プロローグ
俺は23歳中小企業のサラリーマン。
周りからはトオルと呼ばれている。
今日も仕事をして飯食ってテレビ見て寝る。
そんな可もなく不可もなくありきたりな生活をこれからも続けて行くはずだった。
今この瞬間までは。
俺が何をしたというのか、いつも通り仕事をこなしこれといったミスもなかったはずだ。
そんな俺に無慈悲にも告げられた『クビ』の一言。
もちろん抗議はしたが返答は『すまない』の一点張り。
頭の整理が追いつかないまま、手続きは驚くほどスムーズに行われ俺は無職になった。
会社を出ると俺をあざ笑うかのようにセミが鳴いていた。
「……はぁ、どうしてこうなるかなぁ」
殺人的な暑さとクビになった衝撃とで倒れそうになる。
「……帰るか」
無気力につぶやいた。
3年通ったこの道もこうなってみると全然違う景色に見えるもので、いろんなものが目に飛び込んでくる。
公園ではしゃぐ子供。
世間話をするおばさま。
手を繋いで歩くカップル。
コートを着た2人の男。
「すげぇ格好してんな」
思わずつぶやいた。
こんな真夏にコート着て歩いてるやつなんてそうはいない。
いつもの俺なら変な人達だなと思うだけで終わっていたはずだったが、今日はなぜか気になって仕方がなかった。
ついて行ってみよう。
ちょっとした好奇心ってやつだ。
15分ほど歩いただろうか、男達は薄暗いビルの中へと入っていった。
流石にビルの中まではなぁと思っていると俺に衝撃が走った。
「……ミズキ!?」
10年前失踪した俺の幼馴染にすごくよく似た『少女』がビルに入っていくのが見えた。
「いやそんなわけないだろう」
言葉に出して心を落ち着かせる。
あの『少女』がミズキであるはずがないのだ。
もしミズキだとしたら10年前と姿が変わっていないのだから。
我慢ができなかった。
俺は恐る恐るビルの中へと入っていく。
階段を上ると声が聞こえてきた。
「で、あれはみつかったの?」
「いやそう簡単にはみつかんねぇっすよミズキさん」
「はぁもうこの体嫌なんだけど!いつまでこんな幼児体型なのよ!」
「年取らないって羨ましいんすけどねぇ」
「こんな子供の姿で成長が止まって何がいいのよ馬鹿!」
「いいじゃないっすか俺子供でもいけますよ」
「殺すぞ」
「……すいません」
俺は動揺を隠しきれない。
今奴らは確実にミズキさんと言った。
それに年をとらないとも。
「どうなってんだ……」
ガチャ。
扉が開いた
「……あっ」
「誰だてめぇ!!」
「いやぁ……あはは」
「スパイか、殺す」
コートを着た男がそう言うと手が青く光る。
「待って!!」
ミズキが叫んだ。
「トオル君?」
「そっそうだよトオルだよ!やっぱりミズキなんだね!」
「ミズキさんの知り合いか?」
コートを着た男の手から光が消える。
「なんでこんなところにいるわけ?」
ミズキが尋ねる。
「待ってくれそれを聞きたいのは俺の方だ。
お前が失踪してから10年も経ってる!誰も見つけられなかったんだぞ!そもそも見た目が変わってないしなんなんだ!どうなってる!!」
俺は思ったより大声を出していたようで、ミズキとコートの男たちは耳を塞いでいる。
「うるさいわねぇ!こっちにだって色々あんのよ」
「すまんちょっと取り乱した」
「とりあえずその見た目のことについて説明してくれ」
「あんた会話聞いてたんじゃないの?私は10年前から不老の体になってんのよ」
今日俺の中の常識がすべて覆った。




