金を稼ぐ手段について考える
一行はヴォルカノフのギルドへとやってきていた。
「とはいったものの、そう簡単に金貨500枚を稼ぐクエストなどないだろうな」
カインはクエストボードを見ながら呟く。
たしかに彼の言う通りだ。金貨500枚を稼ごうするならば、ダルキアンに勝るとも劣らない魔物を討伐するしかない。だが、都合よくそんなクエストがあるはずもなかった。
「どうすんのさ、親父にあんなこと言って」
「まぁ、なんとかするしかないだろう」
技術を金で買い取るという選択は間違っていないとカインは思っていた。ただ、金額が金額である。
「困ったときはシャノンに一肌脱いでもらえば金貨500枚など一瞬かと」
カインへの助言のつもりなのか、にんまり笑顔のアイラがいた。
「アイラ……私を娼婦にでも堕とすつもり?」
「そんなつもりはないですけど、言ってみただけですよ。そんなに怒らないでください」
シャノンは悪ふざけをしたアイラをただ睨みつけていた。
「あの、すみません。もしかしてあなたは……」
「ん?」
カインは背後からの声が自分にかけられていると思い、後ろを振り返った。
「やはり、あなたです。馬車の中から見えたお顔に間違いありません」
そこにいたのは黒髪の少女だった。しかし、カインには身に覚えがなく、首を傾げるしかなかった。
「すまない。俺とあなたはどこかで会っただろうか?」
そこで少女は、はっとしたような顔をして一歩下がってお辞儀をした。
「いきなりで申し訳ありません。私はホーエンハイム家の長女――コレット・ホーエンハイムと申します」
カインはぴくりと眉を動かした。彼はヴォルカノフに来る途中の馬車襲撃の件を思い出していた。盗賊団達がホーエンハイムと言っていたのを朧気ながら記憶していたのだ。
「俺はカインと言う。そうか、あの馬車の中にいたのは君だったのか」
「え、何、この子ってカインの知り合い?」
レイラが見知らぬ少女を見ながらカインに問いかけた。
「あぁ、俺とシャノンが助けた馬車に乗っていた子だそうだ」
それを聞いたレイラは親しげに挨拶を交わした。それに続いてシャノンたちも挨拶を交わす。
「あのときは助けていただきありがとうございました。もしよしければ、私のお屋敷に来ていただけないでしょうか。助けていただいたお礼をしたいのです」
彼女の気持ちはカインにももちろん理解できたが、今はタイミングが悪かった。
一週間という短い期間を無駄にするわけにはいかない。
「申し訳ないが、今は急ぎの用事がある。心遣いだけいただこう」
カインはコレットの申し出を断った。こればかりは周りの仲間たちもどうしようもなく、異議の唱えようがなかった。
しかし、コレットは落ち込んだ様子を見せなかった。
「そうですか……それでは仕方ありませんね。では次に会ったときは、是非おもてなしをさせてください」
そう言うと、彼女は一礼してカインたちの前から立ち去った。
「なんだか、悪いことしちゃったね」
レイラは心なしか落ち込んでいた。自分の父親のせいでこうなっていることを認識しているからかもしれない。
「仕方ないさ。しかし……急ぎの用事とはいえ、金を稼ぐ手段がまとまらないとどうしようもないな……」
全員が頭を悩ませる中、シャノン一人だけが違う方向を見ていた。カインはそれに気づいて、シャノンの視線を辿った。そこにあったのは一枚のカラフルに彩られた派手なポスターだった。
「これならいけるな」
シャノンはカインの声に振り返った。
「でしょ。カインなら余裕ね」
二人は互いに金を稼ぐ方法を見つけた。それは稼ぐと言うにはあまりに大胆な方法だった。