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神竜の契約者  作者: Mint
第一章
9/41

生涯の伴侶

 カインはふと目を覚ました。

 少し眩暈がする体をゆっくりと起こしつつ、周りを見渡す。


 そこは、見たことがないほどの大きな部屋だった。


(そうか、俺は城に招待されたんだったか…?)


 カインは城に招待されたことを思い出すが、その後のことを思い出せないでいた。


(何か……凄い衝撃を受けたような気がするんだが)


 あと少しで思い出せそうなところまで、記憶の引き出しに手が届くものの、最後の引く動作ができない。


 とりあえず、そのことは放置することにした。


 カインは、イクスとゼランの石が手元にないことに気付き、慌てて再び周囲を見渡す。


 すると、ベッドの隣に据え付けられた脇机に、イクスとゼランの石と、以前使っていた服が綺麗に畳まれて置いてあった。


(ん? 服?)


 以前の服があるということは、今着ているのは別の服ということになる。


 カインは、自分が着替えたことに心当たりがなかった。

 今着ている服は、シルクの高級な服だった。

 とても肌触りが良く、寝間着には最適そうだ。


 そんなことを考えている場合ではない、と再びカインは思考する。


(いつ着替えた? 着替えるとすれば、浴槽から上がった後が普通だ……が……)


 そこでまた、記憶の引き出しに手が届いた。


(何だ? この思い出せそうで、思い出せない感覚は? 浴槽で何かあったのか?)


 だが、結局思い出せない。


(そもそも、服が変わっていたからなんだというんだ。偶々着替えたことを忘れただけで、特に何も重要なことがなかっただけかもしれない)

 

 重要なことなら忘れるはずがない、とカインは考えた。


(まぁ、重要なことならそのうち思い出すだろう。ここまで拘ったのも何か引っ掛かりはするが……)


 起きたときに感じた多少の眩暈も、今はもう感じない。


(待てよ。イクスなら何か知っているか?)


 まだ、疑問を拭いきれないのか、カインは脇机に置いてある、イクスが宿る石に手を伸ばし、尋ねた。


(なぁ、イクス。俺は風呂に入ったか?)


(あぁ? 何言ってんだ。入っただろう。それも、豪華な金ピカの風呂によ。なんだよ、覚えてねぇのか?


(いや……覚えてはいそうなんだが、覚えてない気もする……)


(なんだよ。煮え切らねぇ答えだな。まぁ、オレも脱衣所でお前と離れてからの記憶はねぇから、その後のことは知らねぇな)


イクスは、カインが脱衣所に入ったことは確かだと言う。


(お前も知らないか……)


 色々考えてはみたが、真相にはたどり着けそうもない。



 そんなとき、この部屋をノックする音が聞こえた。


 もう日が昇っている時間のため、使用人が起こしにきたのだろう。


「少し待っていろ、今開ける」


 カインは格好を気にしたが、使用人を送り返してから着替えることにし、部屋の鍵を外し扉を開けた。


 そこには、城の中でも着ているのか、ドレスを纏ったシャノンが少し赤い顔で立っていた。


「なんだ、シャノンだったのか。てっきり使用人が来ると思ったが……何か用か?」


「えぇと……あの、浴室でカイン様が気絶したことのお詫びに……」


 またもや、カインを惑わす単語が出てきた。


 『気絶』、『お詫び』の二つの単語。


 特に気になったのが、『お詫び』のほうだった。

 この場合、カインが誰かに何かをされたということを意味する。

 もし、これが『気絶』と関係があるならば、よほどの事態だと思い至った。


 カインが記憶を思い出せないほど、完全な不意打ちをしたということだからだ。


 頭の中に、一つの文章を思い浮かべてみる。


(~がカイン様を『気絶』させたことの『お詫び』に参りました)


 おそらく、シャノンはこのように言いたいのだろう、とカインは考えた。


(やっと最後か。~の部分が分かれば、謎が全て解けそうだ)


 もう自分では考えられそうにないなと考え、一思いにシャノンに尋ねることにした。


「シャノン、すまない……浴室に入ったことはなんとか思い出したんだが、その後のことが思い出せないんだ……。シャノンがなにか知っているなら話してもらえないか?」


 カインのその言葉を聴き、さらに顔が赤くなるシャノン。

 それも当然だ。


 カインの言葉はシャノンにとって、自分のしたことを自分で説明しろ、と言われているに相応しいのだから。


 もう逃げ場はない。


 お詫びに来た、と言っておきながら、『あ、カイン様はおぼえてないんですか?』とシラを切り通すことはできない。


 覚悟を決める。


「私の……で、カイン様の背中を……ました」


「ん? よく聞き取れなかったんだが、もう一度いいか?」


「で、ですから! 私の……で、カイン様の背中を洗いました!」


「えぇと、肝心だと思う場所が聞こえなかったんだが……」


「あぁ、もう! ですから! 私の胸で! カイン様の背中を流しました!」




 カインの手が届いていた、記憶の引き出しが勝手に開く。

 しかも、その引き出しには色がついていたらしい。


 ()()の色が……


 それは鮮烈な光景だった。

 

 引き出しに仕舞われていた記憶が、どんどん溢れてくる。


 それもシャノンの肌色ばかりが……

 豊満な胸ばかりが……

 時に桜色の……乳首が……


 これ以上はまずいと思い、即座にシャノンから目を離した。

 

 絶対に同じ過ちは繰り返さない。

 意地でも……


 しばらく、カインはシャノンから目をそらし続けた。




 ようやく落ち着いたのか、カインは部屋にシャノンを招き、浴室でのことを尋ねた。


「なぜ、あのようなことをしたんだ?」


 いまだに顔の赤みが取れていないシャノンだが、なんとか答える。


「だって、案内で二人きりになった途端、カイン様が私の胸をチラチラと見始めたんですもの……興味がおありなのだと思ってしまいました……」


 記憶はほとんど思い出しているはずだが、胸を見ていたことにカインはまったく気づいていなかった。


(無意識か…………)


 女性は自身に向けられる視線に敏感だという。


 おそらく、シャノンの言ったことは嘘ではないだろうし、嘘をつく必要もない。


 それに、気絶する最後の瞬間の記憶も思い出していた。


(俺はシャノンに惹かれている……?)


 そんなことを改めて考えていただけだったが、

 シャノンは自分の体を隠すように、自分自身を抱きしめていた。


「……また見てますよ?」


「……うっ、今のは俺も実感した……」


 少しショックだった。

 助けたお姫様に、いやらしい目を向けてしまっていた自分自身に……


「あの、いまさらですけど……大きい胸が好きなんですか?」


「いや……そんなことはない……はずだ。今まで色々な町や村を見てきたが、そこにも巨乳の女性はいた。だが、特に興味もなかった……」


「それでは、私が特別……ということですか?」


「多分……な。あぁ、また見てしまった……すまない。一国の姫に懸想しても仕方がないというのにな……」


 ひどく落ち込むカインだが、シャノンが優しく声をかけた。


「さっきの話だと、大きな胸が好きというわけではないんですよね? ん? この言い方はおかしいですね。たしかに私の胸は見ているのですし……大きな胸『だけ』が好きというわけではないですよね? うん、これが正しいですね」


 一人で納得するシャノンだが、それに答えるカインはもう気力が尽きかけていた。


「だとしても、俺はシャノンのことをあまり詳しく知らない。つまり、君の綺麗な髪、可愛い顔立ち、抜群のスタイルの良さ……君の外見が好みだということだ……とんだクズ野郎だ」


 そんな答えを返しても、やはりシャノンは優しく声をかける。


「いいじゃないですか。そんな男性は世の中に大勢いますよ? むしろ、そのほうが多いかもしれません。ここからはマジメな話です。良く聞いて下さい」


 いまだ、面食いの自分に嫌気が差していたが、シャノンの声音の変化に気付き、顔を向けた。


「私は、

 自分を救ってくれたカイン様が好きです。

 強いカイン様が好きです。

 優しいカイン様が好きです。

 私のことを愛してくれるカイン様が好きです。


 恋愛的な意味で。でなければ、あんなこと浴室でするわけがないでしょう? つまりですよ? カイン様は私のことが好き、私もカイン様が好き。大変です、両想いですよ?」


 そんなことを嬉しそうに言うが、カインは現実的ではないと感じていた。


「一国の姫と、どこの馬の骨ともしれない男が付き合えると思うか?」


「多分ですが……できます」


「根拠はなんだ?」


「お父様が言っていたんですよ。『あれくらい強い男なら、お前を任せてもいいんだがな』っと。どうです? 王が認めているのに、誰が反対できるでしょうか?」


「おいおい、王様がそれでいいのか? 大切な娘だろう……」



「大切だから、強い男に貰って欲しいとも思っているんですよ。どうします? 付き合ってみます? あなたは私に相応しいです。いえ、もったいないくらいかもしれません」


 なぜこんな話を気絶させられた翌朝にしているのだろう、と考えると笑いそうになるが、笑えない……。


 自分の伴侶ともなるべき人を選ぶ大切な選択だ。


 きっと、これを断りアルトリエを出ても、シャノンのことが頭を離れないだろう。


 それほど、カインはシャノンに惚れていた。


 もう、どうしようもないほどに。


 どうしようもないなら、答えは簡単だ。




「最後に訊かせてくれ。俺でいいのか? 他にも、名門貴族や他国の王子だっているんだろう?」


「あなたが良いです。正直なところ、お金はもういらないんです。相手は、誰でもなく私が選びたい……あなたこそ、私でいいんですか? 案外、我儘がもしれませんよ?」


「別に構わないさ。俺とあいつの長い旅に比べたら、お姫様の我儘くらいたいしたことない」


 脇机に置いておいたイクスの宿る石を見ながら答えた。


「あの石についても詳しく教えてくださいね。気になってるんです」


「もちろんだ。あいつは俺の半身みたいなものだからな……」


 イクスとの旅が終わったわけじゃない。だが、この旅の一つの隠された目的が、この美しい女性と出会うことだったなら、それも悪くないと思えた。


「それでは、契約の契りをしましょうか……」


 そう言うと、シャノンは自らの豊満な胸をカインに向けて差し出してきた。


「ん? 胸なんかを俺に向けてどうするんだ?」


「とか言いつつ、しっかり見てますよね……カイン様」


「今更だろう。それと……様はいらない。俺たちは付き合うのだろう?」


 その言葉に、シャノンは嬉しそうに笑う。


「そうですね、カイン。では、契約を交わしましょうか」


「で、どうするんだ?」


「う~んとですねぇ――――――」


 シャノンはカインに耳打ちした。


「本当にやるのか?」


「えぇ。あなたの大好きな私のおっぱいで契りを交わしましょう?」


 そう言うと、シャノンはカインに改めて、自らの豊満な胸を差し出した。


 しかし、その途中で何かに思い当たったようで、


「……あの、もしかして……直接が良かったりしますか?」


「…………」


 無言、それは即ち()()


「ふふっ、本当に……私の大きなおっぱいが大好きなんですね?」


 カインに胸を見せることに抵抗がなくなったのか、シャノンはドレスの上部分を堂々と脱ぎ、下に降ろした。


 たぷんっと音がしそうなほどの柔らかさと大きさを兼ね備えた乳房が姿を現す。


「…………少し乳首が勃ってないか?」


「仕方ないです。見られたことは一度あっても、直に触られるのは初めてですもの……」


 シャノンはカインが胸を触りやすいように、腕で胸を寄せ上げた。

 恥ずかしそうに、胸を中央にむにゅっと寄せるシャノンは、一言でいうなら……最高だった。


「さぁ……どうぞ?」


 カインはゆっくりと豊満な胸に手を伸ばした。






 カインは言った、イクスがカインの半身だと。

 であるなら、カインもイクスの半身である。


 即ち、カインも()()の一部かもしれない。





 やがて、触れた。


 契約と言うには、少々柔らかすぎるが……







 神竜カイン契約者シャノンが、ここにもう一人誕生した――――








































「……あぁん。もう……それ以上はだめ…………です。んっ……あ~ん」




 中々、カインは手を離さなかった……









 


 

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