9話 購入?
今日も、朝の市場で商売をした後、教会へ行き、後の時間は、色々な便利道具を作る予定だ。
「おはようございま~す。いらっしゃいませ~。はい。大石貨四枚になります。ありがとうございます」
「大石貨六枚です。ありがとうございます」
ルコと二人で露店をやっている。
昨日は、ジオン君と獣人の女の子が手伝ってくれたから、いない今日の方が忙しい。
主婦の口コミなのか、客も少し増えているみたいだ。
朝のラッシュ。
大体8時くらいかな?
皆、水を買っていく。
それが終わると、少し落ち着く。
いつもは、パドムさんが買っていく鉱石を行商人の人が買っていったり、爆裂石が広まったのかそれが少しだけ売れたりで、今日は昨日より多く稼げた。
そして、今日は終わりにして片付けをしていると、二組の来客があった。
一つはエドルドさん率いる炎の剣の皆さん。
もう一つは、商人ギルドのシーナさんだった。
「おはようございます。皆さん。何か不備でもありましたか?」
エドルドさん達の方が少しだけ早かったので優先させてもらう。
「あぁ、俺たちの方は、昨日もらった物だが、何の効果か分かりにくくてな。色を付けて欲しい」
「あ! なるほど。それは、気づきませんでした。すぐにやりますね」
腕輪のアイテムボックスにある石に色を付けていく。
爆裂石は赤、閃光石は黄色、代命石は水色。
他にもあるが、またの機会に紹介する。
一晩たって落ち着いたのか、全員いつも通り? だった。
「ありがとうな。アスト。色々使ってみるのが楽しみだ」
「はい。こちらこそお願いします。フィンさん」
「なぁ、アスト。あたし、あの巻物開いてから火魔法が使えるようになったんだがあれっていくらするの? 後でお金とったりとかしない?」
グミルさんは意外にも、心配性な性格らしい。
「しないので大丈夫ですよ。というか、もっと使ってくれてもいいですよ。そのために契約したんですし」
「だから、心配ないと言っただろうグミル。俺達は商品の意見や選別をすればいい。だろう? アスト」
「はい。よろしくお願いします。エドルドさん。あぁ、すみません、それとスライムの死骸を多めに持ってきてください。ちょっと試したいことがあるので」
「スライムの死骸をか? わかった。倒したら持ってくるよ」
「よろしくお願いします」
炎の剣の人達と別れ――
「こんにちは。シーナさんどうしたんですか?」
シーナさんの話を聞く事にする。
「こんにちは。アストさん。ギルドマスターに命じられて水を大量に露店で売っている商人を連れてこいって言われたんです」
「よし。ルコ、すぐに荷物をまとめろ、さっさとこの町から出るぞ」
「了解しました!」
「待ってください! 違うんです! 絶対に誤解してます!」
少しだけシーナさんに意地悪をしてみたくなったが、慌てるシーナさんて新鮮だなぁ。
「というと?」
「通常、ギルドのマスターは犯罪歴のないまともな人が選ばれます。そして、どこのギルドマスターも元Aランク冒険者で王族、貴族の相手をしているので計算高くて、変人でも悪い人ではありません」
「この町の商人ギルドのマスターは変人なんですね?」
「へんじん……。いえ、個性です」
真顔でそう言うシーナさん。
「まぁ、行きましょう。ルコ、商人ギルドに行こう」
「わかりました!」
「ありがとうございます」
三人で商人ギルドに向かう。
その際、商人ギルドのマスターの事を調べさせてもらった。
[記録]
クォーゼル ソナヤ町商人ギルドマスター
元Aランク冒険者
筋肉質な体だが、髪を束ねて、オネェ言葉。
初めてパンチのきいた人がでてきそうだ。
商人ギルドに到着する。
そして、ギルドマスターの部屋に行き。
コンコン シーナさんがドアを叩き――
「シーナです。噂の商人をつれてきました」
「入ってちょうだい」
「失礼します」
部屋に入ると――
「あなたが水を売っている商人ね! このお水いいわね! 私が冒険者時代に飲んだ物より美味しいわ! スキルや仕入れ先を聞くのはタブーだから聞かないけど。これからも継続的にこの町に売って欲しいわ~! 私の名前はクォーゼルっていうのよろしくね」
部屋に入った瞬間に手を強く握られ――おそらく、向こうはそんなに強く握ってないのだろう――お褒めの言葉をいただいた。
というか、凄い迫力だ……。
それと握力いくつだよ。
普通の人なら、顔が真っ青になるぞ。
「あ、ありがとうございます。でも、継続的に売ってくれって言うのは?」
俺がそう言ったら、座って話をしましょう、と言われたので部屋にあるソファーにルコと座る。
シーナさんは、クォーゼルさんの後ろに立っている。
「簡単な話よ。この町に商会を置いて欲しいの。ギルドで売ってもいいんだけど、仲介料として三割程貰うことになるから、ほとんどの人は自分の商会で売るんだけどね」
商会か……いづれは店舗を持ちたいけど人がな……。
「俺とルコしか人がいないし、旅もしたいので、いづれは店舗を持ちたいですが今はちょっと」
「それなら、心配いらないわよ。実は今日奴隷商人が来るのよねぇ。どんな子が来るかはわからないけど、文字は書けるし、計算はできるから商会でも働けるわ。料金は商人ギルドが払うわ。これは必要な投資よ」
料金はギルドが払ってくれるのか。
タダより高い物は無い、というが、これは絶対に店を出せ、と言う事だろうか。
「とりあえず、見てから決めさせていただきます」
どんな人が来るかわからないからな。
まぁ、隷属の首輪を付けられるみたいだから、逆らう事は無いだろうけど。
話が終わると、部屋にノックの音がしてドアが開いた。
商人ギルドの職員だった。
「ギルドマスター奴隷商人の方が到着しました。本日は三人です」
「わかった。すぐに行くわ」
クォーゼルさんに着いていく。
町の広場に来た。
「さぁさあいらっしゃい! 今回は、三人だよ。全員家族だ。領都で商売をしていたが借金が増えて、一家で奴隷落ちした。
母親は二十八、父親は三十、娘は八歳だよ。
親は、銀貨三十枚。娘は銀貨二十枚だよ。
買う人はいるかい?」
「三人でいいわよね? 元商家の人達なら頼りになるしね」
借金で奴隷落ちしているんだけどな。
「はい。お願いします」
「私が買うわ。主人はこっちの人でね」
「かしこまりました。この首輪に魔力を流してください。それとこちらが契約書になります」
クォーゼルさんがお金を払い、契約書には、俺がサインする。
「しかし、クォーゼルの姉さんが支払うとは。あんさん何したんです? あぁ、あっしは奴隷商人のラオラスと申します。領都の方にも店舗を持っています。以後お見知り置きを。あの家族はちと災難でしたから大切にしてやってください」
「いや、何も悪い事はしてないぞ。ただの投資だ。後、その詳細って聞けるの?」
「それが気になるんですが……。まぁ、噂を聞くのを楽しみにしてます。あっしからではなく、本人達から直接聞いた方がいいですよ」
ラオラスさんと話が終わり、クォーゼルさんと、購入した奴隷家族、シーナさん、ルコと共に、今度は商人ギルドの個室へ。
「とりあえず、自己紹介してもらえるかな? 後、領都で何があったのか、どんな商売をしていたのか話せる範囲で話して欲しい」
「分かりました。私は、サリアと言います。この子は、ティリア。夫はウガンと言います」
「ウガンです。領都では、雑貨店をしていました。ポーションも作れます。ある商会の傘下に入らないかって言われて、それを断ったら、その商会の手の者が店前で暴れて、だんだんと客が減っていき、奴隷になったということです」
そんな商会があるのか、でもそんな事をして何の得があるんだ?
「よくある話ね。暴れた者も罰金を払えば解放されるし、上手いこと証拠も掴ませないから捕まえる事ができない。それで、その商会の名前は?」
クォーゼルさんが商会の名前を聞く。
「ヴァルジア商会と言います。ここ最近で有名になった商会です。同じ雑貨店をしていました。それに、武器と防具も売っていたので、冒険者などからは、評判も良かったんです」
ヴァルジア商会。
一応、覚えておこう。
「わかった。話してくれてありがとう」
家族にこれまでの事を話してもらい、本題に入る。
「この町でも、商会をしてもらいたい。できるか?」
「はい。精一杯やらせていただきます」
「じゃあ、物件の話をするわね。この中から選んでもらうんだけど……どうする?」
クォーゼルさんが、物件の場所が書かれた地図と、物件の間取り図を出した。
物件を見るとどれも微妙だ。
そういえば、教会の隣の土地が空いてたな。
あそこ買えないだろうか。
「クォーゼルさん。教会の隣の土地って買えますか?」
「教会の隣? あぁ、あそこね。町長に話せば買えるわよ。私から話しましょう。その方が確実だから」
「ありがとうございます。あそこに店を立てれば、手伝いって名目で子供達に仕事を与えられるので」
「うふふ。なら、すぐにでも町長に話すとするわね」
「シーナちゃん。町長さんに私が会いたいって連絡してちょうだい」
「はい。かしこまりました」
「町長さんが来るまで昼食にしましょうか」
現在時刻は一時を過ぎた頃だった。
商人ギルドにも食堂があるみたいだ。
大抵の人は昼は食べないか、食べても、固パン、干し肉、屋台で売っている食べ物なので、俺たちみたいに三食食べる人は珍しい。
全員が昼食を食べ終わるとシーナさんと見た目六十歳くらいの男の人が来た。
「クォーゼル。シーナちゃんから話は聞いたぞ。あの水を売る商会を設立するとか」
「そうよ。町長さん。そして、彼がその水を売っていた行商人のアストちゃんよ」
「おぉ! 君がか! あの水は素晴らしいよ。妻からおいしい水を買ったと聞いて飲んでみたが、是非この町でいつでも買えるようにしてくれと近いうちに頼む予定だったんだ。商会を出してくれるのなら助かるよ。近いうちに息子に町長を譲るが、私は町長のウィムアだ。よろしく」
手を握られ、激しく上下させながら自己紹介をされた。
「商人のアストです。よろしくお願いします」
「町長さん早速お話に入りましょう」
クォーゼルさんが、町長さんに話を振る。
「そうだな。確か、教会の隣の空き地を使いたいそうだな。あの辺りはあまり人気もないから建物もないし、いいんじゃないか。土地代は取らないというのは、住民の反発もあるかもしれないから無理だが、できる限り、安くするよ」
「ありがとうございます」
「近いうちに職人の人達が行くと思う。なるべく早めに建てさせるから待っていてくれ」
「あーその、建物は俺に考えがあるので任せて貰えると助かります。数日で完成させるので」
自分で家を作りたいとお願いする。
「そうか? いや、しかしな」
「町長さん。いいんじゃないかしら。私は興味あるもの数日でどんな建物になるか楽しみだわ。無理そうなら職人の人達を行かせればいいんじゃない」
「わかった。では、頼むぞ。それと、商会名を決めておいてくれ」
「はい。ありがとうございます」
土地代を聞いて、ちょうど手元にあったので即金で払い、シーナさんとクォーゼルさん、ウィムアさんに挨拶をし、奴隷の家族を引き連れて教会に向かう。
教会のドアを開けて、挨拶をするとディアナさんが出てきた。
「すみませーん! アストです」
「アストさん。こんにちは。畑の事を聞いて、来てくれたんですね。よかった〜」
ディアナさんが出て来て、畑の事を言った。
「はい? 畑?」
「あら? てっきりカーナちゃん達から聞いているかと思ったのですが?」
「いえ、聞いてないですよ。何かありましたか?」
「はい。もう芽が出てきたんですよ。早いですよね」
「それは早いですね」
やっぱり、俺の魔力から作られた土と種だからか?
水も渡したのを使っているんだよな?
だとしたら、森はどうなっているんだ?
あれは土を混ぜたんじゃなくて上に被せただけだよな。
草と木も生産で創ったし水もあげたし、草は一日、木は数日で生えるとか?
考えるのはやめた。
今度確認しに行こう。
もう手遅れなのを知らないアストである。
「でも、畑の事でなければどうしてここに来たんですか?」
「実はこの隣に商会を設立する事になりまして、その挨拶に。そういえば子供達は?」
「この隣にですか? あの、ここら辺って人があまり来ませんが大丈夫ですか? 子供達は今はお昼寝中です」
やっぱりここら辺は人が来ないのか。
まぁ、教会以外特に何もないからな。
「えぇ、大丈夫ですよ。商人ギルドの方で宣伝もしてくれるみたいですし、この町に雑貨店はありませんからね。それと、忙しくなったら、ここの子達に手伝ってもらいたいんですが、もちろんその分の給金は払います。ダメですか?」
「いえ、こちらこそお願いします」
「それとすみません、今からお店を作るので、この人達をここにいさせてください。うちの商会の店員です」
「わかりました。いいですよ」
教会に家族を預けて、俺はルコと共に隣の空き地へ、地面が凸凹しているので、土魔法で平らにする。
その上に、薄くした石を敷く、土台は石で作り、壁と屋根は木で作る。
建物の外観は完成。
あとは、中だが。
一階の一部を店舗にして、奥は作業場。
二階は住居スペースに、在庫を置くための地下室も作って、星魔法の印でチートな家にする。
あとは、サリアさんとウガンさんに聞いて、足りないところを作っていくか。
ちなみに、この町は、糞尿は壺などにして一箇所に集めて魔法で処分しているようだ。
トイレットペーパーなどはないため布で拭き、洗って再利用らしい。
生活魔法が使えれば、それほど困らないとか。下水道などはない。
衛生面は地球に比べると心配だが、こっちは魔法などで上手くやっているようである。
とりあえず、奴隷家族を建物に入れて、今日からここに住んでもらう。
子供達は、起きたら隣に建物があったのでびっくりしたみたいだ。
夕食を食べて、布団などの生活用品を用意して、意見を聞きながら、店舗や作業場、住居スペースを改造していく。
トイレの使い方、お風呂とシャワーの使い方も教えた。
石鹸も材料は用意できるから生産ボックスで作るだけだ。
今度作ってみて、良さそうなら販売しよう。
色々話し合って、開店は3日後の昼からとなった。
俺とルコも宿に戻らずに、ここで寝させてもらう。
洗濯機とか、オーブンとか家電製品改め、家事魔道具とか将来、販売するのもいいかもしれないな。
開店までは、魔道具作りに励もう。
そんな事を考えながら、今日もルコと一緒に寝るのだった。
読んでくださりありがとうございます。
次回は10日です。
この世界に送られた理由が少しだけわかったり。