11話 仕事?
10月20日までに1話〜18話までまとめ及び、ストーリーの追記をします。
前回は
アスト「星人の家と名付けました。」
エドルド「珍しい木を森の奥で見つけたんだ。」
ルコ「主様!この子を助けてください!」
ユーミル「うわぁぁぁ〜〜〜」
俺たちは今、気まずい空気の中、夕食を食べていた。
正確には、俺だけ気まずい空気の中、夕食を食べていた。
というのも、ユーミルは俺だけを無視していた。
「ユーミルさん。たくさんあるので遠慮しないで食べてくださいね。アストさん、色々な調味料ありがとうございます。料理の幅が広がります。後、このお米というご飯、すごく美味しいですね」
サリアさんがユーミルに優しく声をかける。
「ありがとうございます。あっ、お代わりください」
ちゃっかりお代わりをもらうユーミル。
「確かに、これは初めて食べた。うまいぞ。それと今更だが、奴隷の俺たちが一緒に食べていて良いのか?」
ウガンさんが今更な質問をしてくる。
「えぇ。大丈夫ですよ。正直奴隷制度ってあまり好きじゃないんです。便利というのは、否定しづらいですが。というより、今後の事を考えると奴隷から解放したいんですよ。だから、たくさん食べて、働いてくださいね」
「任せとけ! ポーションと調理器具とかなら作れるからな!」
ウガンさんにも、家事魔道具を作ってもらおう。
「ウガンさん、もっと大きくて複雑な物作ってみませんか? 魔道具なんですが」
「魔力操作がレベル二しかないができるのか?」
「あぁ、大丈夫ですよ。必要なのは知識とコツと器用さですから。すぐにできるようになります」
「ふむ。ならやってみるよ」
「お姉ちゃんこれも美味しいよ」
ティリアちゃんは人参をユーミルにあげようとしていた。
「ティリア。好き嫌いはダメですよ。それは自分で食べなさい!」
「はい」
サリアさんに怒られたようだ。
「主様! サリアさん! 今日のご飯は美味しいですね。今まで食べたことのない味がします」
今までは、塩と素材の旨味を活かした味付けだったからな。
今回は、胡椒や生姜、ニンニクなどの調味料を使っている。
「じゃあ、お店に調味料は置くという事でいいですか?」
「あぁ。賛成だ! これは絶対に売れる。しかも他よりも安く売り出すんだ在庫は多くていいだろう」
話しながら夕食を食べ明日の予定を決めると、ウガンさんはまた作業場に、サリアさんとティリアちゃんは片付けに、俺とルコとユーミルは話の続きをする為、部屋に戻る。
「それで詳しい事を話してほしいんだが」
三人分の椅子を用意してそれに座って話をする。
「ユーミルさん! ルコにも教えてください! きっと力になれるはずです!」
ルコも参戦してくれる。
「というか、無視をするなよ!」
「ユーミルさん。ルコなんてお腹が空いたら何でも食べちゃいます。だから、大丈夫です!」
「ルコよ。それはフォローなのか?」
「違うんですか? 主様?」
「たぶん、個人のプライドの問題で俺たちにはわからないぞ。そういうわけだから、気にされてても困るんだが」
「わかった。話す。それと、先程は見苦しいところを見せてすまなかったな」
はぁぁ……参ったな。
でも、こういった時は、好きな話題にすると機嫌が直るんだよな。
「まずは、ユーミルの崇拝しているスーラ様について教えてくれ。どんな女神様だ?」
俺がそう言うと、落ち込んだ表情から一気に嬉しそうな表情になって
「スーラ様はとても偉大で、とても優しくて、とても思いやりのあるお方だ。ある時、私が仕事でミスをしても『時間はたくさんあるのだから全然大丈夫だ。少しずつ直していけばいい』と言ってくれたり、私が何か贈り物をすると何か返してくれたりと…………」
それからも暫くユーミルのスーラ様自慢は続き。
「まったくお前みたいに脅して、辱めるという最低な行為をする者とは大違いなのだ! 今後はこのような事がないようにするのだぞ!」
何故か逆に怒られた。
納得がいかない。
「もう充分わかったから。本題に入ってくれ。神の見習いが闇に堕ちたってどういう事だ? というか当事者である神様方は何してるんだ?」
「仕事をやり、評価されると世界を一つ貰える。そうすると見習いを卒業するのだ。しかし、たまに見習いのうちから世界が欲しくなり、暴走する者が出るらしい。もちろん、神々が押さえるので逃れる事はできないが、初めて逃げた者がいるらしい。今、必死で探していると言っていた。後、報告書の作成などで忙しいとか。すぐに見つからない理由は、様々な世界のシステムの一部だけを変えて、本体は別の世界に行ったらしい。それも、肉体を捨てて魂は他の生き物に入っているだとか。だから向こうも混乱して、見つけるのに時間がかかっているのだとか……」
「その変えられた一部というのは何だ?」
「それはだな。………という事だ」
まとめると。
・知性のある生き物が邪気にとらわれる様になり言動がおかしくなる。力も強力になる。
・大陸の一部を瘴気で覆い生き物を住めなくし作物を育たなくさせる。
・異世界人を召喚できるようになる。
今わかっているのはこんな所だ。
「最後のはまずくないか? 誘拐じゃねーか」
「あぁ。召喚がしほうだいの世界もあれば、そういう事は全くできない世界もあったらしい。ちなみに、召喚を封じる方法があるみたいだが教えてくれなかった」
「聞きそびれたんじゃなくてか?」
「聞いていない」
アストは確信した。
「伝え忘れたな」
「スーラ様の事だから、伝えなかったのは何か考えがあるはずだ。それと、大幅な変更はできないが、これぐらいなら、ちょっとしたバグとして認識されてしまった様だ。ちなみに、お前が選ばれたのは、逃げた者を探している途中で、本当にうっかり間違って死なせてしまったらしい」
ユーミルは自分の宗主がミスをしたのを受け入れたくないみたいだ。
「なるほど。だからこんな能力をね。ついでに『何かあったら任せた』というところか」
面倒な仕事を押し付けられた気分だ。
「あの……主様の能力で、その見習いさんがどこにいるとか分からないのですか?」
ルコがそんな質問をしてきた。
ふむ……試してみるか。
「……地図でやってみたが、ダメだ。その見習いは、この世界にはいないらしい。それにいくら見習いでも神様だからな。俺自身、神様じゃないから、そう言った事も含めて無理なのかもしれない。あっ、でも瘴気に侵された場所と、邪気に完全にとらわれそうな人ならわかるらしい」
「ほぅ。それは便利だな。それで、瘴気に侵されている場所はどこだ?」
ユーミルも同じ事ができるはずなんだが……。
もしかして、自分で調べるのが嫌いなタイプか?
「この大陸だと、ここから正反対の南東方面だな。しかもここと同じく、辺境だから人もあまりいない。さらに進行速度も遅い。というより、瘴気に侵された土地は、あまり脅威じゃない。この世界には、精霊もいるし、瘴気を取り除いて、土や植物を入れ替えればいいだけだから、すぐに治る。問題は人だ。こっちの方がよっぽど厄介だ。まだ、瘴気に侵された大陸の復興の方が楽だ」
「そうなのか。しかし、放っておくのもな。どうにかならないのか?」
元々、正義感が強いのか、スーラ様とやらの命令だから張り切っているのか、よく分からないが、一つ言えるならば、ユーミルは仕事を完璧にやりこなすという、責任感を持つタイプの人間、いや、魔物だな。
「この大陸だけなら今から行ってもいいんだけど、たぶん一晩でやって帰って来れるから。他の場所は時間を見つけて行くか。その大陸に行った時に先に治すとかでいいだろう」
「ふむ。わかった。それでいい」
「じゃあ、行くか。変化で透明化と流星化するぞ。日付が変わるまでに戻ってくるぞ」
三人で地図を確認し、変化を使い目的地に向かう。
目的地が見えると、近くに着地する。
木が枯れて、朽ち、土は黒くなりなんか不気味な雰囲気だ。
「うっ。なんか息がしづらいです」
「普通の人達なら死んでいるだろうな。俺たちだから大丈夫なんだ。ユーミル、聖魔法の浄化を頼む」
「了解した」
ユーミルに聖魔法を使ってもらい瘴気を浄化してもらう。
俺も生産で空気を生み出し、空変で浄化された空気と混ぜ合わせる。
「空気はこれで大丈夫だろう。あとは土と植物だな」
土は黒色から灰色っぽくなったが水気がない。
空中に浮いて、土を上から被せて混ぜる。
その後、雨の様にここら一帯に水を降らせる。
「ルコ、ユーミル、これをそこら辺に蒔いてくれ」
「わかりました!」
「わかった」
種や木の実を蒔いて土を被せて終了。
「終わったな。何とか日付が変わるまでに間に合ったな」
「終わりましたね。ルコ眠くなってきました」
「私もだ。転移で帰るのだろう?」
「あぁ。そうだが。まだ、帰れそうにないな」
何かがこちらに向かっているのだ。
おそらく、これは――
「精霊か」
「えぇ。私は風の大精霊の一人よ。先にお礼を言わせてもらうわね。ありがとう」
「木の大精霊の一人です。ありがとうございます」
「土の大精霊の一人。ありがとー」
ユーミルと同じ髪の色の少女と緑髪の少女と茶髪の少女が現れた。
「名前はあるけど言えない決まりなの、だから好きな様に呼んでちょうだい」
「わかったよ。瘴気の進行を止めておいてくれたのも君たちなんだろう。他の所でも止めてくれているのかな?」
「はい。でも、世界樹のない所は回復することができないので来てくれて助かりました」
「まぁ。一応、仕事? だからな。やらないといづれ困るだろう?」
「お礼はこんな物しかないけど、受け取ってくれるかしら?」
そう言って、綺麗な宝石を差し出した。
「これは?」
「精霊の力で作った精霊石よ。かなり貴重よ」
「わかった。受け取るよ。ありがとう」
「えぇ。それじゃあ、またね。また何処かで会うかもしれないけど。それと、他の精霊達にも貴方達の事は伝えておくわね」
「わかったよ。その内順番に回る予定だけど、何かあったら呼びに来てくれれば行くから」
「ありがとうございます。他の精霊達も喜ぶと思います」
コクコクコクコクと首を縦に振る土の大精霊。
「それじゃあ、俺達は帰るよ。これ、ありがとう」
「こちらこそありがとうね」
「ありがとうございます」
「ありがとー」
転移で部屋に帰る。
「主様。布団を敷いて寝ましょう」
「ルコ、今日はベッドを作ってみた。布団も作ったから町で売っている物よりもふかふかだぞ。明日、サリアさん達にも渡す予定だ」
「わーい! 主様の手作りです!」
「今日は俺は床に布団を敷くから、ルコとユーミルでベッドを使ってくれ」
「いや、私が床で寝よう。そのベッドは二人用だろう? なら私が床で寝ればいい。」
「三人で寝ればいいです! それで問題なしです!」
「じゃあ、三人で寝よう! ユーミル奥の方に行け」
「じゃあ、次が主様で私ですね」
「よし。それでいこう」
(ルコはなんていい子なんだ)
戸惑うユーミルを奥の方にやり、俺、ルコの順に寝転び眠りにつく。
翌朝、星人の家でサリアさんの作った朝ご飯を食べて、昨日作った家事魔道具を二人に試してもらう。
サリアさんは魔力操作のスキルを持っていなかったので覚えてもらった。
エドルド達と連絡を取り、町から少し離れた平原に来てもらった。
「それで俺達はどんな物を使えばいいんだ?」
「そうですね、とりあえずこちらを。これはバイクという乗り物です。魔力操作のスキルが無いと扱えませんが。こちらをよろしくお願いします」
使い方を説明して乗ってもらう。
転んで欲しくないので三輪のバイクを作った。
二人乗りもでき、後ろには荷物も置ける。
魔力で動くのでエンジンの音もない。
馬よりスピードが出て、慣れると使いやすいから好評だった。
ホミルさんはあまり好きではないようだ。
道が凸凹しているのはしょうがない。
あと、アイテムボックスなどのスキルがない人は邪魔になると思う。
魔力タンクと衝撃が少ない事は良かったと言っていた。
今日は一つを交代で乗ってもらったが、今度人数分作っておこう。
次は自転車に乗ってもらった。
これも後ろを二輪にしているので転倒などは無いはずだ。
ホミルさんはこれぐらいがいいようだ。
「「うぉぉぉーーー!!」」
エドルドさんとフィンさんで競争してエドルドさんが勝っていた。
町の道は少し狭く凸凹が多いが自転車やバイクが普及しだせば、町長や職人がなんとかするだろう。
一応、バイクを一台と自転車を二台渡しておいた。
バイクはフィンさん、自転車はグミルさんとホミルさんが持つみたいだ。
(炎の剣の人達は万能の腕輪があるからいいけど、普通なら置き場所とかに困るよな)
今後の課題が見えて、ひとまず解散となった。
星人の家に戻り、サリアさんとウガンさんに家事魔道具の意見を聞いた。
「家事がすごく楽になりました。ありがとうございます」
「すごい便利な魔道具だと思う。それでこれはいくらで売るんだ」
「まだ売りません。売っても買える人がいないと思います。将来的に売り出す予定ですね」
「それもそうだな。貴族なんかには売れると思うから領都や王都に行った時に売り出せばいい」
話し終えて、昼食にし、店の内装をする。
棚は完成しているのでどこにどの商品を並べるか決める。
水を売る場所は何も置かないでもらっている。
昨日作った水を容器に入れる魔道具を置くためだ。
イメージはスーパーなどにあるウォーターサーバーである。
それを三台置く。
使い方もサリアさんとウガンさんに教えて置く。
明日はシーナさんと町長の奥さんにも教えて一人ずつここについてもらう予定である。
商品を並べ終えて、看板を取り付け、後は開店するだけになった。
このお店は基本サリアさんとウガンさんに任せるつもりだ。
お店がある程度落ち着いたら、俺とルコとユーミルは行商に行くと言ってある。
たまに帰ってくる予定だ。
夕食を食べ、開店後の事を話して、魔道具を少し改良して一日が終了した。
読んでくださりありがとうございます。
次回の星転は
アスト「数日間露店をやらなかったから混んだな。」
ユーミル「貴族も来るそうじゃないか。」
アスト「星人の家の商品案内だな。」
カーナ「そして、私の秘密が!」
アスト「カーナちゃんのいない所で話されるな。」
ティリア もぐもぐもぐ←つまみ食い中
アスト「ルコは手を洗ってから食えよ。」
次回は15日です。