出されたと、同時にウィムアさんが入ってきた。
「何やら、私たちに話があるようだが、何だね?」
「はい。驚かないでください。あなた方のお孫さんを連れてきました」
ウィムアさんは察しが悪いらしく
「孫ならうちにいるが」
という発言をしたが……
「違いますよ! あなた、あの子の……ゾムアの子供です」
奥さんの言葉で気づいたみたいだ。
「!? あいつのか! この子が娘か。あいつはどこだ! ゾムアはどこにいる!?」
俺の首元を掴み、詰め寄るウィムアさん。
「やっぱり、心配していたんですね」
「あいつは、わしの反対を押し切って冒険者になったのだ。喧嘩別れしたから連絡もよこさなくてな、今どこで何をしているかさっぱり分からん」
「アストさん。あの子は、今どこに?」
「……これを」
カーナちゃんのお父さんのギルドカードと、武器を机の上に出す。
「迷宮で死んでしまったので遺体はありませんが。ランクはBランクで、カーナちゃんとカーナちゃんの母親のために一生懸命だったと聞いています。とても立派な冒険者だったそうですよ」
ウィムアさんとアウサさんは泣いている。
「カーナちゃんと言ったかな?」
最初に口を開いたのはウィムアさんだった。
「あいつは、ちゃんと父親になっていたかな?」
「はい。とても強くて、とても優しくて、とてもカッコ良いお父さんでした」
笑顔でそう答えたのだった。
「そうか……そうか……」
この後はアウサさんも加わって、カーナちゃんはお父さん達の武勇伝を話していた。
「カーナちゃんはこれからどうするの? やっぱり冒険者になるの?」
アウサさんがカーナちゃんにこれからの事を聞いた。
「はい。冒険者になります。今はまだ、アストさんの元で修行しています」
「そうか。アスト君。孫を頼んだよ。本当は反対したい所だが、話を聞いて目を見て諦めたよ。絶対に孫を死なせるんじゃないぞ」
なんだか、凄い迫力があるウィムアさん。
「はい。お任せください」
「カーナちゃん。いつでも、会いにきてね」
「はい!」
アウサさんがそう言うと、カーナちゃんは嬉しそうに返事をした。
ウィムアさん達の家を出て、教会へ帰る。
「アストさん。今日はありがとうございました。これから、よろしくお願いします!」
教会の前で頭を下げてそう言われた。
「あぁ。この町を出発する時は連絡するから。それまでは、魔法と体術の基礎をやるぞ」
「はい!」
カーナちゃんを送り届け、星人の家へ。
「あっ、お帰りなさいアストさん。ちょっと作業場の方に向かってもらえますか?」
珍しく、サリアさんが困ったような表情をしている。
「何かあったんですか?」
「えぇ。実はユーミルさんが。それと、今日また、辺境伯様が来られましたよ。また沢山買って行ってくれました。領都の方でも早く店を出してくれとも言っていました」
言いづらそうにそう答えた。
「そうですか。ありがとうございます」
それで、ユーミルの奴は、今度は何をしでかしたんだ?
作業場に向かいながらウガンさんが巻き込まれてないか、何をやらかしたかを考える。
「おい。ユーミル今度は何をやらかしたんだ? ウガンさんを巻き込んでないだろうな」
そんな事を言いながら作業場の扉を開けると――
「ぅ……うぐぅ……ぐす」
ユーミルが泣いていた。
体や顔は壁と同じく、果汁でカラフルになり、なんだか粘液まみれ、粉まみれ、床には大量のナッツが散らかっている。
鑑定させてもらった。
[鑑定]
ミミックフルーツの実
ミミックフルーツという魔物からなる実
美味しそうな匂いを放ち獲物をおびき寄せる。
高級食材として扱われる。
果汁は、カラフルでジュースにしても美味しい。
これじゃない!
[鑑定]
ハラスメントナッツの実
ハラスメントナッツという魔物からなる木の実
衝撃を与えると実が爆ぜる。
威力はそこまでないためケガは負わないが、
実からは、小さいナッツや粘液、粉など何が出てくるかわからない。
何となく読めたぞ。
おそらく、リベンジを果たして、調子に乗ったユーミルは、色々と狩ったのだろう。
鑑定を使わずに。
帰ってきて作業場の机にフルーツと木の実を出す。
そして、ミミックフルーツのみ、鑑定をして食べたら美味しかったので、もう一つも美味しいだろう、と割って食べようとした。
しかし、それは、衝撃と共に爆ぜた。
机の上に置いた木の実は、その衝撃で連鎖的に爆ぜる。
そして……現在に至る。
「あー。おい。ユーミル。大丈夫か? 掃除はしてやるから風呂に入ってこい」
なるべく優しく声をかけてやる。
先に魔法をかけてキレイにしてやる。
「うん」
元気なく返事をして風呂に向かっていった。
魔法で作業場を掃除し終わるとウガンさんが入ってきた。
「あぁ。よかった。ウガンさんは巻き込まれなかったんですね」
「あぁ。ちょうどトイレに行ってたんだ。ユーミルの嬢ちゃん大丈夫か?」
「まぁ。何とか」
「そうか。それと飯ができたらしいぞ。ルコちゃんはもう食卓にいる」
「ありがとうございます」
ユーミルが風呂から出てくるのを待って、みんなで夕食を食べた。
みんなからおかずをもらって、笑顔に戻るユーミルだった。
☆
「お母さん! ……お父さん!」
また、行っちゃう。
伝えなきゃ!
強い人の弟子になって冒険者になるって!
私も旅に行くって!
「お母さん! お父さん! 私、旅に出るの! 二人よりも絶対に強くなって! カッコ良くなって! 誰でも助けられる冒険者になるから! 絶対に見ててね!」
お母さんとお父さんは初めて立ち止まって、こっちを向いてくれた。
二人の目は、謝っているような、心配しているような、驚いているような、期待しているような、きっと色んな想いを伝えたいんだろうなぁ、と私は思った。
だから、お礼を言おう!
私を産んで、育てて、ずっと心配してくれている。
そして、冒険する事を、好きにさせてくれたお礼を。
「お母さん! お父さん! 私を産んでくれてありがとう! 育ててくれてありがとう! 今度は私が! 二人の分まで冒険してくる! だから! 私の話を! 楽しみに待っててね!」
そう言うと、二人の口が動いた。
何を言ったのかわからないけど、嬉しそうに笑って、手を振ってくれた。
((ずっと見守ってるから、頑張れ、カーナ))
そんな返事が返ってきたような気がした……
うん……行ってきます。
読んでくださりありがとうございます。
次回の星転は
ユーミル「次回は私が主役だ!」
アスト「これまでのユーミルを書いた閑話だな。」
ルコ「ルコも出て来ますよ!」
アスト「ルコとユーミル視点か。
少しだけサリアさんとウガンさんがある
な。」
ユーミル「私の活躍ぜひ見てくれ!」
アスト「サブタイトルが似てるのが気になる。」
次回は19日です。