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神竜の契約者  作者: Mint
第二章
12/41

ダルキアン討伐クエスト受注

 いよいよ、カインはダルキアンの討伐のため、トルンへと旅立とうとしていた。


「馬車はアルトリエの入口に手配してあります。どうか……無事に帰ってきて下さい」


「心配いらないさ。すぐに帰ってくる」


 カインはシャノンを安心させようと、シャノンの温かい体をゆっくりと抱きしめる。


「帰りは、飛んで帰ってくる」


「そうして下さい。少し……寂しいです」


 抱きしめても不安な表情は消えなかった。


 だから、カインはシャノンに最大の愛情を表現しようと、キスをする。


「んっ」


「カ、カイン……こんなとこ……んっ」


 城を出てすぐの門の近くで行われていたため、誰かに見られているかもしれなかった。


「シャノンは笑って待っててくれればいいさ」


「……むぅ、なんだか私ばかり辱められてる気がします」


 気がするというか、まさにそうである。


「気のせいだ。それじゃ、行ってくる」


「はい、気を付けて……」


 シャノンはカインが見えなくなるまで、門のところから見送っていた。




 カインはアルトリエの入口に向かう前に、ギルドに寄るところだった。

 クエストを受注しなければ、報酬は手に入らず、ワイバーンの時の二の舞になるところである。


(シャノンは、カインのことが心配でしょうがないみたいだったな)


(こんなに身の安全を心配してくれる人が、俺の周りにできたのかと思うと、ガラにもなく嬉しいと感じてしまう。それも最愛の人だ)


 カインを心配してくれていたのは、修行の時に面倒を見てくれた『アラン』くらいのものだろう。

 

 家族は、もう、いない……。





 やがて、ギルドの前にたどり着いた。


 カインのギルドにおける肩書は『ルーキー』のままだ。ヘルハウンドの討伐は受注できず、シャノン救出の際にも、ワイバーンの牙を持ってくることができなかったためである。


 そのため、カインは再び『ルーキー受付』の看板が吊るされている所へと向かう。


 だが、その途中で貧相な男に声をかけられる。


「あ、あんた! 姫様をオレたちに預けたやつじゃないか!」


 その男をよく見るが、当然、顔は覚えてなどいない。だが、その言葉の内容から、シャノンを預けた連中の一人であることは分かった。


「そうだが……」


「ありがとよーー!!」


 カインはなぜかすごく感謝されていた。

 

「あんたのおかげで姫様を助けられて、特別な報酬が出たんだ! それで、久しぶりに娘や妻に美味い物を食わせてやれた……本当に感謝してる!」


 どうやら、身なりはあれだが、家族思いの良い冒険者のようだ。


「こちらこそ礼を言わせてくれ。シャノンを無事に送り届けてくれてありがとう」


 カインは深く頭を下げた。


「や、やめてくれよ。あんたは姫様を救った英雄だぜ? 堂々としていてくれよ。それと、なんか姫様と仲がよさそう……いや、特別な関係のような感じを受けたんだが……どうなんだよ?」


 男が小声でカインに尋ねてくる。


 カインも正直に答える必要はなかったが、シャノンを救うことに力を貸してくれたこの男には、誠意をもって応えたかった。


「まぁ……そういう仲だが、誰にも言うなよ? 大騒ぎになる」


 男は唖然としていた。


「ま、まじか……半分くらいは冗談だったんだぜ? なぁ、あんたが惚れたんだろ? 姫様は立場的に、そういうことはできないからな」


「あぁ、間違っていない」


「だよな! それで……なんで姫様なんだ? あんたほどの強さだ、金なんて腐るほど手に入るだろ? あくまで、俺の予想だが…………あの胸だろ? たゆんたゆんのおっぱいだろ? 顔も良いが、あのおっぱいはたまらんよなぁ~」


 シャノンの主な評価がおっぱいだった。


(まさか……この国の男連中は、自国の姫をそんな目で見てるんじゃないだろうな)


(お前が言うなよ……)


 イクスにツッコまれた。


 だが、ここはシャノンの威信のために強がるところだろう。


「いや、胸などしょせんは脂肪の塊だろう? 俺は彼女の美しい心に惹かれただけだ。それ以上でも、それ以下でもない」


 心にもないことだらけだった。その脂肪の塊に執着する男のセリフではなかった。


(シャノンに聞かせたら大爆笑だぞ?)


(言うなよ……)


(へいへい)


 この回答に男は不満足そうだった。


「本当か? 男なら一度は揉みしだきたくなるようなおっぱいだぞ?」


「本当だ。脂肪の塊に興味などない」


 すでに数回、シャノンの胸を揉みしだいた男がここにいる。


「まぁ、あんたがそう言うなら……。姫様とは仲良くしてくれよ。そうか……シャノン様となら、あんたは王にはなれないんだな」


「ん? 急になんだ?」


「いや、あんたが王なら……この国を、民を、全て救ってくれるのかなってな……すまねぇ、変なこと言っちまったな」


 やはり、どこの国も同じなのだろう、とカインは思った。


 表向きは平和に見えても、細かいところに問題はあるものだ。


 この国ではないようだが、魔物の領地に近い国では、男を兵役に就かせることも多々あるようだ。


 それでは、農作物の栽培や、武器の生産が追い付かないなどの問題が生じる。


(少なくとも俺がいるうちは、この国に魔物など近づけさせない)


 民だけではない。なにせ、シャノンがいるのだから……。


「気にするな。お前の言いたいことも分かるつもりだ」


「助かる。それじゃ、オレは行くぜ。あんたもクエストだろ? 互いに頑張ろうぜ」


「あぁ。健闘を祈る」


 互いに拳をぶつけ合い、鼓舞し合う。


 これはきっと、冒険者たちの礼儀なのだ。

 俺たちは命を懸けて、魔物を討伐しているのだと改めて実感する。


(気を引き締めていかないとな)


 カインは男を見送り、『ルーキー受付』へと向かう。


「あら、カインさんじゃないですか。なんでも姫様を救ったそうですね? 冒険者の間じゃ、凄い噂になってますよ~」


 『ルーキー受付』担当のエレンが、カインの顔を見るなり声をかけてきた。


「先ほども声をかけられたよ」


「人気者は大変ですね~。それで、本日は?」


「あぁ、ダルキアンの討伐クエストを受けに来たんだが……俺でも受けられるか?」


 エレンと周囲の冒険者が固り、のちに騒がしくなる。


「ダルキアン……だと?」

「あのSランクの?」

「あいつ、姫様を救ったやつじゃないか?」


 などなど、あらゆる会話が交錯する中、エレンは少しして気を取り直した。


「……ダルキアンですか? Sランクの?」


「そうだ」


 周囲の騒ぎが続いているが、カインは意に介さずに即答する。


「たしか……カインさんってルーキーのままでしたよね?」


「ここにいるのだから、そうに決まっているだろう?」


 堂々と宣言した。


「いや~、Sランクの魔物は、ルーキーじゃとても受けさせられませんよ? カインさんが普通じゃないのは知ってますが……」


 カインの予想通り、ギルドはダルキアンの討伐クエストを受けさせてくれないようだ。


「では、どうしたらいい?」


 カインは解決策を探るため、エレンに尋ねる。


「ギルドのルールでは、Aランク相当の魔物の討伐が条件ですが、カインさんはルーキーですので、百歩譲ってEランクから順に受注してもらうことになりますが……どうします?」


 カインは少し考え、エレンによく分からない質問をした。


「俺がEから始めるとして、この近辺にE、D、C、B、Aの魔物は揃っているか?」


「え? えぇと……はい。全ての魔物が馬を飛ばして、1時間~2時間程度の位置にはいますが……」


 カインは決めたようだ。


「では、Eから始めよう。馬車も待たせているから、手際良く頼む」


 カインの答えは単純だ。


 ()()やる、それだけだ。


「わ、分かりました……こちら、先日のヘルハウンドのクエストです。カインさんの契約のサインをお願いします」


「これで手続きは終わりか?」


 カインはサインしながらそう尋ねる。


「はい、そうです」


「分かった」


 カインはサインを終えると、ギルドを出て行った。




 それから、数分後……


「エレン終わったぞ、Dランクを頼む」


 討伐の証に、『ヘルハウンドの牙』をエレンに渡す。


「嘘……ですよね?」


「嘘なものか、良く見ろ」


 エレンは『ヘルハウンドの牙』をよく観察し、本物だと認識する。


「本物……です」


「だろう? 次はDだ。早くしろ」


「は、はい。少々お待ちを……」


 こんなことをあと4回繰り返し、カインはめでたくダルキアン討伐クエストを受注することに成功した。








 5つのクエストクリアの所要時間は、約15分ほどだったという――――――



















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