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1.きっと世界は自分の為に

 シェンティアちゃんは思った。思ったのだ。


 なぜ学校に通う必要があるのか、と。


「だってそうじゃない? 社会に出たら学校で習ったことなんて通用しませんよそうですよ」


 そうしたら私はいつものことのようにこう返すのだ。


「いいから勉強しなよ。高校最初のテストから赤点取るつもりなの?」

「むぐぅ、ふぬんごぉ」

「何語なのそれ」


 この唸る稲妻ことシェンティア・シェルテルは、私ことツェツィーリア・ツィンマーマンの同級生であり、クラスメイトである。いつもそうであるが、屁理屈をこねるのが趣味なのだと思う。端から見ていればそれ以外には見えないのだ。


「あーあ、イケメンで金持ちの男の子に見初められたーい」

「別にアンタならできないこともないでしょうに」

「でも男っていろいろ要求してくるんだよ。私は要求したいけど、されたくはないの」

「ただの屑じゃん」

「みんなそうだよ。そうやって妥協点を探って、一番妥協し合える相手と運命はつながってるんだよ」


 朗々と語るシェンティアに、私は冷めた目で言い放つ。


「悟ってるつもりなのが一番痛いよ」

「はのぉ、もののののの」

「だからそれ何語」


 シェンティアはきっと、もともとは優秀だったに違いない。けれども今現在このように哀れな姿になってしまっている。きっと理由があるに違いない。私は、同情からそう思った。

 そして、気になったので、本人に聞いてみることにした。


「シェンティアってさ。なんでそんな感じになっちゃったの」

「え?」

「つまり、どうして今みたいな残念な子になっちゃったのか聞いてるの」

「ざ、残念? 私が残念?」


 心底心外だとでも言わんがばかりに驚愕の表情を私へと見せつけるシェンティア。

 どうやら自分が残念な人間になりつつあることにすら気付いていないようだ。


「私のどこが残念だって?」

「結局のところ、自分が世界の中心だって思ってるところとか」

「それはそういうもんじゃん」

「え?」


 なあんだ、という顔で、呆れきっているようすだが、私からしてみればこいつはなんなんだと。


「私にとって一番重要なのは私の動向なのよ。他の人がどうしようが勝手だし、それを私が操ることなんてできやしない。けれど、私なら、私のことならそれをコントロールできる」

「できていませんが」

「つまり私が動けば世界が動く。私の世界は私で動くのよ」


 言いたいことは分かる。だが、それゆえに虚しい。実に。


「でもシェンティア、あなたの世界、動いてないじゃない」

「え?」

「将来ライトノベル作家になるとか言ってたのに、もう数年経ってるよね。進んでるの」

「そ、それは今書いてる途中で」

「ずっと書いてるの? 大作なの?」

「いやまぁその」

「勉強してるわけでもないから大学もレベル落としていかないといけないんじゃないの」

「うぐぐ、それは」

「判定ダメだったんでしょ。どうするつもりなの? 考えがあるの」

「ないけど……」


 シェンティアは俯き、目に涙を溜めている。口だけだからこうなるのだ。


「あなたが何を言おうと自由だけど、できないことをできるって言ったり、できてないのに可能だって豪語してもダサいよ」

「うわーん、ツェツィの馬鹿あ!」


 そう叫ぶと、教室から脱出しようと扉を開けるシェンティア。

 しかし、扉を開けた先には数学教師が立ちふさがっていた。


「シェルテルさん。授業始まりますよ。準備は余裕をもってやりなさい」

「ご、ごめんなさい……」


 シェンティア的には踏んだり蹴ったりかもしれないが、いいお灸になったのではないだろうか。

 私もそれを他山の石とすべく、前回の授業のノートを確認するのだった。

リハビリ新作始めるよ。

これから書いてくよ。

三日坊主にならないようにしたいよ。

したいよ……

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