episodes 5 任務
今回から新章入ります!
Kane side
午前6:00
宴会が終わった数日後、任務がない日は皆大抵は自主訓練、図書館で調べ物、どこかに出かけると言ったような生活をしている。
僕は勿論自主訓練だ。合格こそ出来たけど、まだまだ至らないところがある。そうして僕は日課としてこの時間には決まって剣術、魔法の訓練を行っている。
そうして訓練を行う場所に向かった…
ーー訓練所ーー
さて、今日もやりますか、ってあれ?誰か先に来ていたようだ。誰だろう…
僕は気になって近づいてみると
「ふぅ、ん?ケインじゃないか。お前も自主訓練か?」
なんと、プラック隊長だった。まさかここで遭遇するとは…
「はい、日課なので。」
「そうか、ここから兵舎まで1番遠いのにな、お前も変わってるな」
そう言いながら隊長は、笑っている。
「ここからならランニングも兼ねて行けると考えたので」
「そうか、あ、そうだ、さっき自主訓練をすると言ったな。」
と、言うと、さっきまでの笑顔ではなく、プレッシャーを感じさせる笑みに変わった。
「俺が鍛えてやる、かかってきな」
背筋が一瞬凍った。でも、今後も怖いこと、辛いことがある。ここで下がったら軍人失格だ…!
「はい、全力で行きます!」
ならば全力で挑む!
僕らはある程度距離を取り、タイミングを見計らい、そして風が隊長側に吹いたと同時に
「ウォォォォ!!」
僕は曲線的に動く。反時計回りに動きつつ訓練用ナイフを隊長に向けて投げる。
隊長はそれらを訓練用の銃弾で撃ち落とし、すぐに僕に迫る!確か、隊長の銃はリボルバー式。すぐに弾切れになる上、リロードに時間がかかる。そこを狙うしかない!
僕は近づいてきた隊長の足を蹴ろうとすると、隊長はそれを想定済みなのか半身で躱し、訓練用の剣で僕の背中をを叩きつける。
「ウァグッ!?」
訓練用でなかったら僕の背中は斬られていた…!でも!魔術書を使って僕は
「blind!!」
目くらましの魔法を使った。でもこれでも普通の妖精より弱い。普通なら本がなくても十分な煙がでるのだが…それでも僕は風の流れを読むことによって攻撃に適した方向を探る。また、空気の流れを読むことによって位置を探る。そして気配を察知することで…見つけた!隊長はそこにいる!僕は訓練用の大剣を振りかぶる!
「なかなかやるな。だが、経験不足だな。」
その言葉のあと、何故か目を蒼く光らせている隊長に気づいたら僕は組み伏せられ、銃を突きつけられていた。よく見ると、既にリロードも完了している。
「目くらましの魔法で視界を遮り、死角を狙うのは良かったが、魔力が弱いな。あと、攻撃する時、殺気が強すぎる。素人はビビるだろうが、立派な軍人からすれば居場所を教えているもんだ。ま、その癖もお前次第でどうにでもなるぞ。」
「はい、ありがとうございます!…あのー、ひとつのお聞きしてもよろしいですか?」
「ん?どうした?」
「隊長の眼が蒼く光っていたのは…」
と、言い切る前に隊長の腕時計から通信音が鳴った。
「悪い、また後でな。こちらプラック。はい…!?わかりました…直ちに参ります。」
何があったんだろう…?
「総隊長から緊急会議との事だ。俺から連絡が出るまで兵舎で待機していてくれ。これは他の奴にも言っといてくれよ。」
「は、はい!」
僕は隊長にそう言われ、兵舎に戻った…
Kane sideout…
Pluck side
俺はまず、近くの更衣室で着替え、汗を拭いてすぐに会議室に向かった。
ーー会議室ーー
「7番隊隊長プラック、ただいま参りました!」
「うむ、掛けてくれ」
ネルソン総隊長にそう言われ、俺は席に座った。見渡してみると、テトとジャンヌさんがまだ来ていないようだ。ってかランスロットはどうしたんだその右頬、紅い手形ができているが…いや、聞かんどこ。
「よ、今日も自主練か?」
と、アーシュさんが声をかけてきた。この妖精は何かと気にかけてくれる気のいい妖精だ。
「ええ、少しでも怠ると鈍ってしまうので。」
「フン、通りで汗臭いわけだな。それにしたって遅くはないか?」
「おぼっちゃんには魔法以外何も良さがわからんだろうな」
俺はおぼっちゃんの言い方にムカついたので、『何も』を強調して言ってやった
「何ィ!?」
うーわ、沸点低いなこのおぼっちゃん
「やめないか、お前達!何でいつも喧嘩ばかりするんだ!」
「分かった…」
「はい…」
「まぁまぁ皆落ち着いてくれよ」
と、この場をフォローしたのはアーシュさん。ほんとこの妖精とギルさんがいてくれて助かった。
「遅くなってすみませんニャ、10番隊隊長テト、ただいま参りましたニャ!」
「4番隊隊長ジャンヌ、遅れながらただいま参りました!」
と、俺達がくだらないことをしているとテトとジャンヌさんが来た。
「全員揃ったな。それでは緊急会議を始める。
先日、同盟国である火の国から援軍を要請してきた。何でも、太華共和国から宣戦布告を受けたとのことだ。開始時刻は1週間後の午前9時。勿論こことは時差がありあちらの方が7時間早い。
そこで、援軍を派遣するのだが何か意見はあるか?」
火の国が宣戦布告を受けた…それって太華共和国が火の国の何かを欲しがっているのか?それとも別の理由か?
「意見よろしいですか?具体的に互いの戦力は如何程ですか?」
と、ユナはネルソン総隊長に聞く。確かに敵の情報もそうだが同盟国の戦力も把握しておかないと戦争で負けることとなる…
「うむ、現時点で判明しているのは太華共和国が兵力だけでも63万、飛行部隊は3万、陸戦部隊が4万だ。一方、火の国は兵力24万、飛行部隊、陸戦部隊どちらも3万だ」
「…なんと哀しいことでしょうか。明らかに戦力差が出ています。」
ネルソン総隊長の説明により、落胆(?)しているトリスタン。でもそれはあくまで数だけ。戦いは数だけで決まるものではない。少なくとも俺はそう考えている。
「ならさ、一部はわざわざ火の国に行かず、変装して一般飛行船で太華に行くってのはどうだ?」
そこに、ドレッドが案を挙げた。って、え?アノドレッドガアタマツカッタ?いや、あいつも隊長だ、それなりに頭はキレるはず。ただ振る舞いが脳筋なだけだきっと、タブンソウ。
「おいプラック、なんか失礼なことを思ってたろ?」
「気のせいだ。ドレッド、そしてお前の案はすごい。だが、変装を、するにしても奴らはそれを看破するかもしれんぞ?」
「それなら問題なかろう。その工作部隊にスプリガンを組み込ませれば良い。輩共は敵を欺くことなど造作もない。」
俺の疑念にセラさんが答えてくれた。確かにスプリガンは暗示を掛けて欺くことは簡単。ただ…
「けど、一般の飛行船は高いぞ?資金はどうするんだ?」
「ふん、そんなもの俺が提供する。同盟国を裏切ることは国を裏切るも同然だからな。」
と、最後の疑念にこのおぼっちゃんが持っていきやがった。さすが金持ち。
「それでは、他に意見はあるか?」
うん、聞いても無駄かもだけど
「意見いいですか?奴ら、太華は何のために火の国に?」
「ジャンヌ?どうしたのニャ…?」
と、思ったらジャンヌさんが答えてくれた。ジャンヌさんも他者を傷つけんの嫌いだからなぁ…テトも疑問に感じているようだ…
「それは私にも分からない…すまないな」
分からないのか…なら、本国の奴らに聞いてみるか?
「ジャンヌ隊長、なぜそのようなことを?」
と、ランスロットはシリアスな顔で聞いてくる。ビンタの痕が目立つけど。
「こんな事言うのは甘いと重々承知しています。私は戦いにおいて戦わないで済む方法があると考えています。味方は勿論敵とはいえど同じく妖精なのですから…」
「ジャンヌ…」
ジャンヌさんの言葉にテトも悲しい表情になっている。テトも戦うことはそんなに好きじゃない。と言うよりも軍人は戦闘狂というレッテル自体が間違えている。俺達は国の盾であり国を愛し、幸せを願っている。
『◼◼◼兄ちゃん、僕ら、必ず生き残れるよね…?』
ッツ!?こんな時に思い出しちまうなんてな…
「他に意見はあるか?…ないようなら派遣部隊を決める。」
と、へこんでる場合じゃないな。派遣部隊はどうなるんだ?
「派遣する部隊は6番隊、7番隊、11番隊とする。但し、後日健康テストにて合格とされたもののみだ。」
「「「了解!」」」
俺の隊とギルさんの隊、それからユナの隊か。
「続いて、これはドレッド隊長が言わねば言うつもりだったが工作部隊について決める。工作部隊は5番隊、9番隊に任命する。こちらも同じく後日健康テストを行う。」
「「了解!」」
工作部隊はアーシュさんの隊とセラさんの隊か。
「うむ、最後に何か意見はあるか?…ないのであれば私が最後にいう事がある。援軍部隊及び工作部隊の出発は2日後の午前6時、その他の部隊はこの国で待機し、万が一に備えるように。それでは、解散!」
こうきて緊急会議が終了した。俺は早めに部下に報告するよう兵舎に戻った。
Pluck sideout…
Unknown side
フッ、漸く準備が整ったか。あの共和国と島国の戦争かよ、こりゃ面白いことになりそうだ。戦争、血が騒ぐねぇ、7年前もそうだったなぁ、とても面白かった…
あのガキ共の滑稽さはよォ…
Unknown sideout
To be continued...
火の国→正式名称は火の丸国。サラマンダー、ウンディーネが多く、料理や武器の技術も高く、更に島国であるため、独自の文化が存在する。
太華共和国→惑星ガイアで一二を争う程広大な土地を持つ。しかし、その分人も多く存在するので財産難に陥っている。サラマンダーが多い。
あと、今更ながらアルブヘイム王国の紹介
アルブヘイム王国→惑星ガイアより浮いた場所に存在する国、しかし交流も広いため、様々な種族や文化が入り交じっている。また、魔力による恩恵を受けやすい。