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神竜の契約者  作者: Mint
第二章
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帰還

 ダルキアンを討伐することに成功したカインたちは、トルン村に移動している最中だった。


「アイラ、あの時は助かった。下手をしていたら死んでいたかもしれない」


 ダルキアンの剣がカインに迫ったとき、風魔法で妨害したくれたのはアイラだった。


 アイラが魔法を放つことがなければ、カインは今ここにはいないかもしれない。


「良いんですよ。それに『助ける』って言ったじゃないですか。それと、あなたも私をダルキアンの手から救ってくれました。お互い様ですよ」


「そう言ってくれると助かる」


 そう言いながら、アイラはカインに優しい微笑みを向けていた。


(そうだな。感謝しろよ、カイン。今回はお前の力の過信という部分もある)

(本当だな……少し油断していたのかもしれない)


 カインは反省した。


 今後同じようなことを繰り返さないために。



 それからも、他愛ない会話を続けながらトルン村に移動した。





 少ししてトルン村に到着した。

 

 アイラはダルキアンの居城では足元が覚束なかったが、今は大分よくなったようで村に降ろしても歩けるようになっていた。


 村の中心に降り立ってしばらく、村人が村長を呼んできてくれた。


「まさか……本当に?」


 村長はカインたちの顔を見て、疑心暗鬼といった風に問いかける。


「あぁ、俺たち二人で、ダルキアンを討伐してきたぞ。証拠にダルキアンが身に付けていた指輪がここにある」


 カインはポケットからダルキアンの指輪を取り出し村長に見せた。


「おぉ、これが! といっても、ダルキアンを見たことがない私には、本物かどうかは分からないんですが

……」


「それもそうか……」


 どうするかをカインは考える。


 指輪ではなく、もっと分かりやすいものならいいのだという結論に至った。


「少し待っていてくれ、より分かりやすい物に替えてくる」


 そう言い残し、カインは飛び立った。





 それからしばらくして、カインがトルン村へと戻ってきた。


「どこに行ってたんですか、カイン?」


「あぁ、これと指輪を交換してきたんだ」


 そう言いながら、カインは大きめの袋のような物をアイラに見せる。


「その袋の中に何が入ってるんですか?」


「金貨1000枚だ。今さっき、アルトリエのギルドに指輪を届けて交換してもらってきた。村長、これなら分かるだろう?」


 村長は金貨1000枚と聞き、恐る恐るカインが持つ袋を覗き込んだ。


「本物だ……。では、あの指輪も本物」


 ダルキアンがいなくなったという事実が信じられないのか、村長はカインたちの顔を何度も見つめていた。


 やがて、村長は叫んだ。


「村の者たちよ! この方たちが、あの恐ろしいダルキアンを討伐して下さったぞ! 宴の準備じゃ!」


 そんなことを叫んで、村人から「村長……そんな食料はありませんよ」というツッコミが入った。


「宴はいい。それよりも、村人たちに移住の準備をさせろ。俺が護衛として、お前たちをアルトリエまで送ろう。ところで、アイラはこれからどうする?」


 アイラは特に考えることもなく、


「折角ですので、最後までついて行きます。それにカインには、私の願いを叶えてもらわないとなりませんからね」


「なんか盛大に盛ってないか? 言うことを聞くというのが、いつから願いを叶えるになったんだ?」


「大して変わりません。気にしないで下さい」


「まぁ、たしかに……とはいえ、言葉にするとかなり違和感があるんだが……」


 アイラがエルフの里を出てどれくらいになるのかは分からないが、要するにまだ戻る気がないのだろう。


 今回の戦闘はアイラがいなければ危なかったのは事実であり、ギルド風に言えば『パーティー』の大切さを身に沁みて理解したカインだった。


 そして、村人たちの準備が出来次第、カインたちはアルトリエへと向かった。




 途中、何度か他の村に寄り食料を分けてもらいながらも、カインたちと村人は数日かけてアルトリエに到着した。


 村人たちはこれほどの大国に来たことなどあるはずがなく、目の前の城門の大きさに驚いているようだった。


(なんか帰ってきたって感じがするな)

(珍しいな。お前がそんなことを言うなんて)


 イクスがらしくないことを言ったので、カインは少し驚いたが、自分も似たようなものだと気付く。


 離れてから一週間(途中ギルドには戻ったが)ほどだろうか、こんな短期間でも随分と懐かしく感じてしまう。


「ここがアルトリエですか? 大きな城門ですね」


 アイラも里を出てから大国に足を踏み込むのは初めてらしく、物珍しそうに城門を見上げていた。


 城門を見上げているアイラが、以前の自分と重なり、なおさら懐かしく感じるカインだった。


「村長たちはここで少し待っていてくれ。アイラ、お前も来るか?」


 村長たちを城門の前に待機させて、アイラに声をかける。


「どこに行くんですか?」


「あそこだ」


 カインは城門からでも見ることができる大きな城を指差した。


「あれはお城ですか?」


「そうだ。この国の国王が住まう城だ。今からそこに出向き、村人移住の許可をもらう」


「えぇ……今からですか? 許可が貰えなかったらどうするんですか……」


「心配はいらないさ。許可が下りないはずがない」


「その自信は当てになるんですかね……。心配なので私も行きますよ。それにあなたと国王の関係も知りたいですし」


 少し元気をなくしたアイラだったが、興味はあるようでカインに付いていくことを決めたようだ。


 関係があるのは主に姫様のほうだったが、カインは面倒だったので説明はしなかった。


 正直、こんなところでアルトリエの姫と婚約していると言ったところで、頭のイカれた男だと誤解されるだけに違いなかった。


 


 やがて、城にたどり着いたが、ここに来る途中の噂が少しだけ気になった。


 『銀色に光る何かがアルトリエの上空を飛んでいた』という内容だったが、まさかな、と思うことにした。


 門の前には衛兵がおり、カインが目の前に立つと顔を覚えていたのか、執事のガロンを呼んできてくれた。


「カイン様、よくお戻りになりました。姫様もお待ちです。さぁ、どうぞ」


「分かった。ただ、ガロンに少し頼みがある。国王に謁見させてはもらえないだろうか? 重要な話があるんだ。そうだな、ダルキアンの件についてとでも言ってくれればいい」


「畏まりました。陛下には、私のほうから話を通しておきましょう。そちらの方は……失礼ですが、エルフ族の?」


 アイラの長い耳はやはり目立つようで、ここに来る途中も注目を浴びていた。


「名前はアイラ。俺がトルンの村に立ち寄ったときに、魔物から村人たちを守ってくれたんだ」


 アイラは一歩前に出て、ガロンに挨拶をした。


「初めましてエルフ族のアイラ=ハーヴィンと申します。こちらのカインには、何度も命を救われました」


「俺も彼女には助けられた。出来れば、彼女をシャノンにも紹介したい」


「もちろんです! 姫様のお仲間が増えるのであれば、私は力の限りの協力をさせていただきます!」


 よほどシャノンに仲間ができるのが嬉しいのか、すごい気合の入りようだった。


「では、お二人ともこちらへ」


 カインとアイラは城の中へと通された。




「ちょっとカイン、あなたは一体何者ですか? 前々から変な人だとは思っていましたが、こんな城に入ることができるなんて」


「もう少しで分かる、気にするな」


 と、会話をしていると、


「あ! カイン! やっと戻ってきたんですね!」


 城の2階通路から美しい金髪の女性が駆けてくる。


「姫様、走ってはいけません! はしたないですよ!」


 ガロンが注意するも、シャノンの勢いは止まらず、


「お帰りなさい、カイン!」


 カインに力強く抱きついた。


「ただいま、シャノン」


 カインもシャノンを強く抱きしめ返したのだった。







  


 


 


 

 


 

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