53話 一本道
「バオウ、部下たちを頼むぞ!」
「オーギュティス、必ず平和を取り戻してくる」
バーゼルら隊長たちの神獣は他の神獣を率いてその力を最大限に引き出すために帝都内で防衛に当たる。未だに巨大地下水系にはびこる闇の産床から絶え間なく魔物が光の軍勢を襲ってくる。
そちらの攻略は隊長格、アルテ達以外で受け持ってもらわなければならない。
そのために彼らは相棒を残していく、強大な彼らの相棒がいれば安心して最後の決戦に赴ける。
「行くぞ!」
すっかり姿を変えた魔城への一本道に、5人の戦士と一匹の銀狼が挑む。
眼前に蠢く魔物たちがアルテたちの姿を認めると殺到してくる。
「アルテ様は大人気ですな」
バーゼルが巨大な盾を高々と構えると光り輝く壁が道を満たすほどに現れる。
「シールドウォール!!」
そのままバーゼルが魔物たちに突撃していく。
その後ろに全員が追従する。
魔物の大群と壁がぶつかりあう、グシャグシャと薄気味悪い音と魔物たちの体液が撒き散らかされる。前方には破れぬ壁が迫り、後ろからは次々と魔物がいきよいよく突撃してくるために先頭の魔物が次々に圧死していく。
壁を飛び越えて襲って魔物は、アルテの巨大な二本の棍で潰されるか、ファーンの聖槍に貫かれるか、マギウスの大剣で真っ二つにされるか、ペステの弓で頭を撃ち抜かれるか、ウォルの爪と牙で粉々にされるか選べる権利を得ていた。
「ぬわっ!?」
巨人がバーゼルの壁を押さえつける。
バーゼルの快進撃をようやく止める魔物が現れる。
「ふむ、少しは骨のあるやつが現れたの……では……ウォールブレイク!」
大盾を大地に叩きつけると、光の壁が爆発四散して魔物の軍勢を吹き飛ばす。
壁を押さえつけていた巨人も頭と腹を撃ち抜かれてその巨体を道に投げ出すことになる。
「しばらくは今の手は使えないからのぉ、若いもん達に少しは活躍させてやるわい」
「そうですね、バーゼル候だけに苦労させては我らも不甲斐ないですからな!
突き穿つ槍」
「じいさまはゆっくり休んでてくだせぇ! 分断する刃!! ……いてっ!」
「誰が爺さんじゃ」
ファーンの放つ一閃、マギウスの放った無数の刃が敵を討ち滅ぼす。
バーゼルの拳骨がマギウスの兜を揺らした。
「降り注ぐ光の礫!! ふたりとも油断しないで!」
闇に潜み2人に襲いかかろうとしていた魔物をペステの降り注ぐ光が撃ち抜いていく。
もちろん2人も気がついていたが、わざとらしく礼をして正面に向き直る。
「3人共、飛んで。全てを飲み込む波!!」
アルテが棍を大地に叩きつけると、巨大な光の瀑流が敵を飲み込んでいく。
どれだけの魔物を倒したのか数える気にもならなかったが、一本道の先にはまだまだ溢れんばかりの魔物で埋め尽くされている。
「アオーーン!!」
アルテの産み出した波に白銀の狼が背後から突入していく、ウォルの回転によって波は渦となってそして巨大な螺旋状の槍となって敵軍を貫いていく。
「まずい、ウォル様に全て持ってかれるぞ!」
「いくぞマギウス!」
「「突撃!!」」
槍と剣が僅かに討滅されなかった魔物を切り裂いて穿っていく。
白き光のファーンと黒き閃光のマギウスが踊るように敵陣を進んでいく。
「我々はゆるりと進むかのぉ……レディもおるからの」
「あら、レディだなんて」
「僕は先に行ってるね、ウォル!」
アルテは戻ってきたウォルにまたがり最前列に踊りだす。
ペステは後方からその弓で空に出る魔物を次から次へと撃ち抜いていく。
バーゼルは戦場全体を見渡し、大盾を巧みに使って死角を守っていく。
彼らの前で3合打ち合える魔物は一匹もおらず、ただ屍の山を築くしかなかった。
魔物が弱いわけではない、アルテ達が圧倒的な努力を続けてきた結果だ。
「ファーン! マギウス! 下がれ!!」
バーゼルの声に快進撃の中、ファーンとマギウスが即座に転身する。
その背後に黒い影が降り注いだ。
「歯ごたえのありそうな奴が出てきたのぉ」
「ふん、百足……100では足りなそうだがな」
「それに足でもないしな」
「ふたりともふざけすぎて足を掬われないでよね」
巨大な百足のような魔物、上半身と思われる場所にはゴリラのような腕を持ち剣や槍など様々な武器を持っている。
「……節ごとに分かれそうな作りになっているね。片っ端から潰していこうかウォル」
「ウォン!」
ウォルにまたがるアルテが一陣の風となって百足の頭部をかすめる。
同時にアルテの二本の棍棒によって第一節が吹き飛ばされる。
千切れ飛んだ切断面からは魔物の体液が弾けるもすぐに止血される。
同時に2つ目の節がぎょろりと目を開ける。
「なるほど、予想通り頭から潰していくのが良さそうだ!」
アルテは元頭部を叩きつけ粉砕する。
「アルテ様に続け!」
無数の武器による攻撃の殆どはバーゼルが防ぎ、一節、また一節と百足を潰していく。
ペステは百足へ加勢しようとする魔物たちを見事に足止めをしながら仕留めていく。
アルテとウォルは騎乗したり分かれて攻撃したりと自由自在に戦い、ファーンとマギウスは一糸乱れぬコンビ攻撃で百足の節を切り刻んでいく。
足だった部分も腕が生えて来る頃には、城へ続く一本道の残りも少なくなっていた。




