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神竜の契約者  作者: Mint
第三章
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旅装束

 二人は馬車に必要な物を積み終えたので、シャノンを迎えに城へと向かった。


 門を衛兵に開けてもらい、そのまま中へ。


 城で二人を出迎えたのは、少しやつれたようなメイドたちだった。


「おかえりなさいませ、お話は伺っています。旅支度は順調ですか?」


 声にも疲れが見え、元気がないことは明らかだ。


「今食糧を積んで戻ってきたところだ。しかし……どうしたんだ? とても疲れているようだが」


 メイドたちの仕事の苦労などカインには分からないが、この前に城を訪れたときはこんな風ではなかったと記憶していた。


 アイラもメイドたちの様子に疑問を抱いていた。


「いえ、そんなことは……ありません。ご心配をおかけしまして、すみません」


「大丈夫ならいいんだが……」


 カインがメイドたちのことを心配していると、上のほうから声をかけられた。


「あ、カイン! どこに行ってたんですか? それにアイラさんも一緒なんて……」


 膨れるシャノンを宥めようとしたカインだったが、下に降りてくるシャノンの格好に驚いた。


 シャノンが身に着けているのはドレスではなく、白を基調とした騎士服だった。


 ところどころに青いラインが入っており、シャノンの清々しさを表しているかのようだ。


 それと、髪型も動きやすいようにようにするためか、ストレートの金髪をポニーテールにしていた。


 カインはシャノンの姿に見惚れ、茫然としている。


 それに目ざとく気付いたシャノンは、カインに見せつけるように、カインの元にやってくるとその場でくるりとターンをした。


「どうですか? 私に似合ってますか?」


「…………」


 シャノンの質問に何も答えないカインを放っておき、代わりにアイラが答えた。


「えぇ、とても似合ってます。シャノンの性格が表れた良い騎士服ですね」


「ありがとうございます、アイラさん。それで、あの……カイン?」


 シャノンに名前を呼ばれ、カインはやっと正気に戻る。


「あ、あぁ、良く似合ってる。もうそれしか言葉が思い浮かばないくらいだ」


「照れますね~。ありがとうございます」


 カインに褒められよほど嬉しいようで、恥ずかしそうに体をくねらせていた。


「実はこの騎士服、昨日作ったものなんですよ?」


「昨日? あぁ、それでシャノンは忙しそうにしてたんですね」


「はい。昨日は本当に大変でした。メイドたちを総動員させて作りましたからね。おかげで、まだ少し眠いです」


 メイドたちの疲労の原因はシャノンにあったようで、夜遅くまで騎士服の製作を行っていたようだ。


「あとですね。私の服だけじゃなくて、カインとアイラさんのも用意しました」


「何?」


「本当ですか?」


 二人は自分の服が用意されていることにも驚いたが、何よりこの城のメイドたちに驚いた。


 いきなり、三人分の衣装を作らされたのだ。その疲労はとてつもないだろう。


 シャノンの騎士服を見る限り、デザインには相当拘ったようで、型紙は複雑怪奇に違いない。


「まさか、シャノンがデザインしたのか?」


「もちろんです。私が陣頭指揮を執り製作しました」


 デザイナーがシャノンということは、昨日の店での行動にも納得がいった。


 シャノンはせっかく店に入ったにも関わらず、何も購入しなかった。しかし、購入するつもりもないのに、よく品定めをしていたのがカインは気になっていたのだ。


 あの行動は服のデザインや色合いなんかを確かめる意味があったのだろう。


「服のサイズとかもチェックしたいので、二人にも試着してもらいましょうか。あなたたち、二人の衣装の準備をお願いできる?」


「畏まりました、シャノン様」


 シャノンはメイドにそう命令し、改めて自分の衣装を確認していた。


「この服、見た目はお洒落なだけって感じがするかもしれませんが、実は保護の魔法が掛けられていて、丈夫なんですよ」


「それはすごいですね。あの、ところで……私の服もシャノンのような感じなのでしょうか?」


 アイラが気にしているのは肌の露出だった。


 エルフ族に『肌をさらしてはならない』というものはないが、シャノンの服は少し露出が多い。


 それはシャノンが先ほど言ったように、お洒落を重要視した結果だろう。


 旅の衣装にお洒落が重要かどうかは定かでないが……。


「アイラさんの服はローブですから、露出は今アイラさんが身に着けている物とあまり変わりませんから、安心してください」


 アイラはシャノンの一言に胸を撫で下ろした。


 アイラも十分に若いが、シャノンとはタイプが違う。


 今のシャノンが着ているような服をアイラが身につければ、お洒落とかではなく、ただの妖艶さ漂う衣装に成り果てるに違いない。


「俺のもあるんだろう? どんなデザインにしたんだ?」


 カインも興味があるようで、シャノンに尋ねた。


 カインが身に着けている服は長旅でかなりくたびれており、そろそろ新調しなければならないところだったので丁度良かったのだ。


「カインのは秘密です。楽しみに待っていてください」


 シャノンは満面の笑みで、そう答えた。


 どうやら、カインの服はシャノンの自信作のようで、かなり自信があるようだ。


 やがて、メイドたちが戻ってきた。


「シャノン様、更衣室にお二人の衣装の準備ができました」


「ありがとう。では、さっそくですが、二人とも更衣室で着替えてきてください。私はここで待っていますので」


 シャノンはそう言うと、メイドたちに二人を更衣室に案内するように言いつけた。


 二人もメイドたちの後を追い、更衣室に向かう。




 それから数分後、着替えを終えた二人は、シャノンに言われた通りに城の入口まで戻ってきた。


 シャノンは戻ってきた二人を見て、大きな歓声を上げた。


「二人とも良く似合ってますよー! 頑張って作った甲斐がありました!」


 メイドたちを労う意味も込めて、メイドたちをを見ながらシャノンはそう言った。


 シャノンの言った通り、アイラは足までの長さのローブ姿だった。

 

 ローブの色はアイラの髪の色を意識した緑色で、優しそうな印象与える。


 一方のカインはと言うと。


「やっぱり、カインには黒が似合いますね! 明るい色も想像してみたんですが、どうしてもカインには似合わなかったんですよね」


 黒い騎士服に身を包んでいた。


 デザインとしては、シャノンの騎士服の男性版といったところだ。


 シャノンの騎士服は白と青だったが、カインの騎士服は黒を基調とし、ところどころに赤のラインがあしらわれていた。


(まぁオレとしても、カインに明るい色は似合わないと思うな)

(俺もそれには同意だ。そうか、シャノンのイメージでは俺は黒か……)


 カインは黒が嫌いというわけでもないが、人にイメージされる色が黒というのはいかがなものだろうか。


 なんというか、黒というとクールと思われたりもするが、その反面、暗いというイメージもあるのだ。


 シャノンが、負のイメージでカインに黒が似合うと言ったのではないことは、カインにも分かっているが、どうも釈然としないところがあった。


(考えすぎだな)


 こんな考えでは、せっかく作ってくれたシャノンに申し訳ないと思い、考えを改めた。


「確かに、俺に黒は似合うのかもしれないな」


「私もカインに良く合っていると思います。カインの使う金色の剣とも明るさの点で正反対なので、とても見栄えがいいですよ」


 アイラの言葉にシャノンも想像してみたのか、少しうっとりとした表情を浮かべていた。


「い~ですよね~。しかも、翼も金色とくれば文句のつけようがないですね」


 二人にはカインの衣装は好評のようで、絶賛されていた。


「アイラこそ髪の色と衣装が良く合っている」


「私もこれは気に入ってるんですよ。ローブは普通重くなりがちなんですが、これは凄く軽いので動きやすいです」


 それぞれが自分の衣装を手に入れ、気分も新たになったところで、シャノンが威勢よく声をかける。


「さて準備もできましたし、行きましょうか!」







 ここで、旅の準備をしたのは俺たちだ、などということは無粋なので決して言わない二人だった。



 

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