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レオンと

「お疲れ、平社員。ノエルちゃんはまだ仕事だよ」

「平社員は止めような。おじゃまします」

仕事が終わりノエルの家に行くと、昨日よりはずいぶんと暖かいお出迎えを受けた。平社員のオレと違い、エリートな彼女は初日だというのにしっかり働かされているらしい。ギルバートもまだ来ていないようだ。

「レオンは学校は行ってるんだよな? 部活とかしてねーの?」

「行ってるよ。部活はしてない。家のことできなくなるし、ノエルちゃんと一緒に過ごす時間の方が大事」

「清々しいほどにシスコンだな」

反抗期とか無かったんだろうか? 無かったんだろうな。そりゃノエルも可愛がるよな。

「家のことは全部レオンがやってるのか?」

「最近は大体。けど全部じゃないよ。ノエルちゃんもやるし、たまにギルも手伝ってくれるぞ」

今日は素直に答えてくれるようだ。というか、昨日はオレがやらかしただけで、実際はノエルが言うようにいい子なんだろう。

「あー、ギルバートはなんでも出来るよな。ってかそういやあいつとはけっこー長い付き合いなんだな。オレ全然知らなかったんだけど」

「僕たちはしょっちゅうあんたの話を聞かされてたけどね」

「……ねぇ、ノエルも言ってたけど一体何の話を聞いたのさ?」

この二人の反応を見るに、ろくな話をされていないような気しかしない。

「えー? そうだなぁ……頼まれたペットの捜索中に見つけたはいいものの追いかけるのに夢中になりすぎて工事中のセメントの中に突っ込んだこととか、お兄さんたちが溺愛し過ぎてうちの可愛いエディ(はーと)って呼んでることとか、女の子に逆ナンされて浮かれてついて行ったら実はその子が彼氏と喧嘩中で修羅場に巻き込まれたこととかあとは」

「いい! いい! 大体分かったから!!」

ろくな話してないじゃねーか! ギルバートは後で処刑してやる。

「まぁそんな話ばっかりじゃないよ。ノエルちゃんに聞いたと思うけどさ、ギルには僕たちの親が死んじゃった時に会ったんだ。あの頃は僕も小さかったからさ、毎日お母さんに会いたい、お父さんのところに連れてってってノエルちゃんのこと困らせてたんだよね。そんなときギルが話してくれたのが『小さなエディ』の話。エディはお母さんがいなくて、お父さんとお兄ちゃんはいるけどほとんど会うことができない。それでもエディはいつも明るくて、いつでも誰かのために頑張ってるんだって。エディが幸せでいること、そして周りの皆を幸せにしてあげることが、彼の大好きなお母さんの願いだったから。僕はエディの話が大好きで、単純だけどエディが頑張ってるんだから僕も頑張ろうって思えたんだよね」

「……そっか」

「それで毎日エディの話を強請り続けて、結果今は今日の面白かった出来事に落ち着いたってわけ」

「…………そっか」

ギルバートこのやろうかと思ってたら、最終的にギルバートこのやろうで合ってた。いい話で止めておいてあげて!

「だからさ」

「うん?」

レオンが少し照れたようにこちらを見ている。そうしてると可愛いんだけどね。さすがにオレも昨日今日で学んだからね。きっと良いことは言われない。騙されない。

「僕もエドワードのこと嫌いじゃないよ」

前言撤回。何この可愛い子! 感極まってうっかり抱きしめそうになった。しっかりしろ、落ち着け、オレ。相手は十四歳男子だ。

「ただし」

「ん?」

「ノエルちゃんを狙ってるっていうんなら、容赦しないから」

ええ、わかってました、わかってましたとも! 確かに笑顔のはずなのに、目は全く笑ってないし、後ろに黒いものが見える気がする。悲しいことにオレは似たような威圧感を持つ人物をよーく知っている。ギルバートこのやろう!

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